第9回「地域に目を向けてみよう!」
みなさん、こんにちは。今回は「地域に目を向けてみよう!」というテーマについてお話したいと思います。
みなさんが関わっている保育園はどんな環境にありますか?
子どもたちの保育環境が大きな園庭のある魅力的な場所ばかりなら良いのですが、昨今は規制緩和などで認可・認可外に限らず園庭が狭い、もしくは園庭のない場所も多いかと思います。
もちろん、屋外であれ屋内であれ、子どもはどんな環境でも遊びます。都市のビルの一室であっても、その空間を楽しい遊びができる場所に変えていくことが子どもに関わる私たち大人の役割です。
しかし、第7回のコラムでも書かせてもらいましたが、本来は子どもがのびのび遊べる環境とは、
「自然に触れて遊ぶことが出来る」
「子どもが扱いやすいたくさんの素材がある」
「つくったり、壊したりができる」
「選択肢がある」
「適切な危険にふれることができる」
などの要素を満たす場所であり、理想的な環境はやはり屋外ということになります。
では、適切な屋外環境が自身の関わる保育所の敷地内にない場合はどのようにしていけば良いのでしょう?今回の「地域に目を向けてみよう!」というテーマにつなげて考えていきたいと思います。
すでに実践しているところもあると思いますが、「地域に目を向ける」とは、具体的にはどんな工夫が求められるでしょうか。今回は、みなさんがよく園外に出る際に行くことの多い「公園」を野外環境と設定し、考えていきたいと思います。
公園では、みなさんが保育の対象としている未就学の子どもたちが遊ぶことはもちろんですが、他の目的で公園を利用する人たちも多くいます。
散歩や運動、休憩などを公園の利用目的としている方もいることでしょう。また利用者の年齢層も幅広く、子連れの親子、小学生、また中高生や大学生、社会人に高齢者など様々です。
そんな多様な世代が多様な目的で訪れるわけですから、おのずとそれぞれが目的を達成するための過ごし方も多様となり、利用者同士の利害が衝突することも出てきます。
これは、敷地内に園庭がある場合には心配がない部分であり、野外活動においてのデメリットとしても考えられます。一方で、多様な世代と関われるという点に関しては、子どもの成長にとって好ましいメリットとしても考えられます。
さて、ここでみなさんに質問です。
この野外環境でのデメリットを抑え、メリットの部分を引き出すことができる、ある簡単な工夫があるのですが、それはなんだと思いますか?
実は、この場合の工夫の一つが「挨拶」なのです。
「えっ?挨拶…」と思う方もたくさんいるかもしれませんが、実はこれは単なる挨拶ではなく、保育(子育て)を社会化していくために欠かせない、保育士にとって必要な職能だと思っています(保育の社会化とは、この場合は保育園・幼稚園・学校などの施設としての社会資源を中心に、地域社会全体で子育てを支えていけるような状態にすることです)。
例えば、遊んでいる子どもの声。
大声を出して遊んでいる声を聞いた場合、人はその声の主のことを知っているか知らないかによって、快・不快の感じ方に差があります。
知らない人の言動には、コミュニケーションが成り立たずに不快な気持ちは募る一方。しかし、知っている人ならば、例え一つの言動に不快感を感じたとしてもコミュニケーションを通じて気持ちに変化を生むことができ、不快感の改善や解消ができるようになるのです。
つまりは、挨拶によって得た好感は、「あの人が連れてきている子どもたちだから、まぁ良いか」と相手が感じた不快感の防波堤となってくれるのです。
公園に行った時、子どもたちの遊びを見守りながら、または保育所からの移動の道すがらなど、声の届く範囲にいる人たちには積極的に挨拶をして話しかけてみて下さい。天気の話でも時事ネタでも話題は何でも構わないと思います。初めはうまく話がつながらないこともあるかもしれませんが、経験を積むことで相手に合わせた話題の引き出し方などが身についてきます。
こういった他者とのやりとりは、子どもたちにも良い影響を与えます。
保育士からの挨拶がきっかけとなり、温かな言葉がけや眼差しをかけられるようになった子どもたちには、地域社会に対する安心感が育ちます。
その体験は身近な人はもちろん、多くの知らない人たちからも自分たちは歓迎されて暮らしているという実感となるからです。
また、他者と関わることに積極的な保育士の姿勢も、子どもたちの「他者と関わりたい」という気持ちの後押しとなることでしょう。
ようするに、保育士にとって大人とやりとりをする力が必要だということです。
私もプレーリーダーを始めた頃は「関わるべきは子ども」だと思っていました。
しかし、経験を積むうちに、子どもが遊べない状況をつくっているのは実は大人であり、地域社会の問題だということに気付いたのです。
子どもと関わることが大切なのは当然なのですが、それ以上に「関わるべきは大人」であって、大人と関われるということが子どもをのびのびと遊べるようにするために必要な職能だということを意識してみて欲しいと思います。
戸外では、子どもたちを見守るだけで手いっぱいということもあるでしょう。そんな場合は相手の目を見て挨拶するだけでも構わないと思います。園庭のあるなしに関わらず、ぜひ、みなさんにも地域に目を向けることができるコミュニティーワーカーの視点を持った保育士として、多くの人を巻き込みながら楽しい外遊びの時間を作っていってみて下さいね。
カラフルで楽しい見た目が、
自分も「やってみたい」という気持ちを次々に惹き出します。
予告
次回は「遊びの価値を社会化していこう」というテーマで、遊びの大切さを多くの人に伝えていくことが保育の価値、保育士の価値にもつながっていくということについて話をしていきたいと思います。お楽しみに☆