しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第十回)「内緒の秘密」
新しい年が始まった。約1週間ぶりの子どもたち。昼礼では、それぞれのクラスの様子と保育者の思ったことや感じたことを語らい合う。「久しぶりにあったSちゃんの身長が伸びた気がした」「頭におままごとのボールを被っているのをみて、また(日々が)戻ってきたなと感じた」「友達と会えてうれしいのか、クラスの子どもたちもニコニコしている」など。保育者を通じて子どもの風景を感じることができる「昼礼」は私にとっても大切な時間だ。とはいえ、会議や行政との仕事などがあると園にいられないこともあり、その時後ろ髪を引かれる思いで、園を後にする。
今日は、子どもたちと一緒に「おせち」を食べた。となりに座ったたけちゃんがこう話す。「たけちゃんはさあ、秘密があって、それは内緒ってことなんだけど、秘密なんだよね」。思わず私が「えー知りたいな」というと「でもさあ、それは秘密だから内緒なんだよ」と言う。「秘密って気になるよね」と私がいうと「じゃあさあ、6月の誕生日が来たら教えてあげる」「えっ、私も6月生まれ!」と話すと「一緒だねえ」と笑う。たけちゃんの小さい小指と、私もカサカサの小指で指切りをした。
子どもの傍に居られることが心からうれしい。保育者と語り合うのもうれしい。あーあと声を出したくなることもあるけれど、とにかく今大切なことをしっかり責任を持って進む。来年度のこともよぎりながらの園運営。白い園舎に浮かぶ夕焼けの色。どうにか朗らかな自分でありますように。子どもたちと保育者を眺めながら、そう思った年の始まり。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II』の連載第十回です。
このコラムの連載
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅱ(第一回)「わわわっと2024年がスタート」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第二回)「葉っぱを裂く」
「ねえ、メイちゃん、なんでこの葉っぱから糸が出るってわかったの?」そうたずねると、「めったんに教えてもらったの」と小さい声で答えた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第三回)「今日も子どもの傍に」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第四回)「一緒に迎える、越えていく、渡る」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第五回)「遠く離れて」
モンテネグロからボスニアに渡るバスの中で母から教えられたことを思い出した。この夏、バックパックを背負って、トルコ、モンテネグロ、ボスニアヘルツェコビナ、クロアチアの4カ国を渡る旅をした。飛行機、長距離バス、夫が運転するレンタカーで移動した旅。毎日足の裏がジンジンするまでとにかく歩いた。トルコではピーマンに米と玉ねぎ、そして牛ひき肉を入れたドルマ、クロアチアのザグレブではハムとチーズが何層にもなったカツレツ、その土地の食事をすることもあれば、現地のスーパーで買い物をし簡単な料理をすることもあった。その土地に流れる風を感じ、人と人の間にある表情を感じる。同じ地域に連泊したのは一度だけ。今まででいちばん一度の旅行の中で国境を越えた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第六回)「平気な顔してサンドイッチ」
そんな風な会話をご近所さんや、保育者と話しながら9月が始まった。
以前、保育者を経て行政の仕事をされている方とお話しているときに「最近では、節分などの季節の行事をコンビニで感じることが多くて・・・。子どもたちと一緒にいた時には、暮らしの中で感じていたんですけどね」という言葉を聞いた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第七回)「私もマサコちゃんも」
このところ、気温の変化のせいか体調不良の子が多い。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第八回)「たのしいことを知っている」
せなけいこさんの絵本はいつも、教訓めいていなくて、ちょっとよくわからないけど、わからないまま終わる感じも好きで、私自身の子育て中によく読んでいたし、子育てひろばでもよく読んだ。そんなことをふと思い出していた。その次の日の昼礼で(しぜんの国保育園では、朝礼、終礼、など色々試していて、今は昼礼に落ち着いています)、理事長の紘良さんからの話で、せなけいこさんが亡くなったことを知った。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第九回)「生き続ける『こども美術館』」
どの作品にも文脈があり、物語がある。その小さな日々の積み重ね、一人一人の持ち味を丁寧にキュレーションをして展示していく。その作品に応じた飾り方や見せ方を真剣に考える。こどもの大切にしていることを私たちも大切にしたいと強く願う。そんなこども美術館の展示、エントランスにステートメントを設えた。なんども書き直し、こどもたちや保育者の思いを汲みながら、私も言葉を書いた。