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【アンケート結果】「インクルーシブ保育」について、どう思う?〜『新 幼児と保育』✕HoiClueアンケート〜

竹原 雅子
掲載日:2021/10/06
【アンケート結果】「インクルーシブ保育」について、どう思う?〜『新 幼児と保育』✕HoiClueアンケート〜

障がいなど特別な支援や配慮が必要な子どもも、そうでない子どもも、同じ場でともに育ちあう「インクルーシブ保育」。

聞いたことはあるけれど、具体的にはどんな保育をするの?
知ってはいるけれど、どうやって取り組んだら良いのかわからない…
そんな方も、多いかもしれません。

そこで実施した今回のアンケート、400名という実にたくさんの方々に回答いただきました。
みなさんの声やご意見をご紹介していきます。

実施期間:2021年7月13日〜2021年7月19日
回答数:400件



1)あなたの現場で、特別な支援や配慮を必要としている子はいる?

「発達への支援や配慮が必要な子」は全体の約93%、「障がいを持つ子」は約58%の方が回答。
「日本語を母語としない子、外国にルーツを持つ子への支援や配慮」は3割以上の回答がありました。

ほとんどの現場で、なにかしらの特別な支援や配慮を必要としている子がいる、という現状が見えてきました。

2)1)で選択した子どもの支援や配慮で、難しさを感じることがあるとしたら、どんな時?

【発達への支援や配慮が必要な子】【障がいを持つ子】

・友達に手を出してしまうタイプの子への配慮が難しいです。悪気がなく衝動的に手を出してしまうのでクールダウンが基本ですが、その後の友達との関係を上手くとりなしていくのが難しいです。
(保育園/フリー)

・子ども同士でお互いの違いに気づき、それによるトラブル。サポートが必要な子どもに対して先生の人数が足りない。

(幼稚園/4歳児担任)

・ほかの子ども達には「してはいけない」ことでも、特性のある子どもにはそういう伝え方をしないときに矛盾を感じる子どももいる。大抵の子ども達は話をすれば納得しているが、特別感をずるいと感じることもあるだろう。その辺りが難しく感じるときもある。
(こども園/4歳児担任)

・人員的な問題もあり、その子の発達面でのペースも考えてあげたいけれど、全体を保育していく上で待ってあげられないことが多くなっている。

(保育園/2歳児担任)

・どこまでその子に寄り添うか。寄り添うことで、ほかの子どもたちに「あの子ばかり」と思わせたり、遠慮させたりしていないかが気になります。(保育園/0歳児担任)

・保育園での集団保育の中で見る子どもと、家庭で過ごし自分の子どもに遅れや障がいがあると思っていない保護者と、共通理解をするところから難しい。
(保育園/1歳児担任)

・周りの子が気にかけてくれる反面、どこまでの支援をよしとするのか迷うことがある。
その子自身頑張ればできることを、周りの子がお世話してくれてることは嬉しいことだが…
保育園でいる間は、周りの子の理解も深まり、コミュニケーションにおいては学ぶ事が多いように感じるが、作業療法や医学療法などにもっと詳しければ、その子自身の能力ももっと高まるのではないかと不安になることもある。
(保育園/5歳児担任)

・その子どもさんの困り感を理解できているか?その支援は本当に必要か、の見極めが難しいです。
(幼稚園/5歳児担任)

・部屋から飛び出したり、力が強くて抑えられない時などあり、一対一でも対応が難しいこと。また常に目が離せず、クラスで活動できないことが多い。本人の機嫌が悪かったりした場合、対応する先生には、体力的、精神的に大きな負担になること。
(保育園/2歳児担任)

・ほかの子が、特別視したり「仲間」ととらえていないと感じることがある。

(保育園/4歳児担任)

【日本語を母語としない子、外国にルーツを持つ子】

・文化の違いでお互いに理解しづらい点がある事。
(こども園/5歳児担任)

・少しのニュアンスの違いや同音異義語の伝え方が難しいです。

(保育園/2歳児担任)

・日本語が話せず本当の自分の思いを伝えられず、もどかしくする子がいる。
(保育園/3歳児担任)

・(保護者は)平仮名はわかるので、個別にメモを渡したり、なるべく対面で連絡事項は伝えるようにしているが、なかなか伝わらない。
(保育園/0歳児担任)

・外国籍の子ども、保護者とのやり取りでこちらの伝えたいことがきちんと伝わっているか。その国によって考え方が違うので、お互い戸惑いがある。
(保育園/フリー)


【発達への支援や配慮が必要な子】【障がいを持つ子】への支援や配慮の難しさとしてあがった多くの回答からは、

・一斉保育や活動の中で、なかなか支援を必要とする子どもに合わせることができない

・加配保育者など、保育者が足りない


・わが子の発達や障がいに対する保護者の理解、認識の差


・発達や障がいに対する専門知識不足や専門機関の支援がないため、対応に迷い判断がつかない


という、大きく4つの傾向がみられました。

支援や配慮が必要な子どもの数に対し、現場や保育者のみなさんが抱える課題の多さ、解決の難しさが伝わってくる内容でした。

3)インクルーシブ保育」について、知っている?

回答者のうち「園で実践している」と答えた方は3割近くにのぼりました。

また「知っている」は26%、「聞いたことはあるが、あまり詳しくは知らない」は約24%。
全体の約8割超のみなさんが「インクルーシブ保育」について知っている、また聞いたことがあるという結果でした。

「インクルーシブ保育」の認知は、現場でも拡がっているようです。

4)3)で「園で実践している」を選択した人は、園でどんな保育をしている?

・園として、インクルーシブ保育を推進しています。
みんなが過ごしやすい園を目標に、視覚支援を充実させたり、集団に入らない子も、それで好きなことが出来ているなら良しとする考えをしてます。
(こども園/1歳児担任)

・基本的には同じ事を同じように活動できるようにする。そのための個々に応じた支援や援助を行う。自由遊び、設定保育を問わず。
(保育園/フリー)

・加配担当をつけ、一緒にできるところは一緒に、できないところは加配担当が別で教える。主担任と相談しながら、その子にあった保育の仕方をしている。
(保育園/3歳児加配担当)

・課題がある子どものことを中心に考えて保育を組み立てている。配慮が必要な子どもの気持ちを、全体に代弁しながら、理解につながるよう工夫している。
(こども園/主任)

・同じ環境、保育室の中で、サポートの先生が、手助けや橋渡しをしながら過ごしている。
(こども園/フリー)

・支援が必要な子どもを加配付きにするのではなく、クラスの子どもと一緒に集団へ誘いかけたり、その子が過ごしやすい環境作りをしています。
社会には、多様な人がいるということを知り、関わり方を経験することで、障がいを持つ人がいて当たり前だという感覚を育めるようにしています。
(こども園/フリー)

・コーナー保育を充実させ、得意だったり、好きな遊びを選べるようにしている。
多動の特性がある子には身体を動かすグループ活動で対応したりしている。
朝の会や一斉活動で、フラフラしていたとしても注意したりせず、個別に対応している。なるべく待つ事が少なくて済むように活動や環境を考えて構成する。
3歳から5歳児がワンフロアで生活し、好きな場所で遊んでいるため、幼い年長児と年少児がいい感じで遊んでいたりとゆるい縦割り活動の中で、それぞれに合った生活ができていると感じている。
(保育園/園長)

・その子の得意な活動、遊びを通して小グループ的に保育をすすめる。記憶が得意な子どもとは、カードを使ったゲーム。小さな子どもの世話が好きな子どもは異年齢保育を通して運動遊びや表現遊びをし、のびやかに成功体験を増やす。リトミック、さくらさくらんぼ体操を取り入れている。
(こども園/0歳児担任)

・インクルーシブという名称は初めて聞きました!基本的な生活や保育はほかの子と同じ。自然な形で側に加配の保育士が付いてフォローしたりしている。ほかの子も最初は不思議に思って聞いてくる子もいるけど今では普通に友だちの1人、クラスの仲間として接している。
(保育園/5歳児担任)

・分け隔てなく知育や散歩も含めて保育をしているが、寝る時など寝付けない時は離れた場所にコットを置いて、独りで静かに好きなだけ絵本を読んだり気持ちを和ませたり配慮している。
(保育園/0歳児担任)

・その子どもたちも同じ部屋の中で刺激を受けながら一緒に遊んでいる。言葉の伝わりにくさもあるが、その時は、イラストを使いながら、目で見てわかるように配慮している。
(こども園/4歳児担任)

・同じように保育する事が困難なため、興味を持ってくれた活動は一緒にし、それ以外は危険のないように行動を見守る。
(保育園/2歳児担任)

・モンテッソーリ園なので、基本自分が選んだもの、好きなものに取り組むことができる。
(幼稚園/3歳児担任)

・設定遊びでは研修を受けたスタッフが見守りをし、今後の取り組みを療育施設などと意見交換している。
(企業主導型保育園/看護師、保育補助)

・その子に応じた対応や支援の仕方を関係機関と連携をとり、保育を行っている。
(こども園/4歳児担任)

・発達支援センターの職員が定期的に保育園に来て、クラス内で気になる子の観察を行い、場合によっては療育へ繋げられるようにしたり、クラス内でのアドバイスをもらいます。
(保育園/異年齢担任)

・なるべくほかの子と一緒に過ごせる様にクラスに入り、制作、行事を行なっています。
しかし経管栄養等が必要な時は別の場所に行き、落ち着いた雰囲気の中でできるようにしています。
(保育園/1歳児担任)

・障がいあるないにかかわらず、一人ひとりの良いところをお互いに尊重し合える仲間づくりをしています。保育者の声かけはもちろん、子どもたちから「〇〇くんってお話はまだできないけど、歌も上手だし、鉄棒もすごいんだよ!」など自然と言葉が出てきます。
インクルーシブだからこそ成長出来ることが沢山ある!
(幼稚園/5歳児担任)

・障がいを持っていても、外国の子どもでもクラスの一員として過ごしている。職員会議で子どもの姿を共通理解し、援助の方向性を毎月確認し合う。
(こども園/0歳児担任)

・同法人に発達支援児を預かる施設があり、そこの姉妹クラスと週に一度定期的に関わりを持っています。統合保育の日は室内環境は多少配慮するものの、イベントのように何かをするのではなく、日常の雰囲気の中で両園の職員もお互いの園の子どもを育てています。子どもも生活の中で友達の様子に気づき思いやりある行動を自らとっています。
(保育園/異年齢担任)

・その子の特性に応じて、視覚支援などを行う。
日本語の提示だけでなく、外国にルーツのある子たちの母国語で歌を歌ったり、挨拶などを知らせていく。
(こども園/1歳児担任)

・日本語が外国語に変換できるアプリを使って保護者とコミュニケーションを取り、お子さんの様子を伝えたり、日本のルールについて理解を求める。研修などで要支援児への勉強をする。
(保育園/5歳児担任)

・外国にルーツを持つ子も含め、常にホワイトボードを持ち歩いて、絵を描いて、シンプルな日本語で伝えてます。
(こども園/4歳児担任と主幹教諭)

5)「インクルーシブ保育」をご自身の園で実践することになったとき、いちばん不安だな、難しそうだなと感じるのは?

「発達への支援や配慮が必要な子への支援や配慮」は約56%と半数以上の回答になりました。
一斉保育の現場で多くの子どもたちを見ながら支援や配慮をしなくてはならない場合は、気が張ることや一人の先生に対する負担も多くなりそうです。

「障がいを持つ子への支援や配慮」を選んだ方は全体の2割、「日本語を母語としない子、外国にルーツを持つ子への支援や配慮」は約1割となりました。

6)5)で回答した課題に対して、特に必要だと思うものは?

「加配保育士(看護師を含む)」を選択した方が30%以上、「専門知識」が27%。
「職員間のコミュニケーション」、「専門機関のバックアップ」がそれに続きました。

2)の回答で現在感じている“難しさ”では、保育者不足、対象児に対する専門的な知識の不足や対応への判断の不安をあげていた方がとても多く、「必要だと思うもの」は、それらの課題を反映した結果となりました。

7)既に「インクルーシブ保育」を取り入れている園に、聞いてみたいことは?

・発達がゆっくりな子たちには、ほかの子たちと同じような流れで行動することが難しいと思うんですが、インクルーシブ保育ではそのあたりどのように配慮するんでしょうか。
(こども園/1歳児担任)

・子どもの人数に応じて保育士の数が決められる配置の中で、個別配慮を必要とするお子さんにどのように関わっているのか。担任が1人の場合、集団を動かしながらそのお子さん達を保育することに難しさを感じます。
(保育園/3歳児加配保育士)

・集団から離れてしまったり、ほかの子に暴言や手を出してしまうことでほかの保護者への理解を求めるのに、どのような方法を得たか知りたい。
(保育園/0歳児担任)

・診断はついていないが、クラスで発達などが気になる子に対しての関わり方と、その保護者への伝え方で工夫していることを聞いてみたいです。
(保育園/5歳児担任)

・一人一人にあった丁寧な療育をどうやって実践しているか。
(保育園/施設長/園長/副園長)

・加配の人員確保の仕方や人数配置など、どうやっているのか聞きたいです。

(保育園/3歳児担任)

・加配が必要と思われる子がいるが人員が足りない時、保育に大切なことをどういう順位付けで実践しているのか。

(幼稚園/2歳児担任)

・子どもたちが障がい児の障がいについてどのように理解していくかの過程。
2歳児を担当していますが、配慮が必要と思われる子に一対一で関わっていると、ほかの子が集まって来てしまったり同じことをして欲しいと言い出してしまうので。(そっとしておいて欲しい時)
(保育園/2歳児担任)

・職員理解や特別支援についての研修やマニュアル化等を実施されているのであれば、具体例を知りたい。(園で検討しているため)
(こども園/施設長/園長/副園長)

・専門的な勉強方法と、どんな資格習得をしてますか?

(保育園/異年齢担任)

・異年齢児保育、コーナー保育をしていますが、環境で特に気をつけていることなどあれば教えてほしいです!
(保育園/異年齢担任)


***

回答した方が9割以上という結果から、「特別な支援や配慮を必要としている子がいる」状況は多くの現場や保育者にとって、特別なことではなく、当たり前となっていることがわかります。

そんな中、今回一つの保育のかたちとしてテーマにした「インクルーシブ保育」。
自園での実現への迷いや不安の声は多くあがりましたが、一方で、不安な理由や現状の課題もはっきりと浮き彫りになったアンケート結果でした。

また実際に実践している園が3割にのぼったこと、具体的な実践事例から、目の前の課題の解決の糸口や改善に向けたヒントを見つけていただけたらいいなぁ…と思っています。

今後、『新 幼児と保育』2021年10/11月号から「インクルーシブ保育」実践園取材レポートの記事もご紹介していきます。
今回のアンケートでいただいた質問に対しても、実践園の先生が具体的な回答をしてくださったりしています。現場での保育の参考に、読んでいただけたら嬉しいです。

回答にご協力くださった皆さま、どうもありがとうございました!


アンケートに協力してくださった方の属性について

お立場


勤務先

***

HoiClueでは、今後も様々なテーマでアンケートを実施し、みなさんの声を共有していく予定です。

この記事の連載

<実践園取材レポート>うーたん保育園(神奈川・茅ヶ崎市)〜インクルーシブ保育を支える環境・仕組みとは? 〜

<実践園取材レポート>うーたん保育園(神奈川・茅ヶ崎市)〜インクルーシブ保育を支える環境・仕組みとは? 〜

障がいなどの有無にかかわらず、子どもたちが同じ場でともに育ち合い、学び合うインクルーシブ保育・教育。
その推進のために、法整備や環境整備が進められています。
すでに長年実践しているふたつの園を訪問して、それぞれの園の保育・教育を支える環境や仕組みを教えてもらいました。

今回は、神奈川県茅ヶ崎市・うーたん保育園の様子をレポートします。

<実践園取材レポート> 武蔵野東第一・第二幼稚園(東京・武蔵野市)〜インクルーシブ保育を支える環境・仕組みとは? 〜

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その推進のために、法整備や環境整備が進められています。
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今回は、東京都武蔵野市・武蔵野東第一・第二幼稚園の様子をレポートします。