しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第五回)「出会い直す縁」

暑い日々が続き、保育の環境や内容も考える日々。気がつくと挨拶が「暑いですね」になってしまう。そんな中、卒園児のご家族や卒園児からのうれしい話題がこのところ続いている。
一つ目は、ピザ作り。今高校3年生の卒園児の保護者さんであるハムロさんご夫婦が、お仕事でもあるピザ作りを子どもたちに披露してくれることになった。企画者は2歳児クラスすみれ組担当の宇野さん。お父さんもお母さんも変わりなく、ハッピーでとても優しい雰囲気で、私もふと心がゆるんでしまう。まだまだ未熟(今も未熟ですが)な自分のふるまいを思い出しつつ、あの日々が蘇る。
会場は園のホール。舞台に立って、ハムロさんがピザをくるくると回す。すごい!あっという間に子どもたちも保育者も目が釘付けに。楽しそうに生地を回す姿に、感嘆の声が響いた。その後は2歳児すみれ組は、ハムロさんと一緒にピザ作り。ハムロさんが作ってくれたピザ生地に、具材を乗せていく。丁寧にトッピングする子もいれば、お皿からザバっと入れる子もいる。独り占めしようとする子もいた。クラスで育てたナスはあんまり人気がなさそうで、保育者と笑った。出来たピザを乗せる敷紙は、絵が得意な保育者の若菜さんがイラストを描いた。色鮮やかなピザと、子どもたちの表情。おいしい記憶と、ハムロさんご夫妻の心持ちに私も気持ちが解けて、忙しい日々に少し空間ができたように感じた。
二つ目は、多摩美術大学の塩谷さんと小笠原さんによる粘土のワークショップ。こちらも卒園児の保護者さんのご紹介で、今回開催することが決まった。たくさんの粘土。好きなだけ、とことん遊べる空間。ひとりで作る子、大人と一緒に作る子、友達とずっとお話ししながら作る子達もいる。それぞれだけど、なんとなく感じあって作っている様子が心地よくて、保育者も伸び伸びとした心持ちで場にいたように思う。塩谷さん、小笠原さんの声をかけるタイミングや間合いも安心感があって、いい空気が流れていた。(こちらは映像で残る予定。またお知らせします)
そして、最後は卒園児のそうちゃんのこと。社会人になって、今アパレルのお仕事をされているそうちゃんが、この里山でしぜんの国と隣接している簗田寺で、何か一緒に出来ないかと話をしにきてくれたのだった。そうちゃんが作っているのが、竹で出来たTシャツやワンピース。「竹を使った素材で人々を健康に」をテーマにしたプロダクトを作っているそう。園庭でたくさん遊んだこと、自然体験、などこのしぜんの国でたくさん遊んだ経験が原体験にあると話をしてくれた。当時一緒に過ごした保育者もまだたくさんいて、とてもうれしそうだった。
時折、こんな風に人の縁と出会い直すことがある。私は変わらず、20年近くしぜんの国にいて、関わり方の濃度は年々色濃くなって、今は園長になった。子どもと一緒にいることがどんどん好きになる。大事になる。どんな苦労もこの喜びがあるかぎりいとわないと自然と思えるようになった、気がしている。時々泣きたくなることもあるけど。でもやっぱり保育園が好き。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ』の連載第五回です。
このコラムの連載
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第一回)「春のひかり。まぶしい出会い」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ(第二回)「おばけの葵さん」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第三回)「子どもと歩く みんなで歩く」
この祭典は、2歳児〜幼児グループが日頃行っているまち歩きを保護者の方と分かち合う日。子どもの視点や発見に耳を傾け、視線を合わせて、子どもに導かれて、この地を一緒に歩く。
パンフレットに以下の言葉を書いた。
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ(第四回)「私の現場」
「事件は会議室で起きてるんじゃない」という映画のセリフがあったけれど、保育はどこで起きているんだろう。立ち止まって考えてみると、さまざまな「現場」が保育園の中にはあるような気がする。