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「保育は“バランス”で成り立っている」 RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんの考える保育の在り方

三輪ひかり
掲載日:2020/02/21
「保育は“バランス”で成り立っている」 RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんの考える保育の在り方

前編で、子どもの「やりたい」を応援する方法についてお話してくださった、RISSHO KID'S きらり園長の坂本喜一郎さん。

そこからお話はどんどん深まり、クラスの分け方や一日の流れなど、子どもたちの日々の“生活”の話へと移り変わっていきます。


保育のなかにある「バランス」

ー きらりの幼児クラスは、基本的に異年齢で保育をされていると聞きました。

遊びは基本的には異年齢で行なっているし、重要だと思っていますが、同年齢で過ごす時間もあります。一日の6割は異年齢だけど、朝や帰りの集まり・午前中の外遊びなど4割は同年齢かな。

なぜかというと、子どもを取り巻く集団にはいろんな役割があると考えていて、「同年齢との関わり」の中では、協力したり、励まし合ったり、競い合ったりする気持ちが培われるし、「異年齢の関わり」の中では、相手を尊敬したり、憧れたり、可愛がったり、親切にしたりする気持ちが培われていくと考えているから。

保育は全て、バランスが大事ですよね。


ー バランス、ですか。

そう、保育の中は全部バランス。
同年齢と異年齢。外と室内。ダイナミックな遊びとじっくりする遊びなど。

あとは、頑張る自分がいるなら、頑張らない自分もいないとダメだよね。その頑張らない自分というのは、要は「くつろぐ」ということなんですけど。

生活リズムという言葉を保育ではよく聞きますが、私は生活リズムの定義は、基本的生活習慣をリズムよくやるという「園生活のスケジュール」というよりも、「頑張る自分と頑張らない自分を繰り返すこと」だと思うんです。まさに「子どもの生きるリズム」になっていくのかな。

好きなことをやっていても、嫌なことをやっていたとしても、頑張って生きているだけで疲れるでしょう。大人だって、自分らしく生きるために休むじゃないですか、それと一緒。

ホッとすることでエネルギーが湧いてきて、また生き生きと動き出す。小さな子だと一日の中でそのサイクルの回転が早くて、年齢があがってくるとそのサイクルがゆっくりになっていくと考えています。


ー くつろぐ時間はたとえばどんな時間のことを指すのでしょうか?

まず食事の時間は、くつろぎの時間だよね。

さっき遊びの中での環境デザインについて話しましたが、くつろぎの環境デザインも大切。まさにこの食事スペース(=掘りごたつのランチルーム)はくつろぎの環境デザインです。
ほかにも、玄関のソファやロッカールーム・薄暗い絵本コーナーや子どもしか入れないロフトなど、子どもがいつでも心地よく過ごせる空間があることが、1日の生活時間が長い保育園だからこそとても大切なんですよね。

小学校には、食事は決められた時間内や無言(=もぐもぐタイム)で食べなくちゃいけないところがあると聞きます。でもそれって、人間らしく生きることを大切にしたい時、どうなんでしょうか。

食事の時間は本来、自分の好きなタイミングで好きな人と一緒に食べることを楽しむ時間だと思うんです。午前中の生き生きとした時間の反動でくる疲れを癒す。そういう時間を過ごして、子どもたちはまた生き生きと活動し始めるんです。


客観的な視点を持つ存在

でも気をつけなくちゃいけないのは、バランスをとるために子どもたちに“やらせる”ということはしない、ということ。

じゃあ保育者の役割は何なのかというと、気づかせることだよね。子どもたちは好きなことに熱中すればするほど、バランスがとれにくくなっていくこともいっぱいあるので。

子どもって疲労困憊しているのに、興奮状態にいると遊び続けようとするでしょう。

たとえば海に行くと、普段12時くらいにごはんを食べているのに、13時になってもずっと遊び続けている子どももいたりします。だからそういう時に「ごはん食べなさい」じゃなくて、「お腹空いた人いる?」と10分置きくらいずつ声をかけるんです。

そうすると、1人、2人とごはん食べようかなとなっていく。お腹が空いていることにも気づいていないからこそ、それに気がつけるように声を掛ける。

保育者が「ちょっともう疲れている人いない?」「お腹空いている人いない?」と客観的な視点で見ること。それが大人の重要な役割なんじゃないかなと思います。


ー そう考えると、観察することの大切さを改めて感じます。

そうですね。とことん子どもと遊ぶ時間ももちろん大切だけど、保育者が渦中の人になってしまうと、客観的に物事を見れなくなってしまうということにも気づくよね。


二つに分けて「遊び」を捉える

ー 先程、遊びも「ダイナミックな遊び」と「じっくり取り組む遊び」があるとおっしゃっていましたね。

子どもたちって、自然とバランスよくいろんな遊びをしています。それは、子ども一人ひとりに興味あることがあるので、それをお互いに見合ったり、刺激しあったりすることで起こる。だから「豊かな遊びは重要だ」と言われているわけです。

そして、その豊かな遊びを2つに分けると、「ダイナミックな遊び」と「じっくり取り組む遊び」に分けられると思います。

ダイナミックな遊びは、全身を使い跳んだり、走り回ったり、体を思いっきり動かすもの。
様々な自然や社会事象と出会う中で、「思い切り心と体を躍らせて遊ぶ姿(動的姿)」を指します。
そして、じっくり取り組む遊びは、自分ひとりや気の合う仲間、目的を共有する仲間と、大好きな遊びに没頭し熱中することで、「さまざまな学びや発見を楽しむ姿(静的姿)」のこと。

きらりでは、午前中を園外に足を運びダイナミックな遊びをメインに過ごせる時間、午後を室内でじっくり遊ぶ時間にしています。

じっくりと自分の決めたことに取り組むと面白い姿が見られますよ。

この前なんて、地域の交番にいるお巡りさんと友だちになったことで、警察を好きになった子どもたちが警察署まで行かせてもらったんです。

「もっと警察のことを知りたい」と言ったら、そのお巡りさんが警察署を紹介してくれて、依頼状を書いたことで実現したんだけど、その時子どもたちが頼んだのが「普段、警察官が身につけているもの全部見せてください」だったの。
面白いよね、まず大人では聞かない質問。

そうしたら、警察官の方が丁寧にブルーシートの上に全部載せて見せてくれたんだって。だから子どもたちは、僕らが知らないようなグッズまでよく知ってるし、防弾チョッキも着させてもらって重さに驚いたみたいなんだけど、そこから「だから警察官の人は武道をやって体を鍛えるし、あんなに強いんだ」って体感したみたいなんです。

その後、何が起こったかというと、園では警察官のコスチュームづくりや、劇あそびが始まって。犯人役を担任の保育者がして、取り調べ室で話を聞くみたいなストーリーで劇を作り上げたんだけど、それを警察官の方がわざわざ園まで見にきてくれる、ということもありました。

「知りたい、やりたい」から子どもたちの世界も、人との繋がりも広がっていくんだと実感した出来事でした。


子どもの生きるリズムで保育をしよう

ー坂本さんのお話を聞いていて、「自分らしく生きる」ということはどういうことなのか、改めて考えたくなりました。

やっぱり、「生き生きすること」と「くつろぐこと」、これを自分のリズムで行うことから始まるんじゃないかな。

きらりでは、3歳の10月から昼寝をなくし選択制にするんです。なぜかというと、体力が高まってくることで、ほとんどの子どもが昼寝をする必要がなくなっていくからなんです。

もちろん「今日は横になりたい」という子は、2歳さんと一緒に寝る子がいたりするけど、「生活リズムが大事ですから」という大人の一方的な価値観で昼寝をさせるのは、生活リズムでもなんでもなくて、正直保育者の都合だと思うんです。子どもたちは昼寝させられているんです。

眠たい子は寝たらいいし、寝たくない子は静かに遊んでいればいい。だからきらりは選択制になるんです。そしてそれが本当の生きるリズムだと思うなぁ。

「子どもの生きるリズム」と「園の生活スケジュール」を一緒にしてしまってはいけないですよね。そこが混同してしまっていることがあるのかなと思うけど、生きるリズムって『自分でタイミングを決めること』だと思うので。

食べるタイミングも、トイレに行くタイミングも、寝るタイミングも、やりたいことも、本来一人ひとり違う。人が人間らしく、自分らしく生きるって、一人ひとりの子どもの生きるリズムで過ごせることから始まるし、その「一人ひとりの自分らしさを大切にして、応援していく」のが、保育だと思います。

だから保育者のみなさんには、保育の表面的なところだけを見るのではなくて、それがどれだけ子どもの自分らしさ、人間らしさに繋がっているのかを考えてほしい。

そして、「子ども一人ひとりの自分らしさを応援している」ことを自分なりの言葉で少しでも説明できるような実践を、保育の中ではやっていってほしいなと思います。時おり保育現場で耳にする「上司に言われているからやってます」、「昔からそうなんです」は違うよね、もう。

お話をうかがった人



坂本 喜一郎 (さかもと きいちろう)

社会福祉法人たちばな福祉会 RISSHO KID’S きらり 園長。
玉川大学、相模女子大学、関東学院大学、和泉短期大学、聖セシリア女子短期大学 非常勤講師。一般社団法人 Learning journey(LJ)理事。
「こどももおとなも生きることをとことん楽しめる保育デザイン」をメインテーマに、保育環境・組織マネジメント・保育者養成を研究。
『ヴィジブルな保育記録のススメ』(すずき出版)、『コンパス保育内容「環境」』(建帛社)など、執筆・協力も多数。
趣味はアウトドア全般(磯遊び・登山・サイクリング)、温泉につかり&美味しいものを食べること!




インタビュー・文:三輪ひかり
写真:雨宮みなみ
(保育活動の写真一部/プロフィール写真ご提供:RISSHO KID'S きらり)


前編:「そうだね、と言って終わりにしてない?」RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんが提案する、子どもの「やりたい」をとことん応援する方法

「そうだね、と言って終わりにしてない?」RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんが提案する、子どもの「やりたい」をとことん応援する方法

今回、ほいくる編集部が訪れた神奈川県相模原市にある「RISSHO KID'S きらり」は、『ひとりの夢が、みんなの夢になる。ひとりの幸せが、みんなの幸せになる』を保育理念に、とことん子どものやりたいを応援しているといいます。

そこで、RISSHO KID'S きらりの園長である、坂本喜一郎さんに「子どものやりたいを応援する方法」についてお話を伺うことにしました。
 

「管理職の役割は基盤をつくること」RISSHO KID’S きらり坂本喜一郎さんと考える、保育園の“組織マネジメント”

「管理職の役割は基盤をつくること」RISSHO KID’S きらり坂本喜一郎さんと考える、保育園の“組織マネジメント”

全国的に深刻な問題になっている保育士不足。低賃金、職場環境や人間関係の難しさ、大切な乳幼児期に関わる重責など、様々な要因からこの状況が引き起こされ、「先生がどんどん辞めていってしまう」、「来年度の保育士が足りない」と多くの保育園や幼稚園の課題となっています。

そんな中、子どもに寄り添う方法や保育のあり方について、たっぷりお話してくださった坂本さんが園長を務める「RISSHO KID’S きらり」では、何年も働き続ける職員の姿があるといいます。

なぜきらりでは、辞めないのか。保育者を続けたいと思うのか。
その根底には、ある“考え方”がありました。

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