保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

「リズムとゆとりのある生活を」ー葉山シュタイナー子どもの家 うみのこびと(神奈川県 葉山町)

三輪ひかり
掲載日:2016/08/16

うみのこびとの特徴は?


私たちうみのこびとの特徴は、シュタイナー教育を実践していることでしょうか。

特に、リズムのある生活を大事にしてあげること、そして私たち大人が子どもたちの模倣の対象となるように、喜びを持って日々の生活を送ることを心がけているという点が、一番大きな特徴かもしれませんね。

室内遊び、お片づけ、ライゲン(季節の歌遊び的なもの)…というように一日の流れは決まっていて、それを崩すことは基本的にありません。

でもリズムって、時計の時間のことではないんですよ。

「あの針が12になったらご飯ですよ」「あと10分で片付けですよ」ということではなく、子どもたちの姿を見て、その“今”の子どもたちのリズムを大事にしていくんです。

世の中は目まぐるしい早さで移り変わり、大人たちが過ごす時間のリズムって本当に早い。
忙しない中で過ごすと、実は呼吸も「はぁはぁ」ってどんどん早くなっていくんですよね。

だからこそ、うみのこびとでは、ゆとりを大事にしてあげたい。

ゆったりとした時間、そして安定したリズムの中で過ごせると、呼吸もゆったり大きくなっていく。
そんな子どもたちの呼吸を作ってあげたいと思っています。

なので、子どもに今何時だから、ということは伝えないんですよ。
(実際、園の中には時計がひとつもありませんでした)

最近印象に残っている「うみのこびと」らしいエピソード


ここにお引越ししてきてまだ2ヶ月くらいなんですけど。
新しいお庭には、夏みかんの木と梅の木があるので、子どもたちと収穫をしたんです。

特に梅はすごくたくさんなったんですけど、結構木の高いところにも実がどっさりなったんですよね。
どれくらい高いかと言うと、大人が脚立に登っても、届かないくらいの高さで。

でもそれをある日、5歳の女の子が「登って採ってみる」って言ったんです。

その高さにチャレンジしてみようと思った子どもの姿も、それを見守ろうと決めた大人の姿も、うみのこびとらしいなぁと思って、今でも喜び深い思い出として、心に残っています。

その実は、みんなで梅シロップや梅干しにしているんですよ。


それでもまだまだいっぱいあって、子どもたちはお家にも実を持って帰って、お母さんたちに漬けてもらっています。

保護者のかたには、園の運営にも参加してもらっているので、お父さんお母さんも一緒に園を作り上げているのも、うみのこびとらしいところかもしれません。

最近子どもたちの間で流行っているあそびは?

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去年・今年と、下に弟や妹が生まれた子どもたちが多くて、おもちゃで人気なのは赤ちゃんのお人形ですね。
おままごともするんですけど、その中でも“出産”という瞬間をごっこ遊びしている子もいて。

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(出産ごっこをのぞく、男の子たち)


実際出産に立ち会った子もいるんです。
子どもたちは生活のなかで印象に残っていることを、遊びに取り入れるんですよね。

保育でおもしろいと感じるところはどこですか?

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小さなことでも「とても嬉しい」と素直に気持ちを表現して、子どもたちと一緒に喜びを感じられることでしょうか。
とてもいきいき生きる、というのかなぁ。

個人的には、子どもたちの「◯◯したい」という気持ちに向き合い、それを支えてあげられることも本当に喜びですね。

子どもの気持ちに寄り添って、環境や道具をととのえてあげた時に、子どもたちの中から思っていた以上のものや、予想外なものが生まれてくることがあるんです。

子どもの中に眠っているものを出してあげられたようで、すごく嬉しい気持ちになりますね。

子どもたちと関わる上で大切にしていることは?

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子どもたちの前では、個人的な心配事とかそういうものは横に置いておいて、今目の前にいる子どもたちとまっすぐ向き合うことでしょうか。

あとは、気持ちを引きずるということはしない。

もちろん私も人間なので、子どもたちに対して「もうっ!」ってなることもあるんですけど(笑)、ひと呼吸おいて、その気持ちはその場でおしまいにします。

大人同士でも、感情的になったままでは、コミュニケーションが難しくなってしまうことがありますよね。
子どもたちには、それはしたくないなぁという気持ちもあります。

うみのこびとの中では、子どもたちがつねに健やかに呼吸できるようにしてあげたいですね。

うみのこびとが考える「保育」とは?

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保育って、「人が人と共に生きること」だと思うんです。

子どもたちにとって、家族から離れた最初の社会が、保育という場。
おうちにいた時には感じなかった様々な感情を抱いたり、新しい出会いをたくさん経験するなかで、みんなで経験をつんでいくのが、保育ではないでしょうか。

そしてうみのこびとは、その時にそばにいる大人たちが喜びをもって生きていることで、子どもたちもそこにいることが嬉しいと感じ、安心して、ありのままの自分でいられる場でありたい。

その環境が整っていれば、子どもたちの自己肯定感が育まれ、いろんな気持ちややりたいことがどんどん湧き上がってくると思うんです。

夢を教えてください。

新しい園舎に移ってきて、改めて多くの人に支えられ、守ってもらっているとすごく感じています。

だからこそ、お父さんお母さん、地域の方々、そして子どもたちと一緒に、うみのこびとを作っていきたい。
ここを卒園して小学校に行ったとしても、子どもも保護者の方たちも戻ってこれたり、お母さんたちがやりたいと思っている地域活動ができたり…いろんな支えあいが起こる場でありたいですね。

地域のなかで生きていく、ということをもっとかたちにしていきたいです。

葉山シュタイナー子どもの家 うみのこびと
http://www.uminokobito.com/
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取材・文:三輪ひかり
写真:猪俣博史