職員の関係が変わることで、保育が変わる。「チームブック」という新しい取り組み。
保育園で働いているのって、誰だろう?
園長、副園長、主任の先生に、担任を持つ先生。フリーの先生やパートタイムの先生。
保育士以外にも、栄養士、調理師、看護師や事務の人、バスの運転手など、たくさんの大人が様々な立場や働き方から、子どもたちに関わり、育ちを支えています。
しかし、朝から晩まで子どもが生活する保育園という場で、全員で集まって園や子どものことについて話をしたり、それぞれの想いを大切にする仕組みをつくったりすることはなかなか難しく、「うまく職員間のコミュニケーションがとれない」、「働きづらい」という課題を感じる人も多いのではないでしょうか。
そんな中、園長がトップダウンで物事を決めることや、正職員だけで大事な話し合いをすることをやめて、「全員がそれぞれの役割から子どものことを考え、『園はチーム』という新しい風土を作り直したい」という想いの元、株式会社グローバルキッズの保育園が『チームブック』という新しい取り組みを始めました。
「チームブック」とは?
「豊かに生きる力を育む」を保育理念として掲げるグローバルキッズが始めた『チームブック』は、創業者である中正雄一さんの提案ではじまった、みんなでつくるコミュニケーションツール。
創業者の中正雄一さん
このみんなとは、全職員のこと。
正職員もパートタイマー職員も、給食の先生もみんなが集まって、園の「保育目標」や「保育方針」をつくり、自分たちの考えで園を運営していくことを目指しています。
「始めるまでは、先生たちがこの取り組みに賛同してくれないかもしれないとドキドキしたけど、やってみたら思った以上にいい反応があったんです。最初は自分の想いを書くのを躊躇していた先生たちも、対話を重ねるなかで、どんどん自分が大切にしているキーワードがでてきて。」
そう語るのは、グローバルキッズ新子安保育園・園長の森さん。
グローバルキッズ新子安保育園では、はじめての取り組みであったこともあり、「チームブック」を作り上げるために4ヶ月もの長い期間をかけて対話を重ね続けました。
そしてその時間が、クラスの垣根を超えて子どもを見守る土台をつくり、職員同士のコミュニケーションや日々の保育に変化があったといいます。
具体的にどのような変化があったのか、「チームブック」がどう保育に活かされているのか、5歳児担任の榊原 小瑠理(さかきばら こるり)さんと、2歳児担任の箱田 椋(はこだ りょう)さんのお二人に、お話をお伺いしました。
保育士4年目の榊原さん(左)と保育士2年目の箱田さん(右)
職員みんなで話し考えられる機会は、貴重。
ー 「チームブック」は、今年度から新しく始まった取り組みだと聞きました。やってみてどうでしたか?
「みんなで話し合って、園の保育目標や保育方針を決めるよ」と園長先生から話は聞いていたんですけど、でもどういうことをやるのかは、全然よく知らなくって。
創業者の中正さんが園まできて、どうして「チームブック」を始めたいのか想いを語ってくださって、その後職員一人ひとりが付箋に「どういうことを大切にしたいか」「どんな保育をしていきたいか」ということを全て書き出したんですけど、そんなことするの初めてだったので、とてもびっくりしました。
いろんな立場や役割を持っている職員全員で話すので、本当にいろんな意見がでるんですよ。
その意見をみんなが納得する言葉に落とし込んでいく作業はとても時間がかかりましたし、正直とても大変でした(笑)。
4ヶ月かかりましたもんね(笑)。
でもその当時、まだ保育士1年目だったこともあって、他の先生と充分にコミュニケーションが取れていなかったし、どういう保育をしたいのかということも日々試行錯誤をしながら探しているという感じだったので、他の先生の話や意見を聞ける時間は勉強になったし、これができてすごくラッキーだなと思いました。
たしかに、あれだけ時間をとって保育や子どもについて話をする時間は、通常の保育の中ではなかなか時間が作れるものではないので、とてもいいきっかけになりました。
私は、「一日一回どの子どもとも話す」とか「目を見て話す」とか、普段何気なく大切にしていることを改めて付箋に書いてみたんですけど、他の職員がどんなことを考えて保育しているのかを知れることで、「あ、実は同じことを大切に思っていたんだな」ということが分かったりして、それもよかったですね。
一人ずつ意見を書くことで、自分も追い込まれるというか、深いところで考えていたことがでてきたり、自分が大切にしたいことはこういうことなんだということが見えてきたように思います。
椋先生、「園バスが欲しい」って書いてたよね?
書きました(笑)。
外遊びにもっと気軽に行けるようになるといいなと思って書いたんですけど、そうしたら「そのためにじゃあ何ができるかな?」とみんなが一緒に考えてくれて。
具体的にそれを実現するためにどんなことができるのかまで考えられるのは嬉しかったです。
チームブックを通して生まれた、新子安保育園の保育目標
日々の保育にも活かされる、「チームブック」
ー 実際保育に活かされたことはありますか?
5歳のクラスでは今年、「想像してつくる」ということが子どもたちの間で流行っていて、部屋の中に廃材置き場や自由に使える道具を用意しているんですけど、その環境づくりに他のクラスの先生や給食の先生も入ってくれるようになりました。
「今日こんな廃材でたよ!」とか「こんな面白いものあったけどどう?」と、持ってきてくれるようになったんです。
2歳児のクラスでは「ごっこ遊び」が流行っていて、今までは子どもたちの想像力でブロックを注射器にしてお医者さんごっこしたりしていたんですけど、それをお医者さんコーナーをつくって、よりその世界を楽しめるようにしました。
本物の薬局でもらう薬袋を使ったり、病院の背景を作ったりしたんですけど、そうしたら子どもたちの遊びの盛り上がりが変わって、集中力も増して。
保育者も、そんな子どもたちから出てくるアイデアをどんどん広げたり深めたりするようになっていき、子どもも大人もわくわくしながら一緒に遊ぶ時間がすごく増えました。
「今日はパン屋さんごっこしてるんだって?」「今日は八百屋さんなんだ」と気にかけたり、クラスに遊びに来てくれる先生もいて、子どもたちもとても喜んでいます。
それから、休憩中に他のクラスの先生やフリーの先生とも子どもの話をすることも多くなったよね。
職員の関係性が変わることで、保育が変わる。
去年1歳児の担任をしていた時にクラスに入ってくださっていたパートタイマーの先生が、今年2歳児のクラスでも同じように補助に入ってくださっているんですけど、「チームブック」を一緒に考えて作ったことですごく関係性が変わりました。
「チームブック」で想いを共有してチームで保育をするという意識がお互いに出来ているので、「こういうものをクラスに作ってほしいです」とお願いをさせてもらう時も、お願いしたものをそのまま作るのではなく「こんなのどうかな?」とアイデアを出してくださったり、よりよくするためにやってみよう!と一緒にチャレンジすることが増えました。
前よりも距離もグッと近くなったように感じます。
パートタイマーの先生って、自由遊びの時間に保育に入ってくださることも多いので、子どもたちのことをよく知っているんですよね。
だから製作活動の内容を考える時も、「もっとこういうこともできると思うよ」とアドバイスくれたりして。それこそ私よりも保育の経験が長い先生も多いので、すごく心強い。
わかります。
「チームブック」に取り組んだことで、いろんな先生が一緒に子どもたちを見守ってくれているのをより感じるようになりました。
全国に100園以上の園を持つ、グローバルキッズ。
園ごとに特色のある「チームブック」を共有し、情報交換や学びの機会にしたり、保護者にも見てもらったりしてもらえるような仕組みにするなど、これから更にこの「チームブック」を活かしていくのだそうです。
「保育園で働いているのって誰だろう?」
グローバルキッズでの取り組みを知ってから最初の問いに立ち戻ると、保育園は実にたくさんの大人が想いを持って子どもたちと関わり、育ちを見守っている場であることに、改めて気がつきます。
そして、その一人ひとりの“大切にしたい想い”がチームである全員の職員に共有され、大切にできた時、子どもはもちろんのこと、大人もイキイキと輝いた毎日を過ごせるということを、グローバルキッズ新子安園の職員のみなさんの姿を見て、強く感じました。
「子どもたちに自分の気持ちや想いを大切にしてほしい。」
そう願う保育者は多いと思います。
子どもたちにとって保育園がそうあれる場であるために、もしかしたらまずは私たち大人が自分の気持ちを大切にできることが大事なことなのかもしれません。
(今回お話を伺った、グローバルキッズ新子安保育園はこちら)
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