食事中のうとうと、どう対応する?〜『エデュカーレ』2024年7月号より〜#03

今年度より、その一部をHoiClueにてご紹介しています。
今回お届けするのは、『エデュカーレ』2024年7月号より「食事中のうとうと、どう対応する?-あらためてかみしめたい」です。
『エデュカーレ』
東京大学名誉教授の汐見稔幸先生が責任編集を務める、保育者と親のための学び&交流誌。
「保育のことをもっと勉強したい!」「悩みについてみんなの意見を聞きたい!」「自分の思いを発信したい!」そんな人たちのための雑誌です。
https://ikuji-hoiku.net/educare/index.html
『エデュカーレ』2024年7月号「Shiomi's eyes「保育のスピリット」」第20回より
食事中のうとうと、どう対応する?-あらためてかみしめたい
たいへん悲しいことですが、保育所で保育中に子どもが亡くなってしまう事故があとを絶ちません。プールでの事故や散歩中の交通事故もありますが、多くの事故は、乳児に起こっています。そして乳児の死亡事故は、無認可保育所で起こることがやや多いようです。
これまで多かったのは、睡眠中の事故でした。まだ自分であおむけになれない乳児をうつぶせ寝にさせていたため、戻した食べ物を喉や鼻に詰まらせて窒息死してしまうケースや、理由がわからないまま突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群(SIDS)などです。
これに対して、昨今増えているのが、食事中の誤嚥による窒息死です。
一昨年、東京で起こったケースは考えさせられるものでした。1歳半ぐらいの女の子でした。食事中にうとうとし始めたのに、担当の保育士はしばらく起こして食べさせようとしました。それでも寝るので、食べさせるのを諦めたのですが、その子は小さく切った生のりんごが好きで、それを口に入れたままだったのです。
慌てた保育士は、とっさにその子の口に指を入れてそのりんごをかき出そうとしました。しかし子どもは、びっくりして逆にのみ込んでしまったのです。それが誤嚥を誘い、気道にりんごが入ってしまったというケースです。ぐったりしたので、すぐに救急車を呼んだのですが、間に合いませんでした。
こういうときは、どうすればよかったのでしょうか。指を口に入れるとき、子どもの頭を下にしていれば防げたかもしれません。そもそも、うとうとしているのに食事を続けさせようとしたことが問題だったのかもしれません。気道にりんごが入ってしまったとき、子どもの頭を下にして、肩甲骨の間を強くたたくことが必要だったのかもしれません。
いずれにしても、乳児はちょっとした配慮の不足で死に至る可能性があるということを、私たちはあらためてかみしめなくてはならないでしょう。
保育の専門性は、この側面からいうと看護師・保健師と変わらないのです。
文:『エデュカーレ』編集長、白梅学園大学名誉学長 汐見稔幸
もっと知りたい方へ
今回ご紹介した記事は、 『エデュカーレ』2024年7月号に掲載されています。
【特集】
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エデュカーレの汐見稔幸編集長の連載、「保育のスピリット」。2025年度より、その一部をHoiClueにてご紹介しています。

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2025/07/24