「子どもの心に寄り添う」ーりんごの木 子どもクラブ(横浜市 都筑区)
ミーティングの様子
日々のあそびや生活から生まれるなにげない疑問から、友だちとの関わりについて、運動会や遠足などの実施についてまで、さまざまなことが“ミーティング”で話し合われます。
創設者である柴田愛子さんがはじめた「りんごの木」の“ミーティング”は、子どもたちが自分の言葉で自分の意思を伝え合う場。
保育者は子どもたちと同じように考え、意見しますが、決して話の道筋をコントロールしたり、解決に結びつけようとはしません。あくまで主役は子どもたちです。
この日はザリガニ釣りに行ったチームと、行かなかったチームに分かれて“ミーティング”を実施。
ザリガニ釣りに行ったチームの“ミーティング”の様子は…?
青山さん
「みんなは今日釣ったザリガニどうする?」
子どもたち
「はーい!」
子どもたち
「いっかいおうちにつれてかえって、げんかんにおいたあと、にがす」
「つれてかえるのに、にがすなんてへんじゃん!」
青山さん
「でも、それは人それぞれだからいいんだよ。」
子どもたち
「しぜんせいたいえんに6ぴきあげる(13匹中)どうぶつさんのえさになるんだよ」
「おうちでおみずかえたり、えさあげたりして、だいじにかう」
子どもたち
「おともだちにあげる」
「かめのえさにする」
青山さん
「カメって、ザリガニ食べるの?」
子どもたち
「たべるよ〜」
保育者・佐藤さん
「飼う、あげる、逃がす以外のことをする人?」
青山さん
「ぼくは、今はやらないけど、子どもの頃やってたのは、「ちぎる」」
子どもたち
「え〜〜」
青山さん
「ザリガニって、ちぎると中がエビみたいにぷりんぷりんになってて、それをエサにしてザリガニを釣ると、ザリガニって、そのぷりんぷりんが大好きだからすごくよく釣れるんだよ」
子どもたち
「ザリガニがザリガニをたべるの?!」
「ともぐいするの?かわいそうだな〜」
「するめでもつれるじゃん!」
青山さん
「子どもの頃はお金もってないじゃん。スルメ買えないから、ザリガニをちぎってエサにしてたの」
佐藤さん
「ザリガニちぎれる人!」
子どもたち
「できな〜い」
「やったことなーい」
「ぎゅってやればいいの?」
青山さん
「じゃあ、せっかく獲ったザリガニを逃がす人は、どうして逃がすのかな?」
子どもたち
「だって、どうせかっててもさ、しんじゃうから…」
「しぬしぬっておもってたらしんじゃうんだよ!」
「しなないっておもってたらしなないよ!」
青山さん
「そっか、あかねちゃんは、せっかく飼っても死んじゃうから逃がしたいんだね。でも、うっちゃんはその気持ち、わかるんじゃない?うっちゃんは釣っても死んじゃう、釣っても死んじゃう…だから、もうザリガニ釣りに行くのやめようって思ってたんだよね」
子どもたち
「うん」
「でも、今日はなんで行ってみたの?」
「いっかいいってみようかな…っておもった」
青山さん
「そっか」
子どもたちの意見は絵などに描きとめ、視覚化することも。
青山さん
「こうしたら死なないよっていう方法、みんな何か知ってる?」
子どもたち
「ごはんつぶあげる!」
「ちくわをちぎってあげる」
「みずがちがうおんどだとしんじゃう。あと、ねこにたべられたりしちゃうからふたする」
青山さん
「なるほど!水をあったかくしたらいいかな?」
子どもたち
「おみずをちょっとおいておく。それでなれてからそこにいれる」
青山さん
「ザリガニなんて死んだって全然可哀想じゃないよって思う人?」
子どもたち
「しょうがないよ」
「ずっとかってたらしんじゃうから」
佐藤さん
「みんなが釣ったザリガニで、ザリガニってこうなってるんだって、いっぱい知ることができることの方が大切だって思うから、ザリガニさんには申し訳ないけどいいかなって思う。」
青山さん
「ぼくは子どもの頃はちぎってたくらいだから、全然可哀想じゃなかったけど、大人になったらやっぱりちぎるの可哀想だなぁ〜って思うようになったかな…」
手を真っすぐに挙げて、何度も発言する子もいれば、黙ってじっとみんなの話を聞いている子、上の空の子…。
「一回ごとの“ミーティング”はまさに先の読めないドラマです。」という青山さんの言う通り、子どもたちそれぞれの言葉と気持ちが飛び交い、混ざり合っていきます。
「ルールや結論や解決がほしいわけじゃないんです。もやもやしたまま終わってもいいと思っています。」
インタビュー編では、日々子どもたちの言葉に心を震わされているという、保育者の青山誠さんに「りんごの木」について“ミーティング”の背景について、じっくりお話を伺います!(インタビュー編へつづく)