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第3回 「パワハラ」といわれない指導のポイントは…?【新 幼児と保育×ほいくるアンケート】

新 幼児と保育
掲載日:2019/10/25
第3回 「パワハラ」といわれない指導のポイントは…?【新 幼児と保育×ほいくるアンケート】

通称「ハラスメント防止法」が可決され、大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月までに防止策を講じることが義務となりました。

「後輩のために」と思って伝えた注意が「パワハラだ」と受け止められてしまったら…?
あるモデルケースをもとに、専門家といっしょに考えていきましょう。

新 幼児と保育』2019年10/11月号“保育現場に潜むハラスメント”記事とのコラボ企画で4回にわたってお届けする連載、第3回です。

この記事の出典  「新 幼児と保育」について

新 幼児と保育(小学館)

保育園・幼稚園・認定こども園などの先生向けに、保育をより充実するためのアイデアを提案する保育専門誌です。


お話を聞いた人

松好 登紀子(まつよし ときこ)さん

社会保険労務士。グローバル・ビズ・サポート株式会社講師。
外資系企業にて人事部部長として人事全般を経験し、マネジメント、ハラスメント防止などの研修を日本全国の企業・自治体にて行う。

パワハラといわれない効果的な指導法は?

「後輩のために」と思って注意したら「パワハラだ」といわれて、指導するのをためらうようになったという人が増えています。
どのように改善点を伝えるとよいかを考えてみましょう。

下のケースを読んで、問題点と対応を考えてみましょう。

【登場人物】

A主任
仕事熱心。後輩にも質の高い仕事を求める。ミスをした人に厳しい。

Bさん
新人保育者。間違いばかり指摘されて仕事がおもしろくない。

Bさん、昨日、たろうちゃんのケガの件、ちゃんと引き継がれてなかったのはどういうこと? <きつい口調で責める>

ノートには記載していたのですが、昨日は引き継ぎ事項が多くて、テンパってしまって......確認を怠ってしまいました。

言い訳はたくさん!うっかりですまされることじゃないでしょ!
新人だからって許されることじゃないからね。
あなたのせいで、たろうちゃんのお母さんから長々と文句いわれてたいへんだったんだから。
しっかりしてよ!あなたには保育者としての責任感が足りないように見えるのよね。適性ないかも。

すみません......気をつけます。<下を向いて小さな声で>

【Q1】
A主任の指導の問題点をあげましょう。


【Q2】
「引き継ぎ漏れ」という問題を解決するために、Bさんに行動を改善してもらう必要があります。具体的にどのような言動をとればよいでしょう。

解説

【Q1】
・Bさんを責めています。きつい口調でいうことにより、Bさんは萎縮します。

・Bさんの話を最後まで聞こうとしないで、自分が一方的に話しています。

・「保育士としての責任感が足りないように見える」「適性がない」などと具体的な行動改善につながらない批判をして、Bさんに過大な心理的負荷を与えています。
この指導だと、Bさんはまたミスをくり返す可能性があります。

【Q2】
実際は双方向のやりとりになりますが、Bさんに効果的に改善点を伝えるポイントと具体的な言動は以下の通りです。

・相手が受け入れやすいタイミングと場所を選ぶ
⇢みんなの前は避けましょう。Bさんを辱めることになります。

・非難せずに、相手の具体的な行動・事実に焦点を当てて伝える
⇢「昨日、たろうちゃんのケガのことが、遅番の○○さんに引き継がれていませんでした」

・自分が何を問題ととらえているのかを明確に伝える
⇢「一番重要な子どもの安全について、お母さんに伝えず、ご心配をかけました」

・私を主語にする “I メッセージ”で自分の気持ちを正直に伝える
⇢「お母さんには本当に申し訳なかったと思っています」

・相手の言い分を聞く
⇢「確かに、昨日はいろいろなことがあって大変でしたね」

・問題の解決策について相手の考えを聞く。場合によっては、自分から提案する
⇢「忙しくても引き継ぎで漏れることがないようにするためにはどうすればいいと思いますか?」
「私から提案してもいいですか?」

・改善点を伝えた後、フォローする
⇢「あれから引き継ぎが完全に行われています。その調子です」


改善点ばかり伝えるのではなく、日ごろ、部下や後輩のよい点をタイムリーに伝えましょう。
自分の行動をしっかり見てくれている人が改善点を伝えてくれると、受けとめてくれます。

文/佐藤 暢子  イラスト/上島 愛子



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