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今井和子先生に聞く 0・1・2歳児の眠りとは〜第1回 家庭での生活リズムを把握して子どもに合わせた環境をつくる〜

新 幼児と保育
掲載日:2021/04/13
今井和子先生に聞く 0・1・2歳児の眠りとは〜第1回 家庭での生活リズムを把握して子どもに合わせた環境をつくる〜

これまで一心同体のように世話をしてもらっていた大人から離れ、まったく新しい人や場での生活がスタートしました。そんな環境の中で乳幼児が安心して眠れるようになるために、大切なことは何でしょう。

乳幼児保育歴の長い今井和子先生に、ヒントを教わります。
第1回は「家庭での生活リズムを把握して子どもに合わせた環境をつくる」です。

(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2018年春 に掲載されたものを元に再構成しました)


監修

今井和子先生
「子どもとことば研究会」代表。二十数年間公立保育園で保育者として勤務。その後、東京成徳大学教授、立教女学院短期大学教授などを歴任。現役保育者であったころからの経験をもとに、全国の保育研修なども行っている。著書に『0・1・2歳児の担任になったら読む本 育ちの理解と指導計画【改訂版】』『0歳児から5歳児 行動の意味とその対応』(ともに小学館)など。


眠れるということは園に慣れてきたあかしです

子どもが新しい環境に慣れるためには、1か月ぐらいかかります。情緒が安定しない0歳児は、さまざまな非言語サインを保育者に送ってきます。泣いて訴えるのはもちろん、寝つきが悪くなったり、ミルクを飲まなくなったりなど、その多くは基本的な生活に関連することです。環境の変化から生じるストレスが、生理的生活リズムに影響するのです。

日常的生活活動の中で、最もベースになるのが、その生理的生活リズムをつくること。中でも0歲児の生活リズムづくりは、睡眠リズムを整えることからスタートします。そのためには、今までどういう生活を送ってきたか、家庭での様子をどれだけ理解できるかが重要です。午前寝する子としない子、おんぶをしないと寝ない子、抱っこしてよく寝かせてからベッドへ移す子など、保護者と綿密に連絡をとり、一人ひとりに合った寝かせ方をつかむことが大切です。

子どもが家にいるときと同じように眠れるようになったというのは、園に慣れ、安心できるようになったあかしといえます。つまり、0歳児が園生活に対応できているかどうかは、睡眠の変調の有無が重要なサインなのです。精神生活が安定するように、安心して眠れる状況を作ってあげたいですね。


家庭での生活リズムを把握する

新入園児の緊張や不安は想像以上のものがあります。この入園期の心理的動揺を最小限に食いとめるために、入園当初は、園の生活リズムに子どもを慣らすのではなく、家庭のリズムに合わせながら、子ども自身が園になじんでいくための保育が大切です。

そのためには、入園前面接や事前アンケートなどで、これまでの育ちを詳しく聞いて理解し、家庭に近い対応、環境づくりを行います。名前の呼び方や抱き方、家ではどんなふうに寝かしつけているかなど、なるべく細かく聞いて一人ひとりの生活の流れをしっかり把握し、個人別の生活一覧表(下表)を作成しておくと便利です。

担当だけでなく、すべての保育者、看護師、栄養士など、0歳児保育にかかわる職員全員が、0歳児の家庭での生活の仕方を知ることができます。こうした配慮をすることで、一人ひとりの子どもを、より家庭に近い状態で対応できるようになり、安心して生活できる状況をつくっていくことができます。

また、0歳児は月齢によって成長の差が大きいので、なるべく低月齢、高月齢と少人数に分け、発達に応じた保育ができるように心がけます。子どもが安心できる心のよりどころになれるよう、同じ保育者が受け入れる(抱く、話しかける、世話をする)、担当保育制がおすすめです。

入園当初は、特に保護者と紹密に連絡をとり、家に帰ってからの様子などを教えてもらう必要もあります。子どもによっては、発熱や下痢など、体調の変化を訴える子もいるので、欠かせません。非言語的サインをしっかり感受し応答することが、この時期の保育のポイントです。これにより、子どもや保護者との信頼関係も育まれます。


個人生活一覧表の例

みずほ 3か月

ミルクの飲ませ方 抱いて
ミルクの温度 熱め
離乳食の状態 なし
食べさせ方 なし
寝方 ベッド上向き
寝るときの傾向 音に敏感
呼び方 みーみ
アレルギーの有無
平熱 36度4分

はると 5か月

ミルクの飲ませ方 抱いて(よく吐く)
ミルクの温度 人肌
離乳食の状態 果汁(スプーンで)
食べさせ方 抱いて
寝方 畳 上向き
寝るときの傾向 指しゃぶり
呼び方 はるくん
アレルギーの有無 有(牛乳)
平熱 37度


文/大石裕美 イラスト/奥まほみ

 

この記事の出典  『新 幼児と保育』について

新 幼児と保育

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