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柴田愛子さんの「子どもの心に添う」の第一歩になったできごと。<井戸端aiko特別編>

三輪ひかり
掲載日:2023/04/14
柴田愛子さんの「子どもの心に添う」の第一歩になったできごと。<井戸端aiko特別編>

小学館がプロデュースする、保育者と教師のための研修講座「せんせいゼミナール」。

3月よりスタートした新シリーズの講師は、ほいくるでも「井戸端aiko」の連載や、過去になんどもお話を伺ってきた、りんごの木子どもクラブの柴田愛子さん。

今回、せんせいゼミナール第一回「子どものみかた〜私の基本姿勢〜」より、井戸端aiko特別編として、愛子さんのお話の一部をお届けさせてもらいます!

柴田愛子さん

1948年、東京生まれ。
私立幼稚園に5年勤務したが多様な教育方法に混乱して退職。OLを体験してみたが、子どもの魅力がすてられず再度別の私立幼稚園に5年勤務。
1982年、「子どもの心に添う」を基本姿勢とした「りんごの木」を発足。保育のかたわら、講演、執筆、絵本作りと様々な子どもの分野で活動中。テレビ、ラジオなどのメディアにも出演。
子どもたちが生み出すさまざまなドラマをおとなに伝えながら、‘子どもとおとなの気持ちのいい関係づくり’をめざしている。
著書 
「子育てを楽しむ本」「親と子のいい関係」りんごの木、「こどものみかた」福音館、「それって保育の常識ですか?」鈴木出版、「今日からしつけをやめてみた」主婦の友社、「とことんあそんで でっかく育て」世界文化社、「保育のコミュ力」ひかりのくに、「あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます」小学館、絵本「けんかのきもち」絵本大賞受賞、「わたしのくつ」その他多数。

高校生の頃、赤ちゃんの生きる力に感動し、「子どもが生まれた以上、生まれてよかったと思う人生を送ってほしい。そのための手助けがしたい。」と保育業界に足を踏み入れたという、愛子さん。

しかし、当時勤めた幼稚園では、ビックリすることがいっぱいあったのだそう。

・お弁当に、お片づけ・・・なんでも「お」がつくのはなんで?
・どうして背の順並びをするのだろう?
・月の歌や月の折り紙ってなに?どうしてみんな一緒じゃないといけないの?

そんな「どうして」の連続の中で気づいたのは、この違和感の正体は「大人が子どもをどう育てるか」という話ばかりだからということと、「子ども自身が出発点」であることを大切にしたかったんだ、ということ。そして、そこから『子どもの心に添う』ことをはじめたといいます。

ここでは、愛子さんが「子どもの心に添う」ことを一番最初に意識した出来事だったという、りんごの木を立ち上げたばかりの頃のエピソードをお届けします。

痛かったよね

よくお散歩に出かけていたんだけれど、子どもって走るじゃない。それを見て、「あぶないよ、あぶないよ」と声をかけたんだけど、その子、転んじゃったのよね。

そのとき私ね、子どもの気持ちがわかりたいと思っていたのに、「大丈夫?」という言葉が口から出そうになったの。

でも、「いや、子ども自身は大丈夫とは思っていないな」と思いなおしたのよ。じゃあ、子どもはなんて思っているんだろうかと考えたら、痛いに決まってるのよね。

だからね、「痛かったよね」って。

こういうときって、「だから走るなって言ったでしょ」「さっさと立ちなさい」と声をかける大人が多いんだけど、子どもの気持ちを言葉にすると、それとは違う言葉が出てくると思うの。

転んだ子のところに走っていって、「痛いねぇ、痛かったよね」と声をかけたんだけど、血が出ているのよ。子どもって血を見ると、倍痛くなるじゃない(笑)。
「ちがが、ちがが、ちがが〜」ってさあ。

そうすると、だいたいの大人は、ここでも「帰って絆創膏貼ろうね」と言ったりすると思うんだけど、子どもは血が出ているから痛いのよ。

だから、「痛いよね。血がが出ちゃったよねぇ」って。

子どもが感じているだろうということを私が言葉に出してみるということをしてみました。

これってね、言い方を変えると、言葉に頼り過ぎないということなんです。その子の表情や動きから、「こう思っているかも」ということに思いを巡らす。隣にいて感じてみる。

そうしていくとね、それが結構習慣化するのよ。習慣化すると、自分の思いよりも子どもの思いを口にすることが多くなるの。

それが、私の子どもの心に寄り添う第一歩だったように思います。



柴田愛子さんの『現場の子ども学』 ~保育に効くビタミン剤~ 【せんせいゼミナール】

2023年から2024年にかけて、全9回実施予定の連続オンライン講座『現場の子ども学』(せんせいゼミナール)。

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