園のあれこれ「捨てた」「捨てたい」モノ・コト教えてください!〜第2回 「やめたい」行事や活動、習慣など〜
倉庫でほこりをかぶっている古い製作物、ねらいのよくわからない行事や活動、職場に伝わるナゾの習慣......。
小学館『新 幼児と保育』とHoiClueのコラボアンケートで保育現場のいらないモノ、コトを大調査!
第2回はみなさんから寄せられた「捨てたい」「やめたい」行事や活動、ルールや習慣などをご紹介します。
(この記事は『新 幼児と保育』(2020−2021年12/1月号)に掲載された記事を、2回連載でお届けしています。)
そのコトってだれのため?「捨てたい」「やめたい」いつもの行事・活動など…
「捨てたい」と感じるのは、モノばかりではありません。当たり前のように行っている行事や活動など、保育活動の中にも「捨てたいコト」は数々あるようで…。
「だれのための行事かわからない」「活動を詰め込みすぎている」など、子どもを思えばこそやめたい・捨てたいという回答が数多く寄せられました。
・学年ごとに決められた製作やカリキュラム、見せるための行事。 先に決めて、子どもを埋め込んでいるように感じる。子どもと生活する中で見えてくることを保育に生かしたい。(非常勤・パートタイム/認定こども園)
・運動会の物語仕様。普通に競技をするだけで十分。(常勤・正規職員/認定こども園)
・行事が多いのは百歩譲っても、行事にともなう製作→しかも全園児、全クラス「やらなくてはいけない」。父、母の日、こいのぼり...と、ずっと行事に合わせて何かしら製作を「させなくてはいけない」。しかも保育者は製作のサンプルを作り、上に確認してOK出るまで作れない...。もはや何のためにだれのためにやっているのかわからなくなる...。(常勤・パートタイム/認証保育施設)
・発表会。普段の生活、遊びの発表の場ではなく、発表会のために練習を積み重ねる行事に なっている。(常勤・正規職員/認定こども園)
・合同保育中に行う15分程度の読み聞かせやペープサート。少人数ならよいが40〜50人をひと部屋に集めて、わざわざ行う必要はないと思う。遊びが中断されるし、時間のムダのように感じられる。(常勤・正規職員/認可保育所)
・作品展と歳の市。作品展...子どもの作品より先生の装飾がどうしても目立つ。歳の市...園内でおもちゃのお金で本物のおもちゃやお菓子を買う、異年齢交流を目的としたお買い物ごっこ。2歳や3歳には難しく、人手が足りない。別の形でもっと交流できる行事に変えたい。(常勤・正規職員/幼稚園)
・近くの公園に行く親子遠足。親子で何度も行ったことのある公園のため、盛り上がらない。(非常勤・パートタイム/認可保育所)
・月に1度、造形表現、空手、体育と、外交講師が来ますが、いらないと思います。私たち保育者でもできる程度です。(非常勤・パートタイム/認可外保育施設)
・たくさんの行事のほかに、ワーク、スイミング、英語など。遊べ遊べというわりに自由な時間が少ない。(常勤・正規職員/認定こども園)
だれが決めた!いつからある?ムダなルール、ナゾだらけの習慣...
保育業界の問題なのか、その園独自のコトなのか…。
捨ててしまいたい、どう考えてもムダな業務・やり方、いつだれが決めたのかわからないナゾのルールの数々。
当たり前に続いているコトであればなおさら、じつはあなた自身も、気づかないうちにそれに慣れてしまっているかもしれません。
・書類。子どもの姿を拾った書類は必要ですが、形式第一の書類は不要ですよね。改行がどうとか数字は半角で打てとかごちゃごちゃいわれて直される書類をサービス残業でする。これ必要なの?(非常勤・パートタイム/認証保育施設)
・週初めの昼礼で園のうたい文句を職員全員で読み上げること。怖いです。(常勤・正規職員/認可保育所)
・休憩がない。もちろんあるけど、だいたい書類なり、お便り帳なりを持って休憩室に入る...。一回勇気を出して休憩時間に仕事を持たないで休憩室に入ってみたら!めっちゃリフレッシュできたけど、その日は残業になった。保育者の仕事量をいま一度見直すべきだと思う。(非常勤・パートタイム/認証保育施設)
・給食のコメント会。特に伝えたいことがなくても、給食先生に感謝を伝える。待ち時間が長い。(常勤・正規職員/認可保育所)
・休憩用のお茶代。自分のそのときの好きな飲み物が飲みたい。(常勤・正規職員/認可保育所)
・職員の何げない派閥。女性の多い社会では多いと思います。よく、保育では人間関係が問題になっていますが、女子社会って多いですよね。(非常勤・パートタイム/認可外保育施設)
・会議時の1分間スピーチ。(常勤・正規職員/認可保育所)
・「ご苦労さまでした」というあいさつ。朝礼でも会議でも、何でも最後のあいさつは全員これ。百歩譲って大人がいうのはわかるが、子どもにもいわせているのは、すごく違和感がある。(常勤・正規職員/認可保育所)
・少し具合が悪くて休んだだけで、「お休みありがとうございました」と菓子折りを持っていかなければならない。体調を崩すのはお互いさま。ひとりがすると、みんな気を使わなければならない悪循環。 (常勤・正規職員/認定こども園)
・年功序列。子どもとの生活で見いだした保育への発想は、先輩後輩関係なく、園の文化や伝統関係なくそのときをとらえて自由な発想で行いたい。決まったことの継承は、保育士を考えない人にしてしまうと思う。(非常勤・パートタイム/認定こども園)
【体験&「捨て」のヒント】
「捨てたいコト」は代替案を提示する
近藤みさき先生
まちのてらこや保育園園長/東京・中央区
行事や活動、ルール、慣習については、「捨てたい」「やめたい」と疑問に思ったときがチャンス。日々続けているうちに、慣れてしまうことがあるからです。
気をつけているのは、自分が不要に思うそのコトも、よいと考えて続けている人がいるはずだということ。ですから真っ向から「捨てましょう」というのではなく、「こういうやり方はどうですか」と別案を提案するようにしています。実際に今年度の4月にいまの園に来てから、それまでの保育のやり方、活動、おもちゃの取捨についてまで、職員と一緒にさまざまな見直しをしました。「その活動は子どもたちにとってなぜ必要だと思うのか」と、一つひとつ対話をし、「やめてよかったな」「捨ててよかったな」と納得を得ながら進めることを大切にしています。
主任や園長にはいいにくいという声もよく聞きます。その場合は同じ考えの仲間を増やすことも大切。声を上げやすくなると思います。
スッキリ!「捨てた」「やめた」モノ・コト集
最後は「捨てた」「やめた」モノやコトをひとまとめにご紹介。
「決まりきった朝の集まりや終わりの会」をやめた結果、「子どもたちのペースで考えられるようになりました」という声も。
あなたの園でも、捨ててスッキリしませんか?
・誕生表。部屋がスッキリした。年度末の忙しい時期の作業が減り、クラスのまとめや次年度クラスのことができた。(常勤・正規職員/認可保育所)
・多すぎる製作。製作自体は大切だが、製作に追われて教師も子どもも楽しめなかった。いまは余裕をもって教材準備ができ、子どもたちの「したい」「やってみたい」ことからヒントを得た活動展開がしやすくなった。(常勤・正規職員/幼稚園)
・「制作」「製作」でなくて「せいさく」にした。使い分けや、どっちが正しいかという議論がなくなり、よかった。(常勤・正規職員/認可保育所)
・水まわりの下に保管してあったダンボール箱類。害虫が発生していたので即捨てでしたが、掃除もできてスッキリしました。(非常勤・パートタイム/認可外保育施設)
・点呼での出欠確認。登降園に時差があるので、電子入力での出欠によってムダな確認が減った。保育の流れもスムーズに考えやすい。(非常勤・パートタイム/認定こども園)
・口拭きタオル。ウエットティッシュに変え、しぼる手間がなくなり快適だし衛生的。(非常勤・パートタイム/認可保育所)
・数年前の運動会の作り物。場所が広くなり、整理整頓できて見通しがよくなった。(非常勤・パートタイム/認可保育所)
・ほこりをかぶっているものは処分しました。捨てたあとに「とっといたらよかった〜!」というものもあった。その見極めが難しい!(常勤・正規職員/認定こども園)
・作品集。月の製作に追われなくてよい。(常勤・正規職員/認定こども園)
・行事を少し減らした。職員の負担が軽くなった。ちょうど年度末の行事だったので本当につらかった。やめたからといって子どもたちに何も影響はない。大人が毎日寝不足でつらい顔で保育するよりも、無理のない仕事量で、笑顔で子どもと向き合って仕事ができる環境が必要なんだと実感した出来事でした。(非常勤・パートタイム/認証保育施設)
・いつか使おうと残しておいた何年も前の保育雑誌。いまはスマホやパソコンでいろいろ調べられるし、スペースができてスッキリした。(主任/認可保育所)
・園長がいないところで、ずっと使ってないものを、内緒でどんどん捨てました。スッキリして片づけやすくなった。(常勤・正規職員/認可保育所)
・男女兼用のユニホームのサンバイザー。1〜2年でやめた。男性もサンバイザーでいやがっていた。(常勤・正規職員/幼稚園)
イラスト/河合美波
この記事の出典 『新 幼児と保育』について
新 幼児と保育
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この記事の連載
園のあれこれ「捨てた」「捨てたい」モノ・コト教えてください!〜第1回 長く居すわる捨てたいモノ〜
今回、小学館『新 幼児と保育』とHoiClueのコラボアンケートで保育現場のいらないモノ、コトを大調査!
第1回は、みなさんから寄せられた園の中に長く居すわる「捨てたい」モノをご紹介します。