異年齢クラスでの遊びの広がり〜ハンバーガー屋さんごっこ<前編:遊びが始まったころ>〜
子どもたちが生き生きと遊び、生活する保育の場では、訪れるたび、心動かされる場面に出会います。そんな保育の場面から、語り合うこと、考えさせられることは数多くあります。
3・4・5歳児の異年齢クラスでの遊びの場面を見ながら、ノートルダム清心女子大学で教鞭をとる西隆太朗先生と、伊藤美保子先生が語り合う様子をお届けします。
(この記事は、『新 幼児と保育』2021年4/5月号 に掲載された連載「保育を見ること、語り合うこと」を元に再構成しました)
お話
西 隆太朗先生
ノートルダム清心女子大学教授。保育における関係性の意義について、子どもたちとかかわりながら、保育学的・臨床心理学的研究を進めている。著書『子どもと出会う保育学――思想と実践の融合をめざして』(ミネルヴァ書房)ほか。
伊藤美保子先生
ノートルダム清心女子大学准教授。保育士を長年務め、子どもたちの姿に惹きつけられて、保育の観察研究を続けている。共著『写真で描く乳児保育の実践――子どもの世界を見つめて』(ミネルヴァ書房)ほか。
保育の場面~「ハンバーガーはいかが?」
ある日の自由遊びの時間。子どもたちは、ブロックを組み合わせたおうちごっこや、動物の絵を描く制作など、それぞれが思い思いに遊んでいます。今日のクラスには、ハンバーガー屋さんに使えそうな材料が増えていました。3歳児たちも、食材に少しずつ触れて試しているようです。Aちゃん(5歳児)が店員さんとなって、Bくん(4歳児)の注文を聞いています。
さっそく厨房で、5歳児同士協力し合いながら、調理が始まりました。
厨房にはたくさんの素材が用意されています。
青いドリンクには、手書きで「ブルーハワイ」と書かれていました。Cくん(5歳児)は、トングを扱う技も手慣れたものです。
準備が整い、お店も繁盛してきました。
5歳児たちはレジのところに、「人がいないときはこれを押してください」とベルを置いていました。
保育を見て語り合う
伊藤
店員さんの5歳児たちは、特に役割分担を相談したわけでもないのに、さっと状況を把握して自分の持ち場に回り、ポテトを揚げたり、お客さんが待っていたらレジに入ったり、自然とお店を切り盛りしていました。今必要なことは何かを自分たちで考えて、そのことを楽しめるのは、すごい力だと思います。レジのところにベルを置くのも、5歳児が自分たちで考えていました。
子どもたちの店員さんは堂に入っていて、トングのさばき方ひとつとっても、ちょっと大人がやってみるより真に迫っているくらいです。もう材料が切れてしまったら「すみません、ブルーハワイはもうないんです」だとか、イートインの注文だったら「中で食べる方は手を消毒してくださいね」など、その場に合った応対がすんなりできています。今の時代に起こっていることは何でも、子どもたちは遊びの中に取り入れていきますね。
実生活でもお店を訪れたこともあると思いますが、お客としての立場から見てきただけで、こんな臨機応変な対応ができるのかと驚かされます。
西
Bくんは、手にした札束を「こんなにもらった」と私に見せてくれたのですが、「これ、現実だったらすごいよなあ」といってにっこりしていました。ものを想像力で膨らましてみたり、急に現実との違いを言ってみたり……子どもは現実と想像の間にさまざまな次元があることを知っていて、その違いを行き来しながら楽しんでいるんだなあと思いました。
撮影/伊藤美保子
協力/社会福祉法人倉敷福祉事業会 連島東保育園(岡山・倉敷市)
この記事の出典 『新 幼児と保育』について
保育園・幼稚園・認定こども園などの先生向けに、保育をより充実させるためのアイデアを提案する保育専門誌です。
西隆太朗先生と伊藤美保子先生による「保育を見ること、語り合うこと」が、好評連載中!
▶公式ページはこちら
この記事の連載
異年齢クラスでの遊びの広がり〜ハンバーガー屋さんごっこ<後編:遊びの広がり>〜
その後編をお届けします。