「自分で考え 行動し 責任を持つ人を育てる」ーこどもの王国保育園(東京都中央区)
今回訪れたのは、東京都中央区にある“一般社団法人 一燈”が企業主導型保育事業として運営する、「こどもの王国保育園」。
保育をするのに適した環境とは言いづらい東京の真ん中でも、子どもに寄り添った保育はできる。
今ある環境の中でどう“より良い”をつくっていくのか、保育者のみなさんの熱い想いと工夫がそこにはたくさんありました。
こどもの王国の生活
元気よく私たちを迎え入れてくれたのは、今回お話を伺う菊地奈津美さん。
奈津美さんは、こどもの王国保育園の立ち上げに携わり、現在、こどもの王国保育園(西池袋園)にて園長先生をしながら、現場全体のマネージメントを行なっています。
私たちが訪れたこの日は、週に一度の「英語の時間」がある日。
南アフリカ出身の先生を囲んで、手遊びに絵本を楽しみます。
「保育理念のひとつに、『多言語 多文化 多世代交流を通してコミュニケーション能力を育む』ということを置いているのですが、英語が喋れるようになるといいなと思っているわけではないんです。肌の色が違う、喋る言語が違う、文化や考え方が違う人に出会った時に、その違いに抵抗感を抱くのではなく、受け入れて一緒に過ごす経験をしてほしいなと思っているんです」
と、奈津美さん。
英語の先生にも、英語の時間だけではなく、そのあとの散歩、食事の時間と、生活を共に過ごす一人として、その場にいてもらっているのがとても印象的でした。
英語の時間のあとは、散歩へ出発!
園庭がないこどもの王国にとっては、街中全てが大きな庭です。
目的地までの道のりも、たっぷり楽しむ子どもたち。
公園に着くと散歩道で見つけた葉っぱを使って、工作がスタート。
子どもがやりたい!と思ったことをその場ですぐできるように、保育者は散歩にも工作の道具や絵の具を持っていくのだそう。
戸外は身体を動かして遊ぶ場所、だけではない世界が広がります。
この子は紙が飛ばないように紙をテーブルへ貼ったかと思ったら…
それが面白くなったようで、それが遊びへ展開!
「たくさん貼れたねぇ!おもしろいね」
保育者はその子を否定したり、葉っぱを貼るんだよと誘導するのではなく、その子のやりたかったことを肯定し、その状態を一緒に楽しんでいました。
こどもの王国のこだわり・工夫
【空間を有効活用】
広い園舎ではないからこそ、天井や壁などの空間も上手につかう。
子どもたちの絵は天井にも飾られ、場所をとりがちな絵本棚は壁につけるかたちですっきりと設置。
【収納は子ども目線で】
保育者に「これつかいたい」「せんせいとって」と言わなくても、子どもたちの手の届くところに使いたいものがきちんとある環境を設定。
片付けもしやすいように、視覚的補助も忘れない。
【オープンキッチン】
オープンキッチンであることで、子どもたちは自然と自分たちの食べるものに興味を持つ。
調理スタッフと子どもがおしゃべりをするのは、日常茶飯事。
見る、匂う、話す。食べるだけではない食育が日常の風景として、そこにはあります。
【写真で振り返り】
子どもたちが自分たちの遊びや活動を振り返れる写真が部屋のいたるところに。
その時の気持ちや状況を思い出して、またそこから遊びが広がっていくのだそう。
【呼んでほしい名前で呼び合う】
呼んでほしいあだ名でお互いを呼び合う文化がある。
今回お話を聞かせていただく奈津美さんは、子どもにも、保育者にも、保護者にも「ちょびちゃん」と呼ばれている。
*
柔らかで温かな保育者の眼差しのなかで、ゆったりと流れる時間。
限られた環境の中でも、自由に広がっていく子どもの世界。
こどもの王国保育園の保育はどんな想いから成り立っているのでしょうか。
じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。
取材・文:三輪 ひかり
写真:雨宮 みなみ
後編: 「大人の側にアプローチをする」保育者と保護者と共に育っていく、こどもの王国の取り組み
こどもの王国保育園の保育はどんな想いから成り立っているのか、園長の菊地奈津美さんにお話を伺いました。