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災害時の停電に備える〜第1回 ガス缶と乾電池でしのいだ保育〜

新 幼児と保育
掲載日:2020/10/13
災害時の停電に備える〜第1回 ガス缶と乾電池でしのいだ保育〜

2019年の台風15号による千葉県内の停電は、完全な復旧までほぼ1か月かかり、「電気は一番早く復旧する」という認識が覆されました。

「災害時の停電に備える」連載第1回は「ガス缶と乾電池でしのいだ保育」。
停電の中、6日間保育を行った保育園を天野珠路先生が訪問し、お話を聞きました。

(この記事は、『新 幼児と保育』2020年2/3月号に掲載されたものを元に再構成しました)

レポートする人

天野珠路(あまのたまじ)先生
鶴見大学短期大学部教授。元厚生労働省保育指導専門官。映画『3.11その時、保育園は』(2011年岩波映像)監修。著書に『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』(2017年かもがわ出版)、『3・4・5歳児の指導計画保育園編【改訂版】』(小学館)などがある。『新 幼児と保育』誌上で「災害への備え2020」連載中。

取材協力
飯田栄子先生
社会福祉法人関東福祉会 日向保育園(千葉・山武市)園長


停電発生を予測した防災対策を

2019年9月と10月に台風15号と19号が日本列島に上陸し、甚大な被害をもたらしました。特に、千葉県においては台風15号の暴風雨により多くの家屋が損壊、約2,000本の電柱が倒壊・損傷したということです。広範囲にわたる停電はピーク時には約64万戸に及び、その後の復旧に時間を要したこともあり8日後においても約6万戸で停電が続いていました。 

電気がなければあれもこれも使えない。電気がなければ日没後は暗闇になってしまう。電気に頼り電気に支えられている現代人の暮らしが浮き彫りになり、「もし停電になったら」ということを誰もが考えたのではないでしょうか。また、一時停電になったとしてもすぐに復旧されるはずという思い込みが多くの人にあり、こんなに長く停電が続くとは考えられなかったという声も聞かれました。 

全国の保育現場においては災害に対する備えを行い、保育継続を念頭に対策を講じています。しかし、停電などライフラインが寸断された際の対応はなかなか難しいものがあります。

今回は長く停電が続いた千葉県の保育園を訪れ、停電に備えるための手立てについて具体的に教えていただきました。

日向保育園に面した道路の先で、電柱が折れていた。

停電の中での時短保育 日向保育園(千葉・山武市) 

超大型の台風15号が千葉県に上陸した2019年9月9日の明け方、飯田栄子園長は、風雨が激しく登園などの安全が確保できないため「7時には開園しない」ことをメールで一斉配信しました。
「台風接近である程度の心づもりはしてあり、朝6時に送信できるように準備はしていました」

園は停電していましたが、水とガスは使えたため、風雨の弱まった9時ごろには「開園しますが、クーラーが使えないため早めにお迎えに来てください」と再度送信、14名が登園しました。 

園には、停電対策としてカセットコンロ用のガス缶で動かす自家発電機、充電式のライト、乾電池式のランプがありました。発電機は屋外で使用するため、玄関先から延々とコードをつなげて保育室の扇風機を回し、乾電池式のランプで保育を行いました。冷蔵庫が使えないため給食はメニューを変更して対応、涼しい時間帯は外で遊び、子どもたちはふだんどおりに過ごしていましたが、お昼寝の時間の暑さは過酷なものでした。 

市との対応協議で停電が解消されるまで休園することを確認、10日〜12日は休園しました。13日も停電は続いていましたが、暑さがやわらいだので時短保育を再開しました。17時には保育室が真っ暗になってしまうため、代替施設も検討しましたが難しく、先に停電が解消した系列園で夕方の時間外保育を行うことにしました。

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文/清水洋美 




この記事の出典  『新 幼児と保育』について 

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