保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

「子どもの心に寄り添う」ーりんごの木 子どもクラブ(横浜市 都筑区)

掲載日:2015/07/08

ミーティングの様子

日々のあそびや生活から生まれるなにげない疑問から、友だちとの関わりについて、運動会や遠足などの実施についてまで、さまざまなことが“ミーティング”で話し合われます。

創設者である柴田愛子さんがはじめた「りんごの木」の“ミーティング”は、子どもたちが自分の言葉で自分の意思を伝え合う場。

保育者は子どもたちと同じように考え、意見しますが、決して話の道筋をコントロールしたり、解決に結びつけようとはしません。あくまで主役は子どもたちです。

この日はザリガニ釣りに行ったチームと、行かなかったチームに分かれて“ミーティング”を実施。

ザリガニ釣りに行ったチームの“ミーティング”の様子は…?

輪になってミーティングをする先生と子どもたちの様子



青山さん

「みんなは今日釣ったザリガニどうする?」

子どもたち

「はーい!」

はーい、と手を挙げる子どもたちの様子



子どもたち

「いっかいおうちにつれてかえって、げんかんにおいたあと、にがす」
     「つれてかえるのに、にがすなんてへんじゃん!」

青山さん

「でも、それは人それぞれだからいいんだよ。」

子どもたち

「しぜんせいたいえんに6ぴきあげる(13匹中)どうぶつさんのえさになるんだよ」
     「おうちでおみずかえたり、えさあげたりして、だいじにかう」

子どもたち

「おともだちにあげる」
     「かめのえさにする」

青山さん

「カメって、ザリガニ食べるの?」

子どもたち

「たべるよ〜」

ザリガニをどうするか話し合う子どもたちの様子



保育者・佐藤さん

「飼う、あげる、逃がす以外のことをする人?」

青山さん

「ぼくは、今はやらないけど、子どもの頃やってたのは、「ちぎる」」

子どもたち

「え〜〜」

青山さん

「ザリガニって、ちぎると中がエビみたいにぷりんぷりんになってて、それをエサにしてザリガニを釣ると、ザリガニって、そのぷりんぷりんが大好きだからすごくよく釣れるんだよ」

子どもたち

「ザリガニがザリガニをたべるの?!」
     「ともぐいするの?かわいそうだな〜」
     「するめでもつれるじゃん!」

青山さん

「子どもの頃はお金もってないじゃん。スルメ買えないから、ザリガニをちぎってエサにしてたの」

佐藤さん

「ザリガニちぎれる人!」

子どもたち

「できな〜い」
     「やったことなーい」
     「ぎゅってやればいいの?」

ザリガニをどうするか話し合う子どもたちの様子



青山さん

「じゃあ、せっかく獲ったザリガニを逃がす人は、どうして逃がすのかな?」

子どもたち

「だって、どうせかっててもさ、しんじゃうから…」
     「しぬしぬっておもってたらしんじゃうんだよ!」
     「しなないっておもってたらしなないよ!」

ザリガニをどうするか話し合う子どもたちの様子



青山さん

「そっか、あかねちゃんは、せっかく飼っても死んじゃうから逃がしたいんだね。でも、うっちゃんはその気持ち、わかるんじゃない?うっちゃんは釣っても死んじゃう、釣っても死んじゃう…だから、もうザリガニ釣りに行くのやめようって思ってたんだよね」

子どもたち

「うん」
     「でも、今日はなんで行ってみたの?」
     「いっかいいってみようかな…っておもった」

青山さん

「そっか」

意見を絵や文字で書いた様子


子どもたちの意見は絵などに描きとめ、視覚化することも。

青山さん

「こうしたら死なないよっていう方法、みんな何か知ってる?」

子どもたち

「ごはんつぶあげる!」
     「ちくわをちぎってあげる」
     「みずがちがうおんどだとしんじゃう。あと、ねこにたべられたりしちゃうからふたする」

青山さん

「なるほど!水をあったかくしたらいいかな?」

子どもたち

「おみずをちょっとおいておく。それでなれてからそこにいれる」

青山さん

「ザリガニなんて死んだって全然可哀想じゃないよって思う人?」

子どもたち

「しょうがないよ」
     「ずっとかってたらしんじゃうから」

佐藤さん

「みんなが釣ったザリガニで、ザリガニってこうなってるんだって、いっぱい知ることができることの方が大切だって思うから、ザリガニさんには申し訳ないけどいいかなって思う。」

青山さん

「ぼくは子どもの頃はちぎってたくらいだから、全然可哀想じゃなかったけど、大人になったらやっぱりちぎるの可哀想だなぁ〜って思うようになったかな…」

話し合う子どもたちの様子



手を真っすぐに挙げて、何度も発言する子もいれば、黙ってじっとみんなの話を聞いている子、上の空の子…。

「一回ごとの“ミーティング”はまさに先の読めないドラマです。」という青山さんの言う通り、子どもたちそれぞれの言葉と気持ちが飛び交い、混ざり合っていきます。
「ルールや結論や解決がほしいわけじゃないんです。もやもやしたまま終わってもいいと思っています。」


インタビュー編では、日々子どもたちの言葉に心を震わされているという、保育者の青山誠さんに「りんごの木」について“ミーティング”の背景について、じっくりお話を伺います!(インタビュー編へつづく