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へんないきものをつくろう〜共同で楽しむデザイン画〜

田中 令
掲載日:2024/02/08
へんないきものをつくろう〜共同で楽しむデザイン画〜
新年になり、年度末ももうすぐ!
1年を通して、子どもたちの発達もだいぶ進んだのではないでしょうか?

今回ご紹介するのは、「へんないきもの」をグループで描く活動。
ゲーム感覚で楽しめる、気軽な遊びです。
(気軽だけれど、実は学びのきっかけがたくさん詰まっているのです...!詳しくはページ最下部にて。)

材料

・画用紙(四つ切り程度/グループ数×2枚ほど)
・コピー用紙(A4サイズ程度/グループ数×3枚ほど)

使うもの

・図鑑など、いろんないきものを見られる資料
・鉛筆
・マーカー、クレヨン、色鉛筆

準備

1.  4人を基準にグループを作り、グループごとに座りましょう。

2.  各グループに、画用紙一枚と鉛筆一本を配ります。
子どもの人数分ではなく、グループにつき1つずつというのがポイントです。

3.  下記【かくものリスト】と【いきものじょうほう】を黒板や紙に大きく書き出し、活動部屋に掲示しておきます。

かくものリスト
①かおのかたち
②からだのかたち
③てあし
④け
⑤め
⑥はな
⑦くち
⑧みみ
⑨つの、しっぽ、つめ、はね、そのほか

いきものじょうほう
①いきもののなまえ
②すんでるばしょ(せいそくち)
③おおきさ
④たべもの
⑤せいかく

遊び方

導入

1.  今回はグループで、「へんないきもの」をつくることを子どもたちに伝えます。
そもそも、この世界にはどんないきものがいるかな。みんなで出し合ってみましょう。

2.  そのいきものの色や形を観察してみましょう。
キリンの首はどんな形?
タコはどんなさわりごこち?
ムカデの足は何本?
ねこの顔の形を丸三角四角に置き換えると?
など、図鑑や資料を見て、その特徴を子どもたちと味わいます。

3.  今日は、この世界にいない「へんないきもの」を描くことを伝えます。

4.  今回のルールを子どもたちが理解するために、大人2、3人で下記の手順のデモストレーションを見せましょう。子どもたちは、実際に描いているところを見るだけで盛り上がりますよ。

順番決め

グループ内でじゃんけんや、話し合い、席順などで描く順番を決めます。
(4人グループなら1〜4番、3人グループなら1〜3番など)
自分の順番をしっかり覚えておくため、順番決定後に確認の点呼をとるといいですよ。

へんないきものを描こう!

準備ができたら、制作開始!
(写真はわかりやすさのため、ペンを使っています)

1.  1番の人が鉛筆をもち、【かくものリスト】の「①かおのかたち」を描きます。
ポイントは紙に大きく描くこと!
◯でも△でも、好きな形でかまいません。
また、紙の向きも縦横自由です。

2.  1番の人が描き終えたら、2番の人に鉛筆を渡します。
2番の人は、1番の人が描いた紙に描き足すかたちで「②からだのかたち」を描きます。
こちらも、◯、△、▢など好きな形を描きましょう。

3.  2番の人が描き終えたら、3番の人に鉛筆を渡します。
3番の人も同様に、同じ紙に描き足すかたちで「③てあし」を描きます。
タコやムカデのように手足をたくさん描いてもいいし、一本足でもおもしろい!

4.  3番の人が描き終えたら、4番の人に鉛筆を渡します。
4番の人も同様に、描き足すかたちで「④け」を描きます。
いぬやねこのように全身に毛を描いてもいいし、人間のように頭にだけ生やしても。
かたそうな毛、やわらかそうな毛、まっすぐな毛、くるくるな毛...。
たった一本だけの毛なんてのも、「へん」でいいですね!

5.  1〜4番(最後の順番の人)まで回ったら、1番の人に再び戻り、これまでの手順でリストの順番「⑤め」以降を描き足していってください。グループによっては、パスをするものがあってもよいです。既存のいきものにとらわれず、思うがままに描いてみましょう!

6.  最後の「⑨つの、しっぽ、つめ、はね、そのほか」は、全て描かなくてもかまいません。
紙の上に現れたいきものに、似合いそうなものを描きましょう。
グループ全員に鉛筆を回してもいいし、話し合いで進めてもいいですね。

へんないきものについて考えよう!

へんないきものが完成したら、一度手を止めます。
今度は【いきものじょうほう】をグループで決める時間。
クールダウンも含めて、やり方を大人が説明します。

ポイント①
ここで大切なのは、出来上がったいきものをよく観察し、想像を深めること。
ex)
・羽が生えているから空を飛べる
・歯が尖っていたら、硬いものを食べることができる
・顔の表情や姿勢から、性格を考える
など、いきものの形や印象をヒントに、話し合いで情報を決めていきましょう。

ポイント②
決めた情報を伝わりやすくするため、具体的に考えてみるのもポイントです。
例えば、おおきさは「ちゅうくらい」「ふつう」などではなく、「◯◯とおなじくらい」「△△メートル」など。
文字が書ける年齢の場合は、決めた情報をコピー用紙に記録します。


グループ内で順番を変えて、もう一回やってみよう!

絵を描く人の順番を変えると、また違ういきものに出会えて楽しめます。

いろいろあそびかたプラス!

その1:へんないきものに、色をぬろう。

できあがったいきものに、色鉛筆やクレヨンで色をぬってみよう!
この時もみんなで決めた、いきもの情報を参考にするのがおすすめ。
森に隠れているなら何色?
おこりんぼってどんな色?
と、大人は想像する問いかけを重ねましょう。
クレヨンやマーカーなどで塗る場合は、鉛筆で描いた線が見えにくくなるので、下絵の線をなぞることから始めましょう。

その2:できあがった作品の、発表会をしよう!

せっかくできあがった、世界にひとつのいきもの。
みんなで発表会をするのもおすすめです。
絵を見せながら、いきもの情報を伝え合ってみてくださいね。

その3:描き出せない、意見が割れるなどなどのハプニング

想像することや描くことに、抵抗がある子もいるかもしれません。
そんな子には、丸三角四角など、ある程度選択肢を絞った上で、好きな形を選ばせたり、パスの選択肢をあげてもいいかもしれません。
逆に、なかなか描き出せない子に対して、どんどん自分の意見を言う子もいるでしょう。
「何を描くか決めるのは、鉛筆を持っている人」というルールを守るのが、平等に進めるポイントです。
また、意見の食い違いなどにより、ケンカが起こることもままある活動です。
これも、グループワークならではの学びの機会。
大人がサポートしながら、どうしたら意見をまとめられるか、なぜいやな気持ちになったのか、など気持ちを言葉にして伝え、話し合いをしてみましょう。

幼稚園の年長クラスで生まれた作品


***

ゲーム感覚で遊べる今回の活動には、実は学びの要素がたくさん詰まっています。
まずは、グループでコミュニケーションをとりながら進んでいくこと。自分1人で描くわけではないので、絵は思い通りに進みません。この「ままならなさ」が、子どもたちの社会性の獲得にとって、とても大切な経験になると感じています。発達が進んできている年長さんは、自分の気持ちを相手に伝える、話し合いのいい機会も生まれます。

続いて、観察力と発想力。<いきものじょうほう>を決める活動は、生まれたいきものの形をよく観察し、意味を与えます。このプロセスによって、発想力が触発されます。また、名前がつくことによって、描いた作品に愛着も生まれるようです。 そして、自然界の洗練されたデザインへの気付き。キリンは高いところにあるものを食べるから首が長い、ジャンプが得意なうさぎとカエルの足には共通する形がある...などなど、当たり前に見るいきものの姿にも、意味や機能があることに気付きます。

最後に、「適当に描く」おもしろさ。みんなの適当が偶然に重なり合うことで、絵が完成する今回の課題。最初は適当だったはずが、「前の子がこう描くならこう!」「ここに、これがあったほうがいいな...」などなど、絵を介して他のお友達のことを思い合う場面もあるかもしれません。
グループ活動での葛藤から涙する子に出会うことも多い活動ですが、友達と一緒に制作する醍醐味を味わい、子どもたちの成長を多角的に感じてもらえたら嬉しいです。