気持ちは“効率が悪い”――子どもたちの席決めから見えたこと。りんごの木子どもクラブ 柴田愛子さん×金谷梓さん〈番外編〉
 
                                            第10回目のおしゃべりのお相手は、りんごの木子どもクラブの保育者である金谷梓さん。
盛り上がったおしゃべりの中で、泣く泣く本編からはカットした「愛子さんと金谷梓さんのこぼれ話」を、番外編としてお届けしたいと思います。
愛子さん
今でも覚えているんだけれど、前に私の友人の榛地さんがりんごの木に来た日があったじゃない。その日のお昼ごはんの時間、「あずちゃんの隣りがいい」っていう子が3人いて、席がなかなか決まらなかったの。
女の子二人はあずちゃんの隣りにすると決めていたんだけど、そこに「ぼくだって、あずちゃんのとなりがいい!」っていう子が加わって。すると「でも、わたしたちはまえからきめてたんだよ」と返す声もあって……「じゃあどうする?」って状況になったのよね。
そうしたら別の子が「ここならいれてあげるよ」って声をかけて、そこに入ったんだけど、今度は「わたしが〇〇ちゃんのとなりなのに!」って、その子の隣りが良かった人がそうじゃなくなっちゃって。そんなふうにして、また席が決まらなくなったの。
結局、食べ始めるまで20分かかったのよ。でもね、みんなお腹が空いているはずなのに、誰ひとり「お腹すいた」とか「早くしようよ」なんて言わなかった。その姿を見て新地さんが、「こうして自分を大事にされた子は、きっと人を大事にできるようになるんだろうな」と話していたわ。

梓さん
たしかに、「ああ、まただ」みたいなのはあるけど、そこに文句を言う人はいないですよね。自分もそうやって待ってもらったり、気持ちを大事にしてもらったことがあったりするからなのかな。
愛子さん
私思うのはね、席をあらかじめ決めておけば早いし、順番だって大人が決めればすぐに済むし、揉めたらじゃんけんで決めることもできる。そうやって“効率よく”できるけれど、その子の気持ちは効率が悪いんだよね。
それに、子どもって困ったことがあったら、なんとかするのよ。
梓さん
本当にそう。子どもたちって困るとなんとかする。
席ひとつにしても、お互いに気持ちを伝え合った結果、どうにもならなくてどちらかが諦めることもあれば、「ぜったいいや!」「ぜったいゆずらない!」と言っていたのに根負けして「じゃあいいよ〜」になることもある。譲ってもらえなかったけど、どうしても座りたいから後ろで食べ終わるのをずっと待つ子もいたりする。
もし私(大人)が「ここに座りなさい」と決めてしまっていたら、そういう姿は見られなかったと思う。そう考えると、やっぱりその時間も気持ちも奪いたくないなって思うんですよね。
写真:雨宮 みなみ
この記事の連載
柴田愛子さんと金谷梓さんが語った、「りんごの木で働く」ということ。〈前編〉
第9回目のおしゃべりのお相手は、りんごの木子どもクラブの保育者である金谷梓さん。
14年ぶりに刊行された、りんごの木のミーティングについての本『子どもたちのミーティングⅡ -りんごの木の保育実践から-』にミーティングのエピソードを綴ったのが、梓さんです。
井戸端aikoでこれまで様々な方々とおしゃべりをしてきましたが、りんごの木のスタッフとはまだおしゃべりしてもらったことないなと思い、ほいくる編集部から「いかがですか?」とご提案をさせてもらって、梓さんとの対談が決まりました。
「まわり道が育てるものがある。」_りんごの木子どもクラブ 柴田愛子さん×金谷梓さん〈後編〉
第9回目のおしゃべりのお相手は、りんごの木子どもクラブの保育者である金谷梓さん。
前編では、りんごの木で働くことや個が尊重されるということについてお話してくださいました。後編では、最近のりんごの木の保育についてたっぷりと語ってくれます!
井戸端aiko
 
                りんごの木子どもクラブの柴田愛子さんが、子どもの世界の淵(ふち)にいる方とおしゃべりをする企画「井戸端aiko」。いろいろな方をゲストにお迎えし、お届けしています。
 三輪ひかり
						三輪ひかり
									

 
                                 
                                 
                                 
                                