フローレンス駒崎さんが考える「保育士処遇問題」に対して、保育士ひとりひとりができること<後編>
「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」ことをミッションに、様々な子どもに関する事業を手掛ける、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さん。
前編は、フローレンスを立ち上げるまでの経緯や、それぞれの事業についてお話をお伺いしました。後編では、駒崎さんの活動の起点になっている想いや、保育士の処遇問題についてこれから私たちができることについてお話いただきます!
「必要だからやる」駒崎さんの考え方
私が保育士をしていたときは、「◯◯度以上熱がでたのでお家の人に電話します」というのが園のルールとして当たり前で、なかなかお迎えに来れないと、「なんで早く来てくれないんだろう。」と思ったりして。実はその考え方に疑問を感じることがありませんでした。
でも現場から離れたり、自分が母親になってみて、初めて「あれ?なんか偏っていたかな」と感じたことが結構多くて。
うんうん。
保育の業界の中で、「昔からそうだから」という理由で受け継がれているものって結構あるんじゃないかなと思うんです。
そしてその「当たり前」が前提になってしまって、何かを考えたり、変えたりすることを疎かにしてしまっているなぁと。なかなか立ち止まって考える余裕もないですし…。
たしかに、そうかもしれないですね。
そう思うと、改めてフローレンスさんは保育界のパイオニアだなぁと。
実際、病児保育や小規模保育、障害児保育を始めるにあたって、保育業界からなにか反応や反対はあったりしたんですか?
それが、実はなかったんですよ。
病児保育を始めるときは、保育の業界よりもむしろ医者のほうが冷たかったですね。
ぼくたちが病児保育を始めるまで、病児保育は施設型が中心で。その施設型は小児科が運営しているんです。
だから彼らの意識としては、病児保育は医療であり、医者のものだという観点が強くあったのかもしれません。
でもやってみて思ったんですけど、病児保育って「保育」なんですよね。
医療的な側面より、熱がでていても遊びたいというその子どもの気持ちを大切に寄り添うことが重要だと思うんです。
たしかにうちの子も、熱がでても遊びまわっています(笑)。
そうでしょう(笑)。
そう考えたら、子どもは薬を飲んで寝るだけではなく、病児保育のなかでも子どもたちが「楽しかった」って思えるように、保育的アプローチをとるべきなんです。
でも当時は医者に「病児保育は医療だ!」とガンガン言われても、「違いますよ」って言えなくて。
「そうなのかなぁ。」とか、「つらいなぁ。」って凹んでいました(笑)。
小規模保育のときも、特に保育業界の人に意見を聞いて始めたわけではなくて。
うちの社員の子どもが待機児童になってしまって、この子のために保育園作りたいと思って、始めたんです。
そうなんですか!
はい。
それで園を作るために規制とかいろいろ調べたんですけど、子どもの数が20人いないと認可保育園になれないなんておかしいと思ったんです。
もしそこが解消されて、子どもの数が9人とか10人とかの園を家やマンションで作れるようになれば、待機児童集中エリアにピンポイントで開園できるから、待機童問題も解消できるはずなのにって。
それでできたのが、おうち保育園です。
なるほど。
だから特に保育業界がどうだとか、そこからどう思われるかとかじゃなくて、「必要なことをやる」という気持ちでここまできました。