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「そうだね、と言って終わりにしてない?」RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんが提案する、子どもの「やりたい」をとことん応援する方法

三輪ひかり
「そうだね、と言って終わりにしてない?」RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんが提案する、子どもの「やりたい」をとことん応援する方法

夢と語れるような大きなものから日々の小さな願いまで、子どもたちはさまざまな「やりたい」に満ち溢れています。
そして、そんな子どもたちの「やりたい」に寄り添い、応援することが、私たち保育者の役割のひとつと言ってもいいかもしれません。

今回、ほいくる編集部が訪れた神奈川県相模原市にある「RISSHO KID'S きらり」は、『ひとりの夢が、みんなの夢になる。ひとりの幸せが、みんなの幸せになる』を保育理念に、とことん子どものやりたいを応援しているといいます。

そこで、RISSHO KID'S きらりの園長である、坂本喜一郎さんに「子どものやりたいを応援する方法」についてお話を伺うことにしました。


「そうだね」で終わってしまっていない?

子どもが何かを「やりたい」と言った時に、「そうだね」「できたらいいね」と言う人はいっぱいいると思います。でもその時に、口で共感するだけでわかった気になっていないか、自分の行動をちょっと振り返ってみてほしいなと思うんです。

坂本 喜一郎 (さかもと きいちろう)

社会福祉法人たちばな福祉会 RISSHO KID’S きらり 園長。
玉川大学、相模女子大学、関東学院大学、和泉短期大学、聖セシリア女子短期大学 非常勤講師。一般社団法人 Learning journey(LJ)理事。
「こどももおとなも生きることをとことん楽しめる保育デザイン」をメインテーマに、保育環境・組織マネジメント・保育者養成を研究。
『ヴィジブルな保育記録のススメ』(すずき出版)、『コンパス保育内容「環境」』(建帛社)など、執筆・協力も多数。
趣味はアウトドア全般(磯遊び・登山・サイクリング)、温泉につかり&美味しいものを食べること!

きらりでは、保育者は「子どもの生きるパートナー」だと考えています。だから、口で共感するだけじゃなくて、パートナーとしてその“やりたい”が実現できるように、保育者自身も一緒に行動をする。だって、行動しない限りやりたいことは実現できないでしょう?

子どもたちの“やりたい”という気持ちが、「計画にはないからダメ」という理由や、担任の都合や気分で却下されてしまうことがよくあると思いますが、パートナーであれば子どもに「行きたい・見たい・やりたい」と言われて、それに対して「そうだね」と言うのだったら、今日実現できるように動く。それが大事なんじゃないかなあ。


ー できたらいいね、のままにしておかないということですね。

そう。今日もいま、2歳児が消防署に行っているけど、避難訓練の一環とかではなく、子どもが朝の集まりで「しょうぼうしゃ みたい」と言ったことから始まっているんだよね。

「応援する」をほかの言葉に言い換えるなら、「タイムリーに環境デザインしていく」ということかなと思います。保育者がタイムリーに環境をデザインしていく力を持っているのか、それとも共感の“ふり”で終わってしまうのか、そこで保育が大きく変わりますよね。

「そうだよね」と言って子どもに期待を持たせながら、やらないで終わる。本当にそれはしちゃダメだなと思うんです。「時間があれば…」「できたらね…」と、保育者には綺麗事で終わらせないでほしいし、そもそもできないなら「そうだね」と言わない。

「ごめんね、それはできない」「保育園では行けないから、お父さんとお母さんにおうちで行けるか相談してみよう」と正直な気持ちを伝えればいいと思うんです。

だって子どもは、共感してもらえたと信じているのに実現できないということが積み重なると、「大人は『いい』って言ってるけど、どうせやらせてくれない」ということを学んでしまうのではないでしょうか。


ー「いい」って言ってるのにやらせてくれないを学んでしまう。 グサッときます。

でもね、その逆に「そうだね!やろう!」と言ったことを、実現できるように環境を整えてくれたり、たっぷりとやらせてくれるということが分かると、子どもたちのアイデアや世界はどんどん広がります。やりたいを語る、教えてくれる力も自然と身についていくんですよね。

そもそも、「子どもの気持ちを汲み取ることや寄り添うことが保育の仕事だ」と思っている保育者もいるみたいだけど、ぼくはそうじゃないように思うんです。

対象が子どもだから、子どもの気持ちを汲み取る、寄り添うって言うけれど、一般企業だって顧客(大人)の気持ちを汲み取って商品を作ったりしているわけでしょう。同じだと思うんですよ、いい仕事は相手の気持ちに寄り添わないとできないんだよ、と思うわけです。

だからそれを「専門性なんです」と言うのは違うんじゃないかなぁと。親御さんだって毎日子どもの気持ちを汲みとっていますよね。

じゃあ保育者は何をするか、子どもの気持ちを汲みとることや寄り添うことを手がかりに、子どもの生きるパートナーとして「行動」するんですよね。
共感して、行動する。

その行動することが、専門性と直結しているんじゃないかなと思います。


身に付けたい2つの視点

ー 先ほど「環境デザイン」という言葉がありましたが、どういうことなのかもう少し具体的に教えてください。

やりたいを実現するためにまず必要なのは、そこに環境があること。

環境とは、「時間」「空間」「人間」「もの」などのことです。そして、その環境を子どもだけでつくることが難しいので、保育者がパートナーとして一緒につくっていくことが大事だと考えています。

たとえば、さっきお話した消防署の話だと「先生も一緒に行くよ」という行動が、まず1つの環境デザインといえると思うんです。

つまりは、環境構成ということなんですけど、きらりではあえて環境デザインという言葉を使うようにしています。意味は同じなんだけど、今までと同じ言葉を使っていると、誰しも無意識に従来のやり方に引きずられてしまいがちだな、と。

保育の中で今まで大切とされていたことももちろん大事にしますけど、新たに自分たちが大切だと思っていることも、どんどん取り入れていきたい。
たとえば、環境をタイムリーにつくる、再構成するということなんですが、そういうことも大切にできるように、まず使う言葉から変えました。

もうひとつ、環境デザインをしていく中で大事だなと思うのが、保育者の「人と人を繋ぐコーディネーター」としての役割です。

子どもたちは、いろんな人と繋がるなかで多様な生き方を学ぶし、そのヒトやコトに魅力を感じ、真似をし、ごっこ遊びが始まったり、もっと知りたいと探求したりし始めます。

その時に、子どもたちの興味は外にもたくさんあるわけですから、繋がりを園のなかだけで完結してしまうのはもったいない。いろんな人と繋がれるように、どんどん外へ出て行くことがとても大切だと思います。


ー 今、きらりの園舎におじゃましていますが、たしかに子どもたちが誰もいませんね。

基本的に午前中は、園外へ出かけていることが多いです。あとその時に、きらりではクラスで一つの場所に行くのではなく、大人の人数だけ行く場所の選択肢が増えると考えるのが特徴的かもしれません。

たとえば、乳児のクラスだと、5人の担任に1人か2人非常勤の先生が加わるので、MAX7人いると7箇所に行けるわけです。2人でも、2箇所は行ける。それだけで出会う人や場所の数はうんと増えます。

「あぶないから」と言って、みんなで一つの場所にしか行かない園もあるかと思います。でも僕たちは、大人の人数だけ行く選択肢が増えるからといって、安全管理を疎かにしているわけではなくて、0歳から地域に出ているから、子どもも大人も周りの環境や人をよく知っているんです。

それが安全に繋がるし、その積み重ねがあることで子どもの「やりたい」を支える環境をつくれているんだと思います。

いろんなところへ行くし、いろんな人が訪れる園にする。

園の中でできることはもちろん最大限やるけど、園の外でもできるんだということを知っているだけで、考えられないような面白い化学反応が起こりはじめますよ。


保育者の役割が変わる

ー 園やクラスを開くことで、子どもの世界も広がっていくんですね。

本当にその通りで、電車が好きな子どもたちが崇拝して“神”と呼ぶ、電車にすごく詳しい男性と園外活動で知り合ったんだけどね、その人は仕事が休みの日に園に遊びに来てくれたりするんですよ。そして、子どもたちが知りたいことをなんでも教えてくれる。

「今日は相模大野駅の車庫でこんな面白いことがあるから連れていってあげる」と、電車を見に行くのに誘ってくれたりもして。

廃車になって切り分けられたロマンスカーがトラックに乗せられているのを、一緒に見に行ってくれたこともあるんですけど、絶対子どもたちと保育者だけでは経験できなかったし、知らなかった世界だと思うんですよ。

この“神”以外にも、地域の縫い物好きな女性が定期的に針と糸の使い方を教えに来てくれたりもするんだけど、そうすると保育者の役割も変わって、子どもの「やりたい」をより応援しやすくなるんだよね。


ー 保育者の役割が変わって応援しやすくなる、ですか。

子どもがやりたいと思ったことを、保育者がなんでも出来たり、教えられるくらいの知識がないといけないと思うと、苦しくなっちゃうでしょう。きっと「そうだね」と言って応援し始めたとしても、途中でやめてしまうことになると思う。

でも、先生も下手なりに一緒に学んで、上手な人に教えてもらうとなると、それはきっと続いていくし、できないことがなくなっていくんだよね。

そうやって地域を巻き込んで人と繋がっていくと、どんどん保育が面白くなっていくと思います。




やりたいを共有し、広げよう

ー 坂本さんのお話を聞いていて、やりたいを実現した後の過ごしかたが重要なのではないかと感じました。子どもたちのやりたいが広がったり、深まったりする、「二歩目・三歩目を引き出す環境デザイン」が肝になるんだろうなぁと。

朝と帰りの集まりに「何を言ってもいい時間」というものがあるんですけど、そこで子どもたちはやりたいことを語るんですよね。「わたし今日こんなことやりたいと思っているんですけど、どうですか?」って。

そうすると「いいよ」という子がいてその子たちと一緒にそれに取り組んで、帰りの集まりでそこでやったことを報告すると、更に興味を持つ子が増えていく。


ー 「何を言ってもいい時間」は何歳児から保育の中にデザインされているんですか?

2歳クラスの時からみんなの集まりがあって、「みんなに伝えたいことある?」「今日楽しかったことある?」という話をする時間を設けています。まず、なんでも言っていいんだよという雰囲気を2歳からつくっていく。

そんなことをしながら、喋るのって楽しい、聞いてもらえるって嬉しいという経験を、3・4・5歳と積み上げていくと、話す内容が「こんなことが楽しかったです」という報告から、「こんなことをやりたいと思うんだけど、なにかいいアイデアないですか?一緒にやりたい人いませんか?」という語りに変わっていく。

そんな子どもたちの語りが、明日へ繋がっているんだと思います。


どんどん深まっていく坂本先生のお話は、クラスの分け方や一日の流れなど、子どもたちの日々の“生活”のことに移り変わり…
続きは、インタビュー後編でお届けします。

後編:「保育は“バランス”で成り立っている」 RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんの考える保育の在り方

「保育は“バランス”で成り立っている」 RISSHO KID'S きらり・坂本喜一郎さんの考える保育の在り方

前編で、子どもの「やりたい」を応援する方法についてお話してくださった、RISSHO KID'S きらり園長の坂本喜一郎さん。

そこからお話はどんどん深まり、クラスの分け方や一日の流れなど、子どもたちの日々の“生活”の話へと移り変わっていきます。




インタビュー・文:三輪ひかり
写真:雨宮みなみ
(保育活動の写真一部ご提供:RISSHO KID'S きらり)

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