保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

「材料をとりにいく背中」〜造形あそびとこどもたち Vol.2〜

矢生秀仁
掲載日:2023/05/13
「材料をとりにいく背中」〜造形あそびとこどもたち Vol.2〜

2023年度からスタートした、連載コラム「造形あそびとこどもたち」。
造形の時間を通して出会った子どもたちの姿から、その奥にある子どもの世界を覗いていきます。

今回出会ったのは…

材料をとりにいく背中

こどもたちが造形活動をしている時に注目している姿の一つが、「材料を取りにいく背中」です。

僕の造形活動では、毎回、部屋の一箇所に材料コーナーを設置するようにしています。
こどもたちは、各自そこから使う材料を持っていき、作っているうちに材料が足りなくなったらその都度取りに行くという形です。

この材料を取りに行く時のこどもたちの姿がなんとも素敵なんです。

ぴょんぴょん跳ねてスキップをしながら取りに行く子。
ご機嫌に鼻歌を歌いながら取りに行く子。
ほんの2、3mの距離をまるで陸上選手のようなダッシュで取りに行く子。
作り途中の作品を大事そうに小脇に抱えて取りに行く子。
作品の世界に浸って、役になりきりながら取りに行く子。

どの背中も、全身から溢れるほどにワクワクした気持ちがあらわれています。




造形活動というのは、作品として形が残る分、ついつい作品の「完成や出来栄え」でみられやすいものです。ですが、造形活動におけるこどもの育ちとは、作品だけではありません。

「早く作りたい!もっと作りたい!」というときめき。
「わたしならきっとできる!」という自信。

それらは、たとえその日、作品として完成に至らなくても、目に見える形で後に残らなくても、たしかにあるのです。

それは、その場にいる保育者しか見ることができません。保護者には見ることができません。
だからこそ、保育者の僕たちが「形に残らないこどもたちの想いや喜び」をしっかりキャッチしていたいなと思います。
そして、その素敵な姿を職員間で共有したり、保護者に伝えられたらいいなと思います。

その視点の一つが、この「材料を取りに行く時の姿」なのだと思っています。

明日も子どもたちと穏やかで素敵な1日になりますように。