しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第六回)「平気な顔してサンドイッチ」
夏をくぐり、新しい月がはじまる。心なしか、風が秋。
そんな風な会話をご近所さんや、保育者と話しながら9月が始まった。
以前、保育者を経て行政の仕事をされている方とお話しているときに「最近では、節分などの季節の行事をコンビニで感じることが多くて・・・。子どもたちと一緒にいた時には、暮らしの中で感じていたんですけどね」という言葉を聞いた。
私が身を置く、町田・忠生のしぜんの国は里山に囲まれ、簗田寺というお寺もある。
寺族でもあるので、両方の暮らしの間で、季節や四季を感じる機会に恵まれている。
出勤中に通る山道では、夏はクワガタに出会う。最近はトンボも見かける。
いちじくが実をつけ、鳥や蟻たちが食べに来る。
同時に草刈りにも追われ、台風の後は特に大変なことも多い。自然に恵まれ、でもそれに付随して手入れも必要になる。
同時に2期は、入園の説明会や採用試験、これからのみなさんの未来の話を聞いたりと、園長としての役割が色濃くなってくる。お寺はお彼岸を控えている。
行政とのやりとりも深くなる。
いろいろあるけど、チームワークのありがたみを感じる時期でもある。
昨日のお昼ごはんはサンドイッチだった。ランチルームで、しょうちゃんとケンちゃんとコウキくんと食べる。
サンドイッチの具材は、チーズ・たまご・ジャム・ハムきゅうり・ツナ。
ケンちゃんはたまごから食べた。コウキくんはまずスープから。
わたしはチーズを食べる。
大人がお寿司を食べるときの会話のように「どれからまず食べる?」と聞いてみる。
好きなものから食べるのかな、それともちょっと苦手なもの?
そんな風に思いながら話をしていると、しょうちゃんがパクッとジャムを食べた。
「しょうちゃんはジャムからなんだね」そう私がいうと、ニコッと笑い次に「チーズ」「ハム」と一口ずつ食べていった。
サンドイッチを食べるのにマナーがあるかどうかは知らないけれど、そんな風にニコニコしながら、何を最初に残して、最後に何を食べるかにとらわれずに、のびのびサンドイッチを食べるしょうちゃん。
すっと「私」に風が通る。
いつもこんな感じで、子どもの風景に支えられる。
いろいろあるけど、いろいろあるから、子どもと、保育者と、家庭と、この土地に住む人たちと。わっしょい、どっこい、いつもの平気な顔をしてやっていこう。
今日もこれから保育園に行く。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II』の連載第六回です。
このコラムの連載
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅱ(第一回)「わわわっと2024年がスタート」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第二回)「葉っぱを裂く」
「ねえ、メイちゃん、なんでこの葉っぱから糸が出るってわかったの?」そうたずねると、「めったんに教えてもらったの」と小さい声で答えた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第三回)「今日も子どもの傍に」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第四回)「一緒に迎える、越えていく、渡る」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第五回)「遠く離れて」
モンテネグロからボスニアに渡るバスの中で母から教えられたことを思い出した。この夏、バックパックを背負って、トルコ、モンテネグロ、ボスニアヘルツェコビナ、クロアチアの4カ国を渡る旅をした。飛行機、長距離バス、夫が運転するレンタカーで移動した旅。毎日足の裏がジンジンするまでとにかく歩いた。トルコではピーマンに米と玉ねぎ、そして牛ひき肉を入れたドルマ、クロアチアのザグレブではハムとチーズが何層にもなったカツレツ、その土地の食事をすることもあれば、現地のスーパーで買い物をし簡単な料理をすることもあった。その土地に流れる風を感じ、人と人の間にある表情を感じる。同じ地域に連泊したのは一度だけ。今まででいちばん一度の旅行の中で国境を越えた。