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今井和子先生に聞く 0・1・2歳児の眠りとは〜第3回 安心して眠れるために気持ちを安定させる5つの心得〜

新 幼児と保育
掲載日:2021/04/27
今井和子先生に聞く 0・1・2歳児の眠りとは〜第3回 安心して眠れるために気持ちを安定させる5つの心得〜

新学期、新しい環境の中で子どもたちが安心して眠れるようになるために、保育者はどんな点に気をつければいいでしょうか。乳幼児保育歴の長い今井和子先生に聞きました。

シリーズ第3回は「安心して眠れるために気持ちを安定させる5つの心得」です。

(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2018春 に掲載されたものを元に再構成しました)

監修

今井和子先生
「子どもとことば研究会」代表。二十数年間公立保育園で保育者として勤務。その後、東京成徳大学教授、立教女学院短期大学教授などを歴任。現役保育者であったころからの経験をもとに、全国の保育研修なども行っている。著書に『0・1・2歳児の担任になったら読む本 育ちの理解と指導計画【改訂版】』『0歳児から5歳児 行動の意味とその対応』(ともに小学館)など。

1. 不安な気持ちを受け入れ、泣かせてあげる

泣いたらまず、無理に泣きやませようとはせず、「泣いていいんだよ」と、不安な気持ちを受けとめます。そして、その子がどうしてほしいのか、泣いている理由を探します。
「おむつがぬれて気持ち悪かったね」
「おなかがすいちゃったのね」
と、その子の身になって話しかけるだけで、子どもは安心するものなのです。

また、一人ひとりの保護者から、子どもが家ではどんなときによく泣き、どのようなあやし方をしているかを詳しく聞いておくのもよいでしょう。

泣いている子の気持ちが和らいできたら、抱っこは向き合うのではなく、前向きにして、一緒の方向を見るようにします。まわりが見えるようになることで子どもの世界が広がり、いろいろなものに興味を持つようになります。 


2. 戸外に出て、自然に触れる

戸外に出て自然に触れることで、開放感に浸れ、情緒が安定することで安心して眠れるようになります。

園庭でブランコに乗っている他児をじっと見ていたり、散歩の途中で電車に見入っていたりと、特に戸外ではまわりのことに興味津々。そんなとき、その子が何に見とれるのか、子どもと同じ目線で観察します。興味のあるものを見つけたら、「Aくんは電車が好きなのね」などと言葉をかけると、自分の気持ちがまわりの人に伝わったことを喜ぶとともに、人を信頼し、その人に心を開いていくきっかけにもなります。そうすればやがて「今、電車で遊びたかったの」と、自分の気持ちを言葉で表現できるようになっていきます。
 

3. 生き物を飼う

大抵の子どもは生き物に興味津々。子どもは応答してくれるものが好きなので、自分自身で動くものや、エサをあげるなど、何か働きかけたら返ってくるものに対し、おもしろみを感じるようです。そのため、金魚やカメ、小鳥、ハムスターなど、小動物を飼ってみるのもいいでしょう。特に新入園児は、それらに親しみながら、次第に不安を解消していくこともあります。子どもが観察しやすいよう、飼育ケースは子どもの身長に合った見やすい場所に設置します。

3歳以降にもなれば、生き物とのふれあいが、好奇心や思いやりの心を育むきっかけにもなるので、継続的に飼育できる環境づくりも重要です。

※月齢、年齢はあくまでも目安です。


4. ホッとできる居場所をつくる

1歳近くなると、絵本のコーナーやベランダなど、それぞれ好きな場所ができます。泣いていても、そうした安心できる居場所に連れて行ってあげると泣きやむことも。そこから自分で遊びを見つけ出していくので、仕切りを設けて、一人ひとりでじっくり遊べるスペースをつくりましょう。好きな場所や好きな遊び、その子の興味の対象は何かということを、保育者が早くつかむことが、信頼関係を築く原動力にもなります。

また、なかなか園になじめない場合、家庭で大切にしている愛着対象物(ぬいぐるみや人形、タオルなど)を持ってきてもらい、気持ちを落ち着かせます。


5. スキンシップを大切にした遊びを心がける

乳幼児の不安や緊張を和らげるには、スキンシップがなにより。なるべく同じ保育者が同じ子を受け入れるようにつとめ、子どもを安心させます。気持ちが安定してきたら、あやし遊びやおはしゃぎ遊びをして、信頼関係を築きましょう。やさしいとなえ歌や子守唄も、声のスキンシップになります。


文/大石裕美 イラスト/奥まほみ

  

この記事の出典  『新 幼児と保育』について

新 幼児と保育

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