「子どもがつくる、子どもの時間。」ー軽井沢風越幼稚園(長野県 北佐久郡 軽井沢町)
どんな子どもにも幸せな子ども時代を過ごしてほしい。遊びが学びへとつながっていく、人間の自然な育ちを大切にした場所をつくりたい。そうした思いをベースに、3歳から15歳(2027年度より2歳からになる)までが一つの校舎と森で過ごす「軽井沢風越学園/幼稚園」を2020年4月に開設しました。

提供:軽井沢風越学園/幼稚園
軽井沢風越幼稚園が大切にしていることは「子どもがつくる、子どもの時間」。
どんな子どもがつくる“子どもの時間”が軽井沢風越幼稚園の暮らしの中にあるのでしょうか。園見学とインタビューを通して、たっぷりとお届けします。
軽井沢風越幼稚園の1日
軽井沢風越幼稚園は、日常生活を自然の中におき、ほとんど全ての活動を野外で行う、森のようちえん。
私たちが訪れたのは、寒さ厳しい2月初旬。それでも、子どもたちはいつものように外で過ごしていました。
「今日はこれでも寒さが和らいで、暖かいんですよ。」
そう言って、笑いながら出迎えてくださったのは、園長の遠藤綾さん。

遠藤綾さん
子どもたちは、その日の天気や自然の姿に合わせた洋服を身に纏い、それぞれのペースで風越幼稚園での1日をスタートします。

スタッフや友だちと「おはよう」「今日さ・・・」とおしゃべり。

氷を使ってままごと。寒い冬ならではの遊び。
しばらくすると、ベルの音が。
風越幼稚園では、子どもがベルを鳴らし、集いの時間をみんなに知らせるのだそうです。

大きすぎない音で、心地よく暮らしの切り替えを教えてくれる。
ベルの音に気がついた人から、みんな動き始めたなと気がついた人へと、少しずつ集いの場へと集まってきます。

取材日は、年少・年中クラスの子どもたちが合同で朝の集いを行っていました。
全員がそろうまで、この日は20分ほどかかっていましたが、スタッフが大きな声で子どもを急かすことはありません。
その間、先に集まった子どもたちは歌をうたったり、おしゃべりをしたりしながら待っていました。

歌や声に誘われるように、みんなが次第に集まってくる。
月曜日は探検の日」。
集いの時間には、どこへ探検に行くのかをみんなで話し合い、森での気づきをスタッフが共有します。これから始まる探検が、より楽しいものになるように。

「こんな穴を見つけてね・・・」と子どもたちに写真を見せて紹介するスタッフ。
そして、身支度を済ませて、森へ出発!
朝の会でスタッフが紹介してくれた穴を見つけると、「ねぇ、ここにある!」「ここにもあるよ!」とさっそく嬉しそうに声をあげる子どもたち。

なんで穴があいているのかな。誰か住んでいるのかな。すぐそこにいるはずの森の生きものに、思いを馳せる。

葉っぱのお手紙、届けてみよう!
蔦のブランコをしたり、誰かがつくったであろうお家を見つけてそこで動物ごっこをしたり、思い思いにじっくり遊んでいると・・・

「ねぇ、あやさんもはいってみてよ!」
「おなかすいたー」という声がちらほら聞こえはじめました。
その声をきっかけに、子どもたちは、「じゃあそろそろ戻ろうか」と森をあとにして、おなかがすいた人たちは、お弁当を温めるための火おこしをはじめます。
この日の火おこしは、初めて年少クラスの子どもたちが担当。

「あ、ついた!」この瞬間の喜びは格別。

「ひがきえちゃうよ!」と、急いで枯葉や枯れ枝を集める子どもたち。忙しいけれど、どこか誇らしげな様子。
そのあとは、それぞれのペースでお弁当を食べはじめ、降園の時間まで、たっぷり遊びこんでいました。

蓋が開けられないと、「てつだって」と声をかけ、助け合う。

自分たちで創りだした世界のなかで遊び浸る。
軽井沢風越幼稚園の暮らし
自然の中で暮らす
軽井沢風越幼稚園には、森、川、山、崖、探検の道など、豊かなフィールドが広がります。

子どもたちは、多種多様なものにあふれる自然の中で、五感をいっぱいにひらきながら、想像力をふくらませ、遊びに浸ります。

これは何の鳥の羽だろう?

ねぇ、この木、穴がある。中に何か住んでいるんじゃない?
13年間のつながり
2歳から15歳(義務教育学校9年生)までの13年間を同じ敷地の中で活動するため、自然に異年齢の関わりが生まれます。
また、一人の子どもの育ちも途切れることなく連続していきます。13年間の連続した学びを支えるため、スタッフも幼稚園と義務教育学校の枠を超えて行ったり来たりしています。

中学生がプロジェクトのお知らせに幼稚園の集いに参加することも。

卒業式に参加する、幼稚園の子どもたち。「〇〇ちゃーん!」とランウェイを歩く卒業生たちにエールを送る。
“ない”ものいろいろ
給食がない、時計がない、行事がない、固定遊具がない・・・などなど、軽井沢風越幼稚園にはないものがたくさん。「ないこと」には一つひとつ理由があり、子どもがつくる子どもの時間を大切にしたいという思いとつながっています。

お弁当であることで、自分のタイミングで食べられる。夢中の遊びをやめずに継続できたり、朝の集いで少し遠い距離の探検を選択肢に入れることができる。

森の中に入れば、蔓がブランコに、倒木が滑り台に、木はジャングルジムになる。森の多様な環境に誘われて、自分の身体にあった挑戦を選ぶことができる。
じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。
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撮影:三輪 ひかり/水岡 香
一部写真提供:学校法人 軽井沢風越幼稚園
三輪ひかり