保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

「あかいぼーるをさがしています!」〜けいさつに行く〜/青山 誠

新 幼児と保育
掲載日:2018/06/19

(第46回「わたしの保育記録」対象受賞作品)


前編「あかいぼーるをさがしています!」〜ボールがない!〜

けいさつに行く

できることからやってみることになり、まずは警察にたずねに行く。

どこで?いつ?どんなボール?矢つぎ早に出される質問に、たかちゃんが丁寧に答えていく。

公園で、きのうきのう、赤くてぶつぶつのあるボールです。

「では、もし届いたら連絡します。」以上。

 物々しい警察署をでて、ほっと息をつく。
「なんかドキドキしたよ。」と、ぼく。
「ぜんぜん、へいき。」と、たかちゃん。

ビラとポスターをつくる

2番組がビラとポスターを作っていると、1番組(5歳児)も集まってくる。

「ぼく、字かくの、じょうずだよ!」
「ポスターは、もっとおおきくなくちゃ!」
 1番組がリードして、活動が広がっていく。

「みきが、コトバをかんがえてあげる。
 あかいぼーるをさがしています。
 さっかーにつかいます。
 みつけたひとは
 りんごのきにとどけてください。

 これでどう?」

ボールの絵と、りんごまでの地図を描きこんでコピー。
みんなでせっせとボールを赤く塗る。

ビラを籠に入れて、ゆうきくんの全身にポスターをペタペタと貼って、準備完了。

「人のいっぱいいるところ行こう。それってどこ?」と聞くと、
「えきだよ、えき!」
「どんな人に声かけようか。」
「おやこづれがいいよ。」
「やさしそうなおばちゃんとかね。」

がやがやと歩いていく。駅はすぐそこ!

駅前で「あかいぼーるをさがしています!」

子どもが大人に話しかけている様子


駅前広場。
いろんな人が行き交っている。

親子連れを見つけると、ビラを片手に近づいていく子どもたち。その顔は真剣そのもの。
見知らぬ人に声をかける勇気を、えいっと、ふりしぼった。ふだんとは違う表情だ。

ビラを手にした人にはそのままあげるが、困り顔の人にはわたさない。
反応のいい人には大勢の子どもがわっと群がる。

「りんごの木ってどこ?」と聞かれると、
「まっすぐいくと、かいだんがあって......」
と身振り手振りを交えて教えている。

やがてチラシ配りのお兄さんの隣に、横一列に並んだ。
せーのっ、で叫ぶ。びっくりするくらいの大声で。

「あかいぼーるを、さがしていまーす!」

ポスター、はらせて!

次の日はポスター貼り。
公園には木にくくりつけておき、街をまわる。

「店長に頼んでおくよ!」と、コンビニのおばちゃん。
「それは困ったわねぇ。」と、本屋のお姉さん。
「ここでいいかしら?」と、『迷子のインコ探しています』の横に『あかいぼーるを!』のビラを貼ってくれたペットショップの人。ありがとう。

図書館の人はポスターをしまいこんじゃったので、ビラをこっそり入り口に置いてきた。

保育園では「これは、ちがうわよねぇ?」と園にある赤いボールを見せてくれた。
みんな(図書館以外)あたたかかった。

(つづく)

後編はこちら:「あかいぼーるをさがしています!」〜やってみたけれど……そして!〜/青山 誠

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