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しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第三回)「子どもと歩く みんなで歩く」

齋藤美和(さいとうみわ)
掲載日:2025/06/10
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第三回)「子どもと歩く みんなで歩く」

2025年度初めての行事「しぜん谷の冒険」が無事に終わった。
この祭典は、2歳児〜幼児グループが日頃行っているまち歩きを保護者の方と分かち合う日。子どもの視点や発見に耳を傾け、視線を合わせて、子どもに導かれて、この地を一緒に歩く。

パンフレットに以下の言葉を書いた。

しぜん谷の冒険によせて

谷合いに吹く風 
まちを歩き出会う人

勇敢な心をたずさえて
歩く 歩く すこやかな道

わたしの心がひらけば
いつでも扉はそこにある

この日は
子どもたちが歩く道を
そっと大人と楽しむ日

子どもと大人のまなざしが
かさなりあって、
ほほえみあえたらうれしいです


日頃の遊びを全てとめて、誰かに見せるために練習する行事ではなく、日々の延長にそっと色を添えるような祭典を・・・という考えのもと、この「しぜん谷の冒険」というイベントとなって数年が経つ。

保護者の皆さんも日常の奇跡をたくさん感じてくれていて、子どもたちに導かれて見える世界の尊さを感じてくれている。アンケートにもその愛が溢れていて、本当に素敵なご家族に恵まれているな、と私自身もひしひしと感じている。

もちろんブラッシュアップに必要なアイデアも届いていて「なるほど!」と思うことばかり。これからも、子どもを真ん中に、一緒に作る「お祭り」を大切にしていきたいと思う。



それにしても子どもと歩くということは単純なようで、手間がかかる。立ち止まる、見つける、見つけて、また立ち止まる。けれど、実は今の私たち大人の社会の中でも、こうして立ち止まって考えるということが、必要なんだろうなと思う。スマホのマップで行けば、最短距離で行けるところも、子どもと一緒だとそうはならない。

子どもと手を繋いで歩ける日は実はそんなに長くない。私も気がつけば息子の手の湿度なんて、とうの昔に忘れてしまっている。でも、ふと思い出すと、なんだか手のひらに残っているような気がする。

私と息子の間に、確かに手を繋いでゆっくりと歩いたあの日があった。一緒にしゃがんで見たダンゴムシ、夕焼けの色、こっそり食べた桑の実。手間、の中にある人と人の間のこと。揺れながら、間を彷徨いながら、家族の姿を眺めていた。

ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ』の連載第三回です。

園長美和さんのわっしょい日記

園長美和さんのわっしょい日記

しぜんの国保育園の暮らしについて、園長という視点から綴られているコラム連載。“タイトルの「わっしょい」はさまざまあるようですが、語源である「和を背負う」という意味と、なんだか口に出すとうれしい気持ちになるところから名付けました。悩み揺れながら感じる日々の小さなあれこれを綴っていきたいです。”(園長美和さんより)

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