「つながる暮らしを。」ー 文京区立お茶の水女子大学こども園(東京都 文京区)
今回訪れたのは、東京都文京区にある 「文京区立 お茶の水女子大学こども園」。
お茶の水女子大学と文京区が、子育て支援の推進と幼児教育の質の向上をめざし、区立初の保育所型認定こども園として、2016年に大学内に開設しました。

お茶の水女子大学こども園のキーワードは「つながる」。どんな“つながり”が子どもたちの暮らしの中にあるのでしょうか。園見学とインタビューを通して、たっぷりとお届けします。
お茶の水女子大学こども園の暮らし
お茶の水女子大学のキャンパスの一角にある、文京区立お茶の水女子大学こども園。0〜5歳児の子どもたちが日々生活をしています。
「朝早くから、よく来てくださいました」
そう言って、明るく出迎えてくださったのは、施設長の山下智子さん。

園に入ってまず目についたのは、子どもたちが登降園に使う玄関に飾られた、たくさんの写真や自然物。ドキュメンテーションや地域や自然とのつながりを感じられるようなものが美しく飾ってあります。

「これは何?」「これは、このまえつくったんだけどね・・・」と、送り迎えの時間に親子で話をするきっかけにもなっているのだそう。

沖縄から届いた、日本一大きなどんぐり「オキナワウラジロガシ」の掲示も。
私たちが訪れたのが、ちょうど散歩に出かけるタイミングだったのでついていかせてもらうことに。

散歩先は、キャンパス内。
「ちひろせんせいのところへいこーう!」という子どもたちの声についていくと・・・そこで待っていたのは、なんと大学の先生。

田中千尋先生は、理科教育の研究をされている先生で、生き物や自然のことを何でも知っているスペシャリスト。
この日は、手書きの「どんぐりずかん」とリスのついた「袋」を用意して、子どもたちを待っていました。

田中千尋先生お手製の袋と図鑑
田中千尋先生が「ついておいで!」と、子どもたちをキャンパス内一だというシラカシのどんぐりスポットへと連れていきます。

大学内なので車の通りも少なく、安全に散歩ができる環境。
地面いっぱいに落ちているシラカシのどんぐり。
子どもたちは夢中でシラカシのどんぐりを拾いながら、「こんなにひろえたよ!」と田中千尋先生に嬉しそうに報告をしていました。


「何でも知っていて、一緒に自然のことを面白がってくれる田中千尋先生が、子どもたちは大好きなんです」と保育者の方が教えてくれました。
その頃、別の学年の子どもたちは、果樹園のある広場へ。
広場では、集団遊びやおままごと、果樹園ではちょうど収穫時期を迎えた立派な柿をとろうと何度も挑戦する姿がありました。



果樹園。夏はプラムを見つけて採ってジャムにして食べたり、秋は柿やレモンを採って、干し柿や誕生会のケーキにしたり、シロップにして食べたりもする。
お茶の水女子大学こども園の暮らし
“つながる”生活
「人・遊び・地球・家庭・地域」の5つのつながりを大切にして、子どもたちが豊かに育つ教育・保育を構築している。

人とつながる
一人一人がゆっくり「自分」になっていく過程を大切にします。園全体がみんなの家。異年齢の関わりや大学の学生や教員等との出会いを、豊かな体験につなげます。
遊びがつながる
可塑性に富んだ素材や多様な道具を使い創造的に遊ぶ生活の中で、昨日・今日・明日へと遊びをつなげます。色・光・音等をからだで感じ、表現する喜びを味わいます。
地球とつながる
食を楽しみ心地よく眠りのびのびと遊ぶ生活。自然の不思議と出会い、感じる体験を重ねます。様々な国の方との関わりを通して、人と出会ううれしさを味わいます。
家庭とつながる
子育て広場を開催し、小さな子をもつお母さんやお父さんを支え、一緒に育つ機会を設定します。地域の方々との出会いや協働の機会を大切にします。
地域とつながる
親も子もほっとできる園を目指します。大切なのは子どもが真ん中にいること。情報の発信・受信、多様な保育参加の機会を通して、子どもへ向けるまなざしを共有します。
(文京区立お茶の水女子大学こども園HPより)
環境をつくる
どうしたら子どもたちが手に取ってみたくなるか、一つひとつの環境を丁寧につくる。

蓋がついていたり、中身が見えないような箱に入れるのではなく、見えるように飾る。

美しさは、子どもたちのやってみたいを生み出す。

子どものやってみたい気持ちをくすぐる、手作りの遊具やおもちゃがたくさん。

0歳児クラス。ごろんと寝転がる子も立つ子も楽しめるよう、高さの違う鏡が壁につけられている。
じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。
三輪ひかり