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「大人の側にアプローチをする」保育者と保護者と共に育っていく、こどもの王国の取り組み

三輪ひかり
掲載日:2019/12/20
「大人の側にアプローチをする」保育者と保護者と共に育っていく、こどもの王国の取り組み

東京都中央区にある“一般社団法人 一燈”が企業主導型保育事業として運営する、「こどもの王国保育園」。
(園や保育の詳しい様子はこちら)

柔らかで温かな保育者の眼差しのなかで、ゆったりと流れる時間。限られた環境の中でも、自由に広がっていく子どもの世界。

こどもの王国保育園の保育はどんな想いから成り立っているのか、園長の菊地奈津美さんにお話を伺いました。

子どもたちは元々「これやりたい!」に溢れている

ー こどもの王国保育園の保育理念に「自分で考え 行動し 責任をもつ人を育てる」というものがありますよね。少し強さのある言葉ですが、実際の保育ではそれとは反対に子どもを見守る、柔らかな印象を受けました。

「自分で考え 行動し 責任をもつ人を育てる」ということには、子どもたちに自分の人生を自分の足で歩いていける人であってほしいという想いが込められています。

子どもたちは元々「これやりたい!」という気持ちに溢れている存在だと思っています。
でも、その気持ちをなくしてしまったり、先生が言うから「これをしなくてはいけない」となったりしてしまうことがある。
それってなんでだろうと考えた時に、周りにいる大人の在り方がすごく影響しているなと思ったんです。

そして、子どもたちが持っている力をすくすく育むためには、子ども一人ひとりへの地道で丁寧な関わり方が必要。
だから、当たり前かもしれないですけど、子どもたちに働きかけるというより、保育者の姿勢や在り方、保護者に保育園の理念を理解していただき一緒に子どもを育てていくということに、すごく意識を向けています。


ー 取材のなかで子どもたちに対する“こうあってほしい”というような働きかけみたいなものを感じなかった理由がわかった気がします。具体的に、保育者や保護者に対して行なっていることってありますか?

園と家庭をつなぐコミュニケーションアプリを使って、日々の保育の様子を保護者と共有しています。

保護者が園での子どもの様子や育ちをしっかりと見ることができるのが、行事の時だけになってしまうと、結果だけを見てもらうことになってしまう。でも、本当に知ってほしいのはそこではなくて、子どもの育ちの過程なんですよね。

先生たちにも結構難しいことを要求しているのかなとは思うんだけど、ただ「今日はこんなことをして楽しそうでした」「こんなことをしてかわいかったです」だけではなく、「そこにどんな子どもの姿があって、保育者のねらいがあったのかを書こう」と伝え、保護者とのやりとりをしてもらっています。


ー 保育者間ではどのように保育の視点やねらいの持ち方などのすり合わせはしているんですか?

研修をしたり、「ちょびちゃんだより」(奈津美さんのあだ名)という園だよりの先生向けバージョンみたいなものを作って(笑)、私のほうから先生たちに伝えたいことを知らせたりすることがあります。
あとは「学びの種コンテスト」というのをやったり。


ー 学びの種コンテスト?

日頃の生活で中で出会った子どもが学んでいる様子の中で、保育所保育指針の10の姿や3つの視点、こどもの王国の大切にしている8つのことのどれかに当てはまる姿を選んで、そのエピソードを書いてもらうという企画です。

保護者への保育の様子の共有を通して、先生たちの子どもを見る視点は育ってきているなと感じているんですが、どんな視点で子どもの育ちを見ているのかを、保育者がお互いに知る機会をつくりたくって。

最初は保育者の間だけでやろうと思ったんですが、それではもったいないなと思って保護者にも見てもらって、投票してもらえるようにしました(笑)。先生たちのスキルアップのためのものなのでご協力お願いします、と言って。

結果的に、保護者に保育者の想いもより伝わるし、保護者の子どもを見守る視点も少しずつ変化が見られて、やってよかったなと思っています。


ー どんどん新しいことにチャレンジしているのですね。

どれもまだまだ試行錯誤をしながらですけど、想いだけが先行しないようにしたいなと思っています。「経験するって大事だよね」と思っていても、いざ実践となると「あれ、それって本当に子ども自身の経験になってる?」という時もあるなぁと思うので。




受け止めること、ねらいを持つこと

ー 子どもと関わる上で大切にしていることはありますか?

二つ大事にしていることがあります。
一つは「まずは受け止める」こと、二つ目は「ねらいを持つ」こと。

自分の考えを持ち、他人の気持ちを理解するためには、まずは自分の気持ちに素直に向き合えるようになることが大切だなと思うんです。ネガティブな感情も、決して悪いことではない。
そのためにまず私たちがその感情を受け止め、共感し、言語化することから始めなくちゃいけないなと。

そして、そうやって子どもと関わる時に「なぜ私はそうするのか」というねらいを持てていると、関わり方が変わったり、振り返る時も反省したり改善したりすることができると考えています。
常にどう子どもと関わるといいのかを考えながら接したいです。



ー 子どもと保育者との関わりの中で印象に残っているエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

この前近くの公園まで散歩に行った時に、雨がバーっと降ってきたことがあったんです。
それでも遊び続けている子がいたのでどうするのかなと思っていたら、先生たちは「雨降ってきたね」、「ブランコしていたんだよね」とだけ声をかけたんです。
子どもたちが濡れたらそのあとの着替えが大変だという気持ちもあったとは思うんですけど、でも子どもと一緒にその状況を楽しんだり、感じてみたりしていて。
すごくいいなと思いました。

保育は正解がないから、子どもと一緒に「どうしようか?」と考えるんじゃなくて、教えちゃえばいいじゃん、と考える人もいると思うんです。失敗させないほうがいいよねとか。
でも、保育って本当に奥深くて、言葉がけひとつ、環境ひとつで姿がガラッと変わる。そのことを忘れちゃいけないなと、改めて思う出来事でした。


個と集団

ー 先ほど学びの種コンテストの話のなかで話されていた「こどもの王国が大切にする8つのこと」、どれもとても素敵だなと思いました。

1. “話し合う” ことを大切にします。
2. “探求する心” を大切にします。
3. “体験から学ぶ” ことを大切にします。
4. “やりたい!” の想いを大切にします。
5. “自分でできる” を大切にします。
6. “自分で決める” を大切にします。
7. “感情を味わう” を大切にします。
8. “子どもは一人の人間である” ことを大切にします。

ーそう思う一方で、どれもとても時間のかかることだし、子ども一人ひとりのペースに合わせる必要があることだろうなとも思いました。実現するために何か工夫していることなどあれば知りたいです。

少しだけ保育者を多く配置することや、保育者間の連携を大事にしています。

でもまだまだ実現できていないこともあるし、全部が全部ご自由にどうぞとはできないことがあるというのも、正直なところです。
個と集団、その間で先生たちも「どうするのがよかったんだろう」と悩みながらやっていますね。

あと、もし子どもの気持ちに応えられないことがあるなら、それは必ず子どもに説明します。「今日はこうだから、これはできないんだ」と。


ー 「できない」の反対に、「これをしてほしい」という時もあるかと思います。一斉に活動をする時間などはどうしていますか?

「今日こんなことしようと思っているんだ」と提案はしますが、ひとりふたり抜けていても、そこは強制しないですね。

入園説明会の時に保護者にも「お絵かきをする時も、一人一枚必ず描く、と決めたりはしないです」と伝えています。
子どもの気持ちに寄り添いたいので、いっぱい飾っているときもあれば、一枚もないときもありますよ、と。

ー 「ひとりふたりはやっていなくても」とさらっとおっしゃっていましたが、とても大事なことなのではないかと感じました。それによって、子どもたちに安全安心が生まれるし、大人の関わり方や声かけの仕方も変わってきますよね。

子どもたちにとって保育園は、何か特別なことができる場ではなく、居場所であるといいなと思うんです。家みたいな、安心できる場所。

子どもたちが無理なくそのまんまでいられるような場でありたいなと、心から思います。


取材・文:三輪 ひかり
写真:雨宮 みなみ

前編: 「自分で考え 行動し 責任を持つ人を育てる」ーこどもの王国保育園(東京都中央区)

「自分で考え 行動し 責任を持つ人を育てる」ーこどもの王国保育園(東京都中央区)

今回訪れたのは、東京都中央区にある“一般社団法人 一燈”が企業主導型保育事業として運営する、「こどもの王国保育園」。

保育をするのに適した環境とは言いづらい東京の真ん中でも、子どもに寄り添った保育はできる。今ある環境の中でどう“より良い”をつくっていくのか、保育者のみなさんの熱い想いと工夫がそこにはたくさんありました。
 

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