「子どもは生きる上で大切なことを教えてくれる」小笠原舞さんの視点から見る、子どもと保育〈後編〉
後編は、さらに深い話へ…。(前編へ)
日本式の評価基準に疑問
海外の保育事情を視察に行ったとき、すごく衝撃を受けた。
カナダは国として保育に関するフレームワーク(枠組み)があって、特に社会性と感情について細かく示されていたの。
0歳から24ヶ月とかカテゴリー毎に、どういった力を育てるためにどうすべきかという事が示されていた。
カナダは、“すぐに分からない事”へのフォーカスがすごい。
日本の場合は、表現・運動・言語とか、見える部分だよね。
別の機会で、国内のインターナショナルスクールに行ったとき、「感情」という言葉が貼ってあって、そこでは本当に子どもたちの感情を大切にしていた。
一人の子が、8を聞かれて6を指してしまった時に周りの子どもから違うと言われ、しゅんとしてしまったの。
普通、日本の保育園だったら「そこで違うね、じゃあわかる人?」とか次に進めちゃうけど、そこは違った。先生がその子に、「何でしゅんとしたの?」とフォローを入れて、その子が笑顔になるまで次に進まなかった。
間違った気持ちや恥ずかしさという負の感情に対して、それを自信に変えるアプローチをしていたの。感情が置いてきぼりにならない保育の姿勢にすごく感動した。
いじめとか悲しいニュースが多い中で、あれは子どもたちの心のサインだな、と感じる。幼児教育期にうまい下手、出来た・出来ないだけで判断されるのではなく、自分の気持ちに寄り添ってもらいながら成長できれば、もっと変わる様な気がする。
周りの大人たちがつくる環境が、子どもたちに良くも悪くも影響していくよね。
だからこそ、できるだけ多くの知識や経験の中から幅広い保育をと思うのだけど、それがなかなか難しい。
私が経験してきた保育士向け研修は方法論や理想論や多くて、現場に落とせるような内容が少なかった。
中には、参加回数が一種の評価基準としてしか機能していない所もあった。仕事が終わってクタクタで研修に行って、興味の薄い研修を受けて…。
ただえさえ求められるものが増えている保育士に、そんな環境の中で「保育の質が云々…」と求めるのはちょっと違うと思っていて、もっと保育士が余裕を持って、保育や子どもや遊びについてきちんと考えられるゆとりが、質だったり、舞ちゃんの言う「子どもたちが寄り添ってもらいながら成長する環境」に繋がるんじゃないかな、と。