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新しい「あたりまえ」を次々と創りだす!フローレンス駒崎さんの考え方<前編>

三輪ひかり
掲載日:2016/05/17

保育の世界に入る人って、「愛情に溢れている人」が多い


雨宮みなみ

保育士不足が問題になっているなか、なぜフローレンスで働きたいと、保育士さんは集まるんでしょう?

駒崎弘樹

そうですね、フローレンスの特徴はいろいろな保育ができるということだと思うんです。


主に病児保育、小規模保育、障害児保育の3つの保育事業を行っているのですが、それぞれに保育士さんたちは理由があって、選んでくれているんだと感じています。


障害児保育は、保育園で障害のある子に出会って、もっとこの子たちのために何かしたいとか、ご自身のお子さんが障害児だったとか、そういったメンバーが携わってくれています。


小規模保育は、大規模園では自分のしたい保育ができないとい感じた保育士さんたちが選んでくれていますね。


保育士1人で20人の子どもを保育していると、子どもひとりひとりを見ることができず、今日この子と喋れなかったということがあったりするんだそうです。

雨宮みなみ

限られた環境であっという間に日々が過ぎていくなか、なかなか余裕を持ってじっくり関われないことにもどかしさを感じている保育士さんは多いかもしれませんね。

駒崎弘樹

はい。そんな中で、「なんのために保育しているんだっけ、それなら少人数で丁寧に接したい」という思いが生まれてきて、おうち保育園で働くようになったという保育士さんもいます。


そして病児保育では、保育園で勤めていたけれど、子どもたちが具合が悪くなる度に、「お母さん、お子さんが熱がでたので迎えにきてください」と電話することに、心が痛んでいた、という話を聞きました。


熱を出した時こそ親子を支えなきゃいけないのに、保育園ではそれができないということに悩んでいる方って結構いるみたいなんです。


またフローレンスは「37.5℃の涙」という病児保育がテーマの漫画(2015年7月にTBSでドラマ化)のモデルになったんですけど。


雨宮みなみ

見ました! 話題になりましたよね。

駒崎弘樹

ありがとうございます(笑)


それを見て、病児保育いいかもと思って、来てくださる方もいます。

雨宮みなみ

そうなんですか!

駒崎弘樹

実はこの間、中学2年生の子から電話があったんです。


「病児保育士さんになるにはどうすればいいですか?」って。

雨宮みなみ

えぇー!すごいですね!!


わざわざ調べて直接電話をかけてくれるほど、何か響いたものがあったんですね。

駒崎弘樹

嬉しいことですよね。


ちょっとずつ病児保育の認知度があがってきて、印象もよくなってきたんだと感じた瞬間でした。


そんな中学生からの電話をもらったり、改めてフローレンスで働いてくれている保育士たちのことを思い返すと、それぞれモチベーションは違うんですけど、保育の世界に入る方って志が高いというか、本当に愛情に溢れている人が多いと、心から思います。


前編はここまで。

後編では、駒崎さんの活動の起点になっている想いや、保育士の処遇問題について私達保育士ができることについてお聞きします!


駒崎弘樹(こまざきひろき)


*駒崎弘樹(こまざきひろき):認定NPO法人フローレンス代表理事
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。2007年、ニューズウィーク「世界を変える社会起業家100人」に選ばれる。2010年からは待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開し、政府の待機児童対策政策に採用される。2012年、一般財団法人日本病児保育協会、NPO法人全国小規模保育協議会を設立、理事長に就任。現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員等を務める。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』(PHP新書)『社会をちょっと変えてみた』(岩波書店)等。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。

雨宮みなみ(あめみやみなみ)


*雨宮みなみ(あめみやみなみ):こども法人キッズカラー代表。中学生時の職業体験で、自然と自分が笑顔でいられる保育の世界に魅了され、保育士になる事だけを目指し20歳で保育園に就職。保育の現場で感じた保育士の不安や負担を楽しさに繋げたい、という想いから2010年にキッズカラーを設立。同年HoiClue♪をスタート。2014年に第一子を出産し、一児の母でもある。

(執筆:三輪ひかり / 撮影:平松大昌)