経験から広がる遊び〜HoiClue Lab.あそび探究室セッションレポート#05〜

HoiClueで運営している「HoiClue Lab.あそび探究室」。 Labメンバーさんとのセッションの時間が、毎回発見や気付きにつながることばかりなので・・・3期目となる今年度より、その中身を月1回、みなさんにもほんの一部だけお届けしていきたいと思います。
今回紹介するのは、2025年9月のセッションより「経験から広がる遊び」をテーマにした話のなかで出てきたエピソードたちです。



あそび探究室のLabメンバー
保育園、こども園、幼稚園、発達支援施設、児童館、園の外部講師など、さまざまな場で子どもたちと関わっているLabメンバー。経験年数やバックグラウンド、お住まいの地域も全国各地それぞれです。
今年度は11名で活動しています。
恐竜博物館に行って、もっと恐竜になって帰ってきた
恐竜が大好きで、朝から晩まで恐竜に憑りつかれたようになりきっている子。福井県立恐竜博物館に行ってきたら・・・もっと恐竜になって帰ってきた!
博物館での発掘体験を通して“発掘”にハマり、お散歩では道端の石という石を拾いたがり、先生たちが使うお仕事用の金槌をちょっと借りてきて割ろうとしたり。子どもの力ではなかなか割れないけれど、冬までずっとやり続けていた。
大人には石で遊んでいるように見えるけれど、多分その子は、発掘を続けていたんだろうなあ。
カブトムシ研究所の誕生(年中児)
夏休みのある日、家からカブトムシを持ってきた子が。カブトムシが入ったケースをそのまま靴箱の上に置いておいたら、3人くらいの子どもたちがそれを三輪車の後ろに乗せて散歩し始めた。
そこから、朝の日課として「カブちゃんだいじょうぶ?」と何人かの子が三輪車の後ろにケースを乗せて園庭を回りうろつくようになり・・・事あるごとに「カブちゃんだいじょうぶ?」と様子を見る、そんな日々が続いていた。
園長先生に観察カップを買ってもらってからは、大事にしているカブトムシをカップの中に入れて見るようになり、そこからクイズ大会がスタート。「もんだいです。カブトムシはなにいろでしょうか?」なんて子どもたちがクイズを出し合い、ポイント制に発展して、まるで高校生クイズみたいな世界が広がっていった。
さらには、カブトムシ研究所を作ろうということになり、看板や貼り紙を作ったり、新聞まで作った。
おじいちゃんと一緒にカブトムシを捕りに行ったという一人の子の経験が、カブトムシを捕りに行っていない子にまで広がって楽しんでいるようすは、子どもたちの間に遊びのネットワークができているようだった。
美容師さんのお父さんお母さんの影響で
お父さんとお母さんが美容師さんの子。髪の毛をいじるのが好きだった。ある日突然、その子のクラスでレゴブロックを髪飾り代わりに使う遊びが始まった時期があった。
女の子みんながレゴブロックをシャラシャラ髪につけながら「かわいいでしょ?」と。よくよく話を聞いてみると、おうちでお母さんがパーマやカールを巻いているのを見て真似したようす。クラス中で流行って、多少痛いんだろうけれど、気にせずつけてみんなでジャラジャラ。パーマの機械か何かの真似をしたり、ブラシを使ったり、みんなでお店屋さんごっこみたいなことをしたり。
毎年それが流行るかといえばそういうわけではなく、やっぱりその年だけだったので、その年はそういう年だったんだな、という貴重な体験だった。
汚れても大丈夫、という体験を積み重ねて
3歳の子どもたち。絵の具を用意しても、なんだかぐちゃぐちゃになっているところにはもう「やだ」という感じで近寄らない。ちょっとでも汚れることを嫌がっていた。
よく考えてみると、その子たちが乳児のときはちょうどコロナ禍。0・1・2歳での体験が少なく、触れるものに制限があったり、小まめに手を拭いたりするような環境で育ってきた。
そんな子どもたちに安易に「大丈夫だよ」と言っても通用しないので、「汚れないでも遊べるよ」と、直接手で触るのではなくまずは道具を通して関わりを持てるようにしてみた。夢中になっているうちに手が汚れてくる経験を経て、「汚れても手を洗えば、ほら見て、こんなきれいになったよ」とさらに体験を積み重ねるなど、いろいろ考えながら関わった。
そうして4歳になってきた頃には、「汚れちゃってもいいんだもんね、洗えば平気だよね」なんて言いながら、絵の具まみれで遊び始めるように。内心、先生たちとガッツポーズ!
信頼できる誰かといっしょに一歩進んでみる勇気、大丈夫という体験。一つの体験がさらに体験を広げていってくれるんだなと感じた。
保育園ごっこで見えた再現力
2歳児の子たちが「保育園ごっこ」をしていた。再現しているのは送迎の時間。
保育者を真似て「きょうは、ちょっとごはん、あんまりたべなくて」なんて言われるので、こちらも「そうですか」とあわせた返事をしながら楽しんでいる。
ある日も、「きょうは、はやいおむかえなんですね。」「ちょっと、ようじがありまして。」というやりとりを2歳児がしていて、とってもおもしろかった。ご飯が嫌いで普段あまり食べない子が自分を再現して「きょうは、やさい、のこしちゃいました。」なんて言っていて、観察力と再現力がすごいなあと思った。
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経験から広がる遊びをテーマに、保育者のみなさんがそれぞれの現場で出会った子どもたちのエピソードを共有したセッションでした。
一つひとつのエピソードから見えてきたのは、子どもたちにとって「経験」は単に過去の出来事ではなく、今この瞬間の遊びや生活の中で生き続けているということ。そして、信頼できる大人が一緒に楽しんでいる姿を見ることで、子どもたちは新しい世界に踏み出していく勇気やおもしろさを感じているのかもしれないなあ、ということでした。
みなさんが、このテーマから思い浮かぶ子どもの姿やできごとは・・・?
ぜひ読者のみなさんからも、「経験から広がる遊び」にまつわるエピソードをお寄せいただけたらうれしいです。
それでは、次回のあそび探究室レポートをおたのしみに・・・!