しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第四回)「一緒に迎える、越えていく、渡る」
お泊まり保育だった。年長児(けやき組)の子どもたちは、毎年この時期にお泊まり保育をする。行きたいところ、食べたいもの、子どもと大人と一緒にセッションをして深めていく。当日の朝一番、おしゃべりが好きなカズ君に「今日はずーっと夜まで話せるね〜!」と言われて、泊まるより話すのが楽しみなんだな…と思いを馳せてのスタート。
バスの中のしりとり、公園でふれあったモルモット、おやつのドーナツタイムに、アイスクリーム作り、園でのゆっくりタイムは、子どもたちのアイデアがたくさん。輪投げ・UNO・カプラ・・・。
疲れてくるとケンカをしたり、言い合いになったりすることもあるけれど、この日は特に友達同士で解決することが目に入った。「今日は『自分たちで作る』お泊まり保育」という気持ちがどこかにあったのかな。
前日に温度を計測して、夜は宿泊を毎年恒例のお寺ではなく園舎に変更することに。まずは、子どもたちに話しをしてから、保護者に連絡アプリで伝えた。しぜんの国の保育者は、そこからの発想の転換がミラクル。カコさん、宇野さん、越丸さん。マネージャーも入って「そうしたら、保育園をホテルにしちゃおう」「キャンドルを用意して」「水に花を浮かべて・・・(!)」「ガムランの音を流す?」「ハッピ着る?」「ハッピは旅館でしょ(笑)」「リゾートにしようよ」「白い布を・・・!」と盛り上がる。
「できなかった」「できない」と視点を向けるのではなくて、「じゃあ、こうしよう」「こうだったらどうかな」という考えは園のムードを作る。この場のうねりは、子どもたちのそばにいる大人としても大切な視点。子どもたちがそばにいるから生まれる視点。生きる知性が磨かれていく。
お寺での夜のキャンプファイヤーと花火を楽しみ、園舎に戻ってきたけやき組。パジャマに着替えると、園のムードがしっとりとしているのに気がつき、「わあ〜」という声が漏れる。「ご予約のお名前は?」とエントランスで越丸さんが案内。そこからは、手作りのプラネタリウムを各チームで点灯。今回のお泊まり保育で、プラネタリウムに行きたいというアイデアもあったそう。白い天井にひかるたくさんの星。さとみさんの七夕の語りにまたたく星。少しザワザワしていたけどそれもいい!ホールに飾られている大きな笹と願いごと。
すーちゃんが、担当のたけっちにくっつく。少し心が揺れているすーちゃんに声をかけたいと思い「すーちゃんが作ったプラネタリウムきれいだね」と小さい声で話すと「ううん。みんなで作ったんだよ」と小さい声で答えてくれた。
夜を越えた翌日、朝一番にさとみさんが「朝、保育園から見える日の出の景色がすっごくきれいでした!」とうれしそうにしている。私もうれしくなる。ゆっくりと起きて、布団の片付け。布団を三つ折りにして、シーツを畳む。
実はこの時間がひっそりと好きでいる。私がけやき組と同じ年長の頃。先生と一緒に大きな布をたたむのが好きだった。おそらく大きなテーブルクロスだったと思うのだけれど、ハジとハジを持ち、お互いが近くによっていき、角と角を合わせて・・・だんだんときれいにたためていく、そんな一連の流れが好きだった。
はーくん、ゆうくん、さらちゃん、さあちゃん、一緒に畳んでいく。やらないと逃げていく子もいた。最初は少しだけお手伝いをしたけれど、どんどん子ども達だけで、きれいに仕上げることができるようになる。
「あっ、天の川みたい」。
子どもの手から手に渡る大きな白い布地。
それは、しぜんの国の天の川だった。夜を越え、見えた先には朝の天の川があった。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II』の連載第四回です。
このコラムの連載
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅱ(第一回)「わわわっと2024年がスタート」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記II (第二回)「葉っぱを裂く」
「ねえ、メイちゃん、なんでこの葉っぱから糸が出るってわかったの?」そうたずねると、「めったんに教えてもらったの」と小さい声で答えた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 II(第三回)「今日も子どもの傍に」