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保護者とのコミュニケーションのバランス、どうとっていく?〜ICTの活用方法や工夫をご紹介!〜

掲載日:2022/01/14
保護者とのコミュニケーションのバランス、どうとっていく?〜ICTの活用方法や工夫をご紹介!〜

2021年11月に実施したアンケート「教えて!気になるみんなの園のICT事情〜保育現場アンケート〜」。

現場で少しずつでも「ICTを導入している」という回答は、全体の75%以上に及びました。

業務が効率化した、保護者とのやりとりがスムーズになったというたくさんのメリットの声があった一方で、初めての導入にスムーズにいかない、難しいという声もちらほら…。

…そこで!
みなさんから寄せられた課題について、人間関係学博士でもある社会福祉法人ルピナス キッズ・キッズ折尾保育園 園長山本ユキコ先生に、解決のヒントや実践のアドバイスを聞いてみました。



【ICT導入の課題】保護者とのコミュニケーションのバランス、どうとっていく?

みんなの声(アンケートより)

・保護者との直接の連絡が減るのは確かなので、メリットもデメリットも感じる。
(認可保育所/保育者(常勤・正規職員))

・顔を見てコミュニケーションを取らないことによるトラブルはないだろうか。
(認可外保育施設/保育者(非常勤・パートタイム))

・実際、全てが機械的・事務的になり、連絡ノートの保護者からの返信が減った。
(認可保育所/主任)

出欠確認や日々の子どもの様子の共有、連絡など保護者とのやりとりに多くの園がICTを導入している中、直接話す機会が減ったことによる不安ややりづらさを感じるという声がありました。

ICTを通しながらも保護者とのコミュニケーションを円滑にとるには、どんな事を意識するといいのでしょうか?

答えてくれたのは… 

山本 ユキコ 先生
社会福祉法人ルピナス キッズ・キッズ折尾保育園 園長 
人間環境学博士


著書『子どもが伸びる がんばらない子育て』(フォレスト出版)

<解決ポイント1>基本は、“ポジティブなやりとり”に力を注ぐ!

私は保育業界に入る以前から「気になる子ども」の保護者支援に関心があったのですが、実際に日々の園運営に携わるようになってから、「保護者コミュニケーション」のベースは、信頼関係を築くことだと強く実感するようになりました。

心理学では、人間関係を円滑に進めるためには、ポジティブな会話や語りかけと、ネガティブな会話(例えば注意したりなどもネガティブに含まれます)は、5:1ぐらいの比率が良いと言われています。
良い関係が続けられなくなるのは、1:1や3:1ぐらいなのだそうです。

そのため信頼関係を築く上では、ポジティブなコミュニケーションに力を注ぐ、ということがとても大事になってくると思います。

 

<解決ポイント2>日々の情報発信やアンケートで、信頼関係を作る

私たちの園で具体的にどのように保護者との信頼関係を築いていったのか、2つの例をご紹介したいと思います。


日々の情報提供

保護者とのポジティブなコミュニケーションで最も良いのは、「子どもの成長を共に喜び合うこと」。
そのためには日々の子どものちょっとした成長をこまめに保護者に伝えることが必要になってきます。

私たちの園では、日々の保育の様子は、写真の配信、連絡帳、個別連絡の3つの方法を使って、保育の方針や思いについては月イチのおたよりで伝えるようにしています。

例えば、

・写真の配信
日々の子どもたちの集中した表情、笑顔の表情などを写真に撮って、「今日はこんなことをしました」などを伝えています。

・連絡帳
特定の子の素敵な瞬間があった時に、その保護者にお伝えするようにしています。「〇〇ちゃんとのやりとりでこんなことがあった」などです。

・個別連絡
本来、緊急性の高い連絡があった際に使うのですが、朝すごく泣いていた日に連絡帳とは別に個別連絡を使って「大丈夫ですよ」と保護者にお伝えするのに使っている保育者がいました。

こういった連絡を日中にしておくと、お迎えの際などにも保護者とポジティブなやりとりが生まれやすくなります。日々の情報発信をこまめに行なっていくことで、保護者からの信頼感が育まれるようになったと思います。

保護者アンケート

お互いの信頼関係が深まって保護者から感謝の言葉をいただくようになり、できればその言葉を形にしたいなと思うようになりました。
そこで保護者アンケートを実施しようと思ったのですが…ここもひとつ改善のポイントがありました。

アンケートでよくやってしまいがちなのが、良い声には応えずに、クレームや要望にだけ丁寧に対応する、というリアクションです。以前、私たちの園で実施していたアンケートもそうでした。

実はコミュニケーションの基本として、「応答したものは強化され、無視したものは反応が減る・なくなる」という法則があるんです。
園側がクレームにばかり対応し、良い声には反応しない、を繰り返していくとさらにクレームばかりが強くなっていく可能性があります。

そこで私たちが新たに保護者アンケートを実施した際には、クレームについては複数の意見をまとめてスマートにお答えするようにし、感謝の声に関しては一つずつ全てを取り上げて、園からの感謝もしっかりお伝えする、そんなふうに回答をまとめ保護者のみなさんにお配りしました。

そうしたら、いつもご要望の方が多い保護者の方が「他の人はこういう風に思っていたんですね」とご自身で気づくことがあったようで、それからはご要望やご意見の内容も少しずつ変わってきたんです。

さらに、アンケートのフォーマットを、保護者からの「意見」ではなく、「体験」や「感謝の言葉」を集めやすい形式に変えるなど工夫を重ねた結果、保護者からの感謝の声がたくさん集まるようになりました。

こうして保育者のやる気が育ち、また日々の情報発信を重ね…という、良いサイクルが生まれるように。
このサイクルがうまく回ることで、保護者と園のゆるぎない信頼関係が生まれ、保育者のやる気が上がり、運営がしやすい環境になります。
さらに保護者の口コミにより、入園希望が増えるというメリットもありました。

ぜひ、日々の情報発信には取り組んでみていただきたいなぁと思います。

***

制作協力:ユニファ

 

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