しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記 (第十回)「でもさ、家には友達はいないよ」
節分が終わって、立春。春が来ると思ったら雪が降った。かずくんが「雪が降っているよ〜」と事務所に言いに来てくれる。大きな窓から雪をみて、飛び跳ねるこどもたち。「ゆ〜き!ゆ〜き!」けやき組(5歳児)の子たちは、みんなで声を出すのがうれしそう。それにつられてつばき組(3歳児)の子も混ざって「ゆ〜き!」。保育者のあゆちゃんがそんな話を教えてくれた。関係性が深まってくる3期。保育者から話されるエピソードや、書く記録のなかに、登場人物がたくさん出てくるようになった。
マネージャーのやなぎが、ふらっと子どもたちの焚き火の風景に出会った時に、こんな会話に触れたことを記録に残してくれた。
(園庭で焚き火の火を囲んで)
けん「こんなことができるけやきって特別だよね」
なな「これぐらいなら家でもできるよ」
けん「でもさ、家には友達はいないよ」
なな「そこはたしかに特別かもね」
かい「もっとたくさんできるといいな」
つむぐ「たくさんできたら特別とは言わないよ」
けん「今だからか」
かい「今って早いよね」
めぐ「…そろそろマシュマロ食べる?」
ふとした会話ではありましたが、こどもたちの今の心持ちに触れられたようで、私はこどもたち以上に小さくなりその場にいました。
やわらかな火の中でほどけていく心。穏やかで「今」という瞬間を感じるこどもたちの会話。その輪に自分の輪郭を消してそっと入った保育者の姿。「でもさ、家には友達はいないよ」という、けんくんの一言が、子どもたちの関係性の「今」を現しているように感じた。私も施設長として、いろんな書類や、深いやり取り、判断決断の立場にいるけれど、私もみんなに会いに来ているのかもしれないなあと思う。
ままならないこと、ちょっと乗り越えないといけないこと、モヤモヤもあるけれど、保育者も保護者も子どもたちも一緒にいられる楽しさで歩いていける。「迷ったら笑いの方へ」。今年度のテーマが、今やっとここにきて、身体に馴染んできている。
ー このコラムは『しぜんの国保育園 園長美和さんのわっしょい日記』の連載第10回です。
園長美和さんのわっしょい日記
しぜんの国保育園の暮らしについて、園長という視点から綴られているコラム連載。“タイトルの「わっしょい」はさまざまあるようですが、語源である「和を背負う」という意味と、なんだか口に出すとうれしい気持ちになるところから名付けました。悩み揺れながら感じる日々の小さなあれこれを綴っていきたいです。”(園長美和さんより)
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齋藤美和(さいとうみわ)