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「人は人との関わりの中で育っていく」こどもの王国保育園 菊地奈津美さん〜コロナ禍での保育実践と思考vol.1〜

三輪ひかり
掲載日:2021/03/11
「人は人との関わりの中で育っていく」こどもの王国保育園 菊地奈津美さん〜コロナ禍での保育実践と思考vol.1〜

新型コロナウイルスにより、多くの保育園や幼稚園が休園したり、各家庭に登園自粛のお願いをしたりするような形で新年度がスタートした、2020年。その頃には、まだ「夏には収束するよね」、「秋にはもう元どおりの生活だろう」…と多くの人が思っていたと思いますが、蓋を開けてみると、もうすぐ一年が経つ今もなお、私たちの暮らしの中にコロナがあります。

今まで経験したことのないような不測の事態の連続に、保育者のみなさん、そして子どもたちも、不安を感じながら、手探りで毎日を過ごしていることと思います。また、子どもたちの心身の健康や、これからまだ続くであろうコロナ禍での生活のことを考えると、何が正解なのか、どうすることがよかったのか、どうしていくのが良いのか、答えがわからないまま、現在も試行錯誤している園は多いのではないでしょうか。

そこでほいくるでは、約一年の間にそれぞれの園が向きあってきたコロナ禍での保育の実践、子どもたちとの日々や保育者の思いをみんなで共有し合えたらと考えました。

まずは、過去にほいくるで園の取材をさせていただいたことのある3園にお声がけをさせてもらい、園の様子や思いをお伺いしました。

一園目は、東京都中央区の“一般社団法人 一燈”が企業主導型保育事業として運営する、「こどもの王国保育園」。お話をしてくださったのは、総括園長の菊地奈津美さんです。


菊地奈津美さん。以前取材させていただいた際に撮った写真。

こどもの王国保育園を取材した記事
https://hoiclue.jp/800010699.html
https://hoiclue.jp/800010700.html



「どうしたらいいんだろう」初めての事態への不安と、私たちにできること。

ー 今日はインタビューを受けてくださって、ありがとうございます。

こちらこそお声がけありがとうございます。いいのか悪いのかはわからないけど、隠さずいろいろとお話できればいいなと思っています。


ー そう言っていただけて嬉しいです。早速ですがこの約1年、どういう風に園の様子や奈津美さんを含め保育者のみなさんの気持ちが変化していったか教えていただけますか?

去年の2月頃から、「新型コロナウイルスというものが流行り始めているらしい」と気にし始めました。うちの園は、3月に発表会、卒園式、進級お祝い会といくつかの行事があるので、その対応にまず悩まされましたね。

卒園式は3月前半だったから通常通りに開催したんですけど、後半に予定していた進級お祝い会は、さすがにたくさんの人が集まるのでやめた方がいいと、オンライン開催に切り替えることにしました。でも正直その頃はコロナのこともよくわからなくて、「とにかく何か大変なことが起きている」という感じで。世間の様子も見ながら色んなことを決めるという感じでした。


ー オンライン開催にするなど、新しい形に変えることへの不安感や難しさはありましたか?

私たちはもともとYouTubeやZoomを園でも使っていて慣れていたので、難しさを感じずに取り入れることができました。オンラインになることで保護者とのコミュニケーションの難しさはあるかなとも思ったんですが、保護者のみなさんと飲み会するくらい親密な関係性を築いていたので、あまり気にならなくて。逆に子どもたちは静かにして先生の話を聞かなくちゃいけないというこれまでのスタイルより、おうちでゆっくり聞けてよかったんじゃない?という感じもありました。


ー 変わったことによる良さもあったわけですね。


そうですね。それでその後、4月に緊急事態宣言が発令されて、区に問い合わせたりしたんですけど、うちの園は企業主導型なので「区立が休園になっても、ご自身の園で対応を考えてください」と。企業主導型は内閣府の管轄なのですが、内閣府からも各区への指示はなく、状況に合わせて各園で対応して、という感じで、「え、どうしたらいいんだろう」という戸惑いはすごくありました。

私たちは、最初は休園する頭もなかったんです。だって、保育園って今までは台風でもなんでも絶対開けていたじゃないですか。だから保育園が休園するなんてありえちゃうんだ…?と思っていたし、保護者のみなさんも感染は心配ではあるけど、学校が休校になった時に「保育園は休園しませんよね?」と、保育園が休園になることへの心配を持たれているのを感じました。なので、ギリギリまでオープンしていたんですが、感染者もどんどん増えていって、結局4月末から2週間、登園自粛を要請することに決めて。そうしたら、そのまま緊急事態宣言が延び、最終的に5月末まで自粛要請することにしました。


ー では、多くのご家庭は、家で親子でずっと過ごすという1ヶ月を過ごされたわけですね。その期間中、子どもたちや家庭とつながるために何か園として工夫したことなどはあったのでしょうか?

YouTubeで子どもたちが好きな手遊びを配信したり、週2日程度、朝9時にご家庭とZoomをつないで朝の会をしていました。朝の会をしていたのは、子どもの発達において生活リズムが大切だから、というのもありますが、普段から、子どもがなかなか起きないという悩みをよく保護者の方から聞いていたので、「ほら、今日は王国のZoomが始まるよ」という日があれば、自粛中でも子どもたちがすっきり起きれるかなと思って。


園内で使用しているコミュニケーションアプリでYoutubeを配信。

あとは、お休み中も子どもや保護者の状況を知っておくこと、つながりをつくっておくことが大切だと思っていました。なので、朝の会では子どもたちの名前を呼んで、「元気ー?」って少し話をして、パネルシアターや絵本を読んだり、そのあとに30分程フリーの時間もつくって、お家の話とか大変なこととか、保護者のみなさんたちが自由におしゃべりできる時間にしていました。

お母さんやお父さんたちも最初はお家で子どもを見ると言ってくれていたのですが、5月後半くらいには、「早く子どもを預けたい、もう限界です」という感じも出てきていて。かなり頑張っておうちで見てくれていたという状況だったと思います。

登園自粛要請をした当初は、2週間と期間を決めていたし、集団で過ごすことの怖さみたいなものもあり、こちらも保護者の方々に対して「おうちで頑張ってお子さんを見てください」という気持ちも強くあったんです。ただ、緊急事態宣言が延びた時に、子どもが家にずっといて刺激を受けないことのほうが、子どもの心身の健康にとってどうなのかな?という不安も感じたし、Zoomでお話すると保護者のみなさんも明らかに疲れてきていて。

2週間だから家庭と協力して頑張ろうと思っていたけれど、1ヶ月延びちゃうとさすがに家庭だけに閉じて子育てをすることの厳しさがあるなと感じました。だから、早く開園したほうがいいなと、5月の中旬頃には強く思っていましたね。


子どもたちの日常は守りたい。

緊急事態宣言が明けてからは、玄関先で受け入れをしたり、保育者は一緒にごはんは食べないなど、感染予防の対策をしました。でも、うちの園はもともと、清潔にすることは大事だけれど、子どもたちにとってはたくさん消毒をするより免疫を上げることの方が大事なのではと考える園だったので、どこまでどんな消毒をするのか、そんなに過度にはやりたくないけど・・・と、その狭間で悩みました。

そんな中、職員が一人コロナに感染して。保護者にはすぐ状況を連絡し、何人かの子どもたちにはPCR検査を受けてもらったりしました。いつ自分たちの園でも感染者がでるかわからないとは思っていましたが、初めてのことにバタバタしてしまいました。

でも、保護者の皆さんは「仕方ないですよ。誰がいつ感染するか、わからないものですから」と言ってくださって。気持ち的にとても救われました。そこから、なるべく早く、的確な情報を出すことを改めて大切にし、保護者の不安が少しでも減らせるようにと思って対応をしました。

ただ、保育や子どもとの関わり自体は、必要以上には変えたくないなと思っていました。例えば、子どもとごはんを一緒に食べなくなったけど、子どもとのスキンシップを控えるなどはしませんでしたし、行事などもオンラインに切り替えたり、みんなで集まっていたのを、大きい子と小さい子半数にわけるようなことはしましたが、子どもたちがコロナの事情で園という場、保育者や友だちとの関係が大きく変わったと感じないようにしたいなと思って、保育をしてきました。子どもたちの日常は守りたいな、と。



ー 子どもたちの日常は守りたい。

最初の頃は、数ヶ月我慢すれば日常が戻るだろうと思って、「今はこれやるのはやめよう」、「今回は諦めよう」という感じだったけれど、すぐには収束しそうにないということを感じ始めた時に、これ以上子どもたちに我慢をさせることはしたくないし、様々なことを経験する機会を奪ってはいけないのではないかと考えるようになり、気をつけて、やれることはやろうと思ったんです。

食育での調理活動も最初はやらないようにしていたんだけど、元々手洗いやマスクもして行なっていたし、気をつけて実施しようと。電車に乗ってどこかへ出かけることも、感染対策をしっかり行なった上、実施しています。

秋に開催する運動会は、予定していた小学校の体育館が借りれなくなったり、室内でみんなで集まることは難しいよね、となったりもしたんですけど、「じゃあ地域を巻き込んで、ウォークラリーをしよう」と形を変えて行なうことにしました。それが、すごく楽しかったんですよね。その時に、行事も、コロナだからという理由ではなく、毎年同じように実施するんじゃなくて、その時の子どもや状況に合わせて実施する方がいいのではないかと思ったりもしました。


ー なんでもかんでも禁止する、やめるという形でリスクを回避するのではなく、この状況でもできる方法を考えるようにしたんですね。

そうですね。基本的に保育の中で「こんな活動をしたい」と子どもたちから出てきた提案や、保育者がねらいをもった活動に関しては、今できる形に変えながらでも実施してく方法を考えるようにしました。


コロナだからちゃんと手を洗いなさい!というより手を洗いたくなるようにしたいよね、ということで石鹸作りをした。

変えざるを得ない中でも、変えたくないこと

ー 最後に、この1年半を振り返り、改めて子ども時代や保育で大事にしたいと思ったことや、気づいたことなどがあれば教えてください。

本当は変えたくなかったのですが、クリスマス会の時に、今まではみんなで集まって行なっていたのを、子どもも親も自分のチームの時にだけ来場して、そのあとすぐ帰るという流れをとったんです。でも、こういう行事のスタイルだと、子どもも大人も“集団の中で育っている”ということを感じづらくなるんじゃないかな、と思ったので、これから発表会などの行事もあるし、来年以降もこの状況下でどう行事をするのかを考える時には、その視点も持って、工夫したいなと思っています。

というのも、人との関わりを大事にしたい、ということを改めて感じた1年だったんですよね。人は人との関わりの中で育っていく。不安な時に抱っこしてもらうことで、人の温かさを感じ安心するし、友だちとおもちゃを取り合い押し合って、自分の気持ちを感じたり相手を感じたりするものなんです。

だから、この状況下だって、子どもたちの成長にとっては、濃厚接触は避けられないし、避けてはいけないものだとも思いました。そこはコロナを理由に諦めたくないなと思っています。


インタビュー実施日:2021年1月26日

写真提供:こどもの王国保育園
企画・編集:ほいくる編集部
取材・文:三輪 ひかり



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