「子どもの力って、大人が思うよりずっと凄い」おもちゃデザイナー 和久洋三さんが見つけた子どもの本当の姿
童具(おもちゃ)を作ることに留まらず、実際に子どもたちと関わることや、子どもが創造的に遊び、表現できる場作りも積極的に行っている、童具デザイナーの和久洋三さん。
そんな和久さんから見える、「子どもの本当の姿」とは一体どんなものなのか…。
大切なことを考えるきっかけとなるお話を、たっぷり伺うことができました。
子どもは集中力がない、なんて思わないでほしい
−前回、遊びのなかの関係性に注目すると、子どもたちの見えかたが変わってくるというお話をしてくださいました。童具を作り続けて45年になる、和久洋三さん
そうです、そうです。
関係性に目を向けると、子どもたちの様々な力に気がつくんだよ。彼らの情報を関係づけ創造し、遊びを広げていく力、発見し表現する力には、いつも驚かされます。
それに、集中力もすごい。
ぼくは保育園や幼稚園に積み木あそびをしに行くんだけど、2時間でも3時間でも熱中して遊び続ける姿をよく目にしますよ。
−正直、子どもって集中力がないと思われがちだと感じています。数十分ごとにスケジュールが細かく立てられている園もあったりしますよね。
うん、子どもって飽きやすい、集中力がないって思われている。でも、全然そうじゃないんだよね。
これはね、前にある保育園で5歳児の子たちがお泊り保育で行った“宮島”を積み木作ったときの写真なんだけど。この時なんかは、1カ月もかけて真剣にこれを作っていたんだよ。
もし、「この時間にここまでやって」、「はい、もう終わり」、「次はこれやろうね」って大人に区切られた時間のなかでは、こういう子どもたちの姿には出会えない。子どもたちは思う存分、無我夢中に何かにのめり込むっていうことができないからね。
つまり、集中力がないと思われている子どもたちは、その子自身に力がないんじゃなくて、それを発揮できるような時間と場を、大人が用意してあげられていないってことなんです。
−そもそも私たち大人が、“子どもにそれだけの力がある”ということを信じられていないということも大きな要因かもしれないですね。この作品も、「こんなの作れるの?!」とびっくりしました。
そうかもしれないね。
うちの積み木を取り入れている園にもね、「なかなか遊びが発展しないんです」って言われることもあるんだけど、そういう園は連続して遊べる時間が1時間以内のことが多いんだよ。
人間、大人だってね、毎日1時間しかやらないのと、1時間が1時間半になり、2時間になり、3時間になるのでは出てくる発想とかさ、見えてくることって違うでしょ。それは子どもも一緒だから、そりゃあ発展しなくて当たり前なんだよ。
そうなると何が悲しいって、子どもたちは、ある段階のとこまでしかやれないから、「まぁいいや」になっていってしまうんだよね。何やっても「まぁいいや」になっちゃう。たくさんの可能性を持っている子どもたちのはずなのに、だよ。
だから1週間のうちせめてね、1日はとことん好きなことをやる日を作ってあげてほしいと心から思います。
徹底的に遊び込めるモノと環境を
−わたし、2歳になる息子がいるんですけど、実は先週末に和久さんの童具で初めて遊んだんです。おお、どうだった?
くむくむで遊ぶ、実際の様子
ー特に、穴に棒を挿してつなぎ合わせていく「くむくむ」に興味を持ったみたいで、本人が自分で終わりにするまで見守っていようと思ったら、ずいぶん時間が経っていて、最終的に2時間近く遊んでいました。
そのなかで面白かったのが、片側ばかりにパーツを組んでいくのでどうしても倒れてしまう積み木を目の前にした時に、何も教えていないのにドライバーのようなもので色んな箇所叩いてみたり、挟んでみたり、違う形のブロックを挿し込んでみたりしたんです!
答えがないからこそ、自分のなかで、どうしたらバランスが取れるのか、色々と試行錯誤しながら確かめていて。純粋に、凄いなぁと思いました。そうするなかで、遊びがまた違う方向へ展開していって。
ドライバーを使って、調整しようとする姿
そうだろう!子どもの力は大人が思ってるよりもずっと凄いんだよ。
でもそう思えないから、「子どもはすぐ飽きるからもったいない」って、安いおもちゃを買い与えちゃうんだよな。
そうじゃないんだよ、飽きないもの与えりゃいいんだよ。徹底的に遊びこめるようなものや環境を作れば、子どもは何時間だってやってる。
−本当にその通りだなと息子の姿を見て感じました。ただ本音を言うと、WAKU-BLOCKは安くはないので、買うかは悩んでしまうなぁと…(笑)。
保育園や幼稚園でも結構そうなんだよね。
でもぼくは、園庭の目をひくアスレチックには何百万もかけるのに、なんで童具になるとそうじゃなくなるのかなと思っていて。積み木は、一生遊べますよ。アスレチックよりも子どもたちが遊んでいる時間は断然長いかもしれない。
そこは、園長先生や経営者の判断なのかもしれないけど、大きさや華やかさなどの見た目には騙されないで、子どもたちがあれこれ工夫しながら、新しい遊びを生み出せるような童具を選んでほしいね。
>>大人が見守ると出てくる、子どもの姿