ヘルシンキ 生活の練習 /ほいくる編集部の本棚より
ほいくる編集部が保育者のみなさんにオススメしたい一冊。
今回は、『ヘルシンキ 生活の練習』をご紹介します。
本書は、社会学者の朴沙羅さんが、二人の子どもとともに暮らしたフィンランド・ヘルシンキでの生活を綴った記録です。
現地で出会い、関わりを持ったさまざまな人から掛けられた言葉を手がかりに、社会のありようや、人間の営み、そして子どもの育ちについて静かに問いかけていきます。
当たり前だと思っていることも、一歩外に出ると違って見える。
朴沙羅さんの体験をたどるように読み進めるうちに、自分の中の見方や価値観が少しずつ揺さぶられていく。そんな一冊です。
この書籍について

ヘルシンキ 生活の練習
著:朴沙羅
出版社:筑摩書房
こんな人におすすめ
- フィンランドの子育てや教育、福祉のあり方に興味がある人
- 保育や子育ての中で、大人の関わり方やまなざしを見つめ直したい人
ほいくる編集部のおすすめポイント
子どもの育ちと家族を支える人々と社会
本書では、フィンランド・ヘルシンキでの子育てや福祉の実践が紹介されています。家庭の中だけで子どもを育てるのではなく、社会全体で子どもや家族の生活を支えていく。
“初めて登園した日に、私が「この時期*だから、登園を自粛したほうがいいのかもしれませんが、どうでしょうか」と質問したら、「いま登園は自粛してって言われてるけど、気にせず来てくださいね、それがあなたにも子どもたちにも必要だと思います」と言ってくれた。泣くかと思った。”
(p75 より)
*著者・朴さんがヘルシンキに移住した頃はコロナ禍で、ほぼ全ての家庭が登園自粛をする時期だった
その仕組みや考え方を通して、一人ひとりの子どもや、一つひとつの家族を支える社会とは何かを考えさせられます。
子どもも大人も「練習している」
タイトルにもある「生活の練習」という言葉が象徴するように、この本には全ての人間は学びながら生きているという視点があります。
“「感受性が豊かだ」「好奇心が強い」「共感力がある」「根気が続く」といった、通常なら性格や才能などと結びつけられてしまいそうな事柄が「スキル」と呼ばれている理由は、このあたりにありそうだ。私は根気がないのを子供の頃から気にしている。
これが私の性格でないのなら、「根気がない」という「性質」は、単に「何かを続けるスキルに欠けている」ということになる。そして、そのスキルを身につける必要があると感じるなら、練習する機会を増やせばいいことになる。”
(p121より)
子どもが友だちに意地悪をしてしまった時、自分の気持ちを言葉にできなかった時、みんなの集まりに参加できなかった時・・・大人は時々それをその子の“悪いところ”、“正すべきところ”だと考えてしまうことがありますが、それを“いま練習していること”“これから練習が必要なこと”だと捉えられたらどうだろう。子どもへの関わり方や向けるまなざしが大きく変わるのではないかと、気づきをもらいました。
暮らしの中の小さな出来事から社会を見つめる
社会学者である著者・朴沙羅さんの視点は鋭く、それでいて描かれる日常はとても温かいもの。ヘルシンキでの子育てや、街の人々との関わり、ふと交わされる言葉など、暮らしの中のささやかな出来事が丁寧に描かれています。
そうしたエピソードを通して、子育てや保育、福祉といったテーマを、遠い制度や理論の話ではなく、自分たちの生活に引き寄せながら考えることができます。
読み進めるうちに、「子どもを育てる社会とはどんな社会だろう」「私たちはどんなふうに人と支え合って生きているのだろう」と、普段は立ち止まって考えることの少ない問いが、静かに浮かび上がってくる一冊です。
出版社からの内容紹介
「私たち女性は、すべてを手に入れたいのです」二人の小さな子どもと移住した社会学者による、おもしろくてためになる、フィンランドからの現地レポート。
書籍名:ヘルシンキ 生活の練習
著:朴沙羅
出版社:筑摩書房
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三輪ひかり