しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第三回)「子どもと歩く みんなで歩く」

2025年度初めての行事「しぜん谷の冒険」が無事に終わった。
この祭典は、2歳児〜幼児グループが日頃行っているまち歩きを保護者の方と分かち合う日。子どもの視点や発見に耳を傾け、視線を合わせて、子どもに導かれて、この地を一緒に歩く。
パンフレットに以下の言葉を書いた。
しぜん谷の冒険によせて
谷合いに吹く風
まちを歩き出会う人
勇敢な心をたずさえて
歩く 歩く すこやかな道
わたしの心がひらけば
いつでも扉はそこにある
この日は
子どもたちが歩く道を
そっと大人と楽しむ日
子どもと大人のまなざしが
かさなりあって、
ほほえみあえたらうれしいです
日頃の遊びを全てとめて、誰かに見せるために練習する行事ではなく、日々の延長にそっと色を添えるような祭典を・・・という考えのもと、この「しぜん谷の冒険」というイベントとなって数年が経つ。
保護者の皆さんも日常の奇跡をたくさん感じてくれていて、子どもたちに導かれて見える世界の尊さを感じてくれている。アンケートにもその愛が溢れていて、本当に素敵なご家族に恵まれているな、と私自身もひしひしと感じている。
もちろんブラッシュアップに必要なアイデアも届いていて「なるほど!」と思うことばかり。これからも、子どもを真ん中に、一緒に作る「お祭り」を大切にしていきたいと思う。
それにしても子どもと歩くということは単純なようで、手間がかかる。立ち止まる、見つける、見つけて、また立ち止まる。けれど、実は今の私たち大人の社会の中でも、こうして立ち止まって考えるということが、必要なんだろうなと思う。スマホのマップで行けば、最短距離で行けるところも、子どもと一緒だとそうはならない。
子どもと手を繋いで歩ける日は実はそんなに長くない。私も気がつけば息子の手の湿度なんて、とうの昔に忘れてしまっている。でも、ふと思い出すと、なんだか手のひらに残っているような気がする。
私と息子の間に、確かに手を繋いでゆっくりと歩いたあの日があった。一緒にしゃがんで見たダンゴムシ、夕焼けの色、こっそり食べた桑の実。手間、の中にある人と人の間のこと。揺れながら、間を彷徨いながら、家族の姿を眺めていた。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ』の連載第三回です。
このコラムの連載
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ (第一回)「春のひかり。まぶしい出会い」
しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記Ⅲ(第二回)「おばけの葵さん」