豪雨が起こした「まさか」の災害~第3回 空振りを恐れず、先読みして行動する~
近年、地球温暖化の影響もあり、ゲリラ豪雨や台風などにより日本全国で水害が多発しています。鶴見大学短期大学部の天野珠路先生によるこの連載では、2015年の鬼怒川決壊で思いがけず浸水被害に遭った茨城県常総市のこども園、保育園をレポートしてきました。
連載第3回は「空振りを恐れず、先読みして行動する」。
防災の専門家を訪ね、水害への備えを語ってもらいました。自園の状況に照らし、取り入れて台風シーズンを乗り切りましょう。
(この記事は、『新 幼児と保育』2019年8/9月号に掲載されたものを元に再構成しました)
レポートする人
天野珠路(あまのたまじ)先生
鶴見大学短期大学部教授。元厚生労働省保育指導専門官。映画『3.11その時、保育園は』(2011年岩波映像)監修。著書に『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』(2017年かもがわ出版)、『3・4・5歳児の指導計画保育園編【改訂版】』(小学館)などがある。『新 幼児と保育』誌上で「災害への備え2020」連載中。
取材協力
サニー・カミヤさん
危機管理アドバイザー。一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事。
福岡市でレスキュー隊員、ニューヨーク州で救急隊員として人命救助に従事し、国際レスキュー隊としても活動。保育園向けの防災講演も行っている。お問い合わせは以下のサイトから。
一般社団法人 日本防災教育訓練センター~助かる命を助けるために!~
水深10センチで、子どもは歩けなくなる
道路が冠水し始めたら、子どもが歩いて避難するのはまず無理です。子どもにとっての水深10センチは大人にとっての水深30センチと同じで、流れもあるため歩行は困難です。わずかな高低差で水の深いところもあり、園の前が10センチ以下でもその先はわかりません。
また、冠水には雨水だけではなく、がれきやあふれた汚水も混ざっています。けがや感染症の危険もあるので、冠水する前に避難することが大切です。
早めの現場判断をする
特別警報クラスの豪雨の場合、複数の河川や危険箇所の情報が集中し、市区町村役所は対応に追われて混乱します。園の地域の状況は、現場にいる者にしか判断できません。あとで「避難する必要はなかった」という結論になっても、気象状況を先読みして早めに避難するのはまちがっていません。園児第一、安全第一で下した判断なら、結果が空振りでもよいのです。
避難するときの注意
園児とともに大雨の中を避難することになったら、次の点に注意してください。
•長靴ではなく、上履きで
長靴は水が入ると重くなるので、上履きやスニーカーのほうがよい。
•傘ではなく、雨がっぱで
個人用がない場合は、45リットルのポリ袋2枚でフードつきのポンチョができる(「ゴミ袋 ポンチョ」などでネット検索すると作り方が多数見つかる)。
•つえなどで足元を確認しながら進む
ふたが浮いたマンホール、ふたのない側溝に落ちないよう、保育者は常に足元を確認する。
•避難後は水道水でよく洗う
避難場所に着いたら、水にぬれた足や手を水道水で十分洗い流しておく。
アクションシートでリスクを共有
構成/清水 洋美
この記事の出典 『新 幼児と保育』について
新 幼児と保育(小学館)
保育園・幼稚園・認定こども園などの先生向けに、保育をより充実させるためのアイデアを提案する保育専門誌です。
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この記事の連載
豪雨が起こした「まさか」の災害~第1回 わずかな高低差が浸水のリスクに~
2015年の鬼怒川決壊では、水害には縁遠いと思われていた地域にも浸水被害が及びました。そんな地域のひとつ、茨城県常総市を鶴見大学短期大学部の天野珠路先生が訪問し、お話を聞きます。
第1回は「わずかな高低差が浸水のリスクに」。
常総市公立水海道第三保育所の稲見好枝所長に、「まさか」の園舎浸水についてうかがいました。
豪雨が起こした「まさか」の災害~第2回 現場に求められる緊急の判断~
第2回は「現場に求められる緊急の判断」。
常総市内の保育所、こども園と市のこども課に、緊急の判断が求められた豪雨の日の様子や、その経験を元に検討した対応をうかがいました。