製作からみる、感性の成長#02『自分で決める目標』
様々なアート遊びを紹介してきた昨年を踏まえ、今年は美術表現をベースに「子どもたちに委ねた先の世界をのぞく」エピソードを紹介しています。
シーズン2は「製作からみる、感性の成長」がテーマ。
こどもたちが何をどう表現するかを自分で決める、自由表現の場「UMUMこどもアトリエ」を舞台に、こどもたちの心や感性の成長をお伝えしていきます。
「キャラクターを描きたい!」
今回紹介するのは、6歳、7歳の子の、えのぐでのお絵描きの様子。
最初に7歳の子が、えのぐで好きなキャラクターを描くと決めました。選んだのは、黄色と黒の絵の具。黄色い絵の具で顔や体を描き、黒で模様や目を描き始めます。
しかし、まだ乾いていない黄色に黒が混ざり、なんだか暗い色になってしまいました。
「うまくいかない!!」とムッとする様子を見て、「二つの色をはっきり分けたい時は、黄色をしっかり乾かしてから黒で描くといいよ。もう一回やってみる?」と尋ねると、頷きます。
2枚目は、黄色で描き終わった後にしっかりドライヤーで乾かし、黒を載せてみます。
お!うまくいきそう!
しかし、今度は黒で描いた目が大きくなりすぎて、なんだか似ていない...。ごまかすように、上から×を描き足すその子に、「特にキャラクターを描く時、目はとっても大事だよね。そういう時は細い筆で、小さく描いてから少しずつ大きくしていくといいよ」と伝えます。
そして3枚目!
黄色で描いて、乾かし、黒で丁寧に顔のパーツを描いて...さらに手足も描き足して、完成ー!!!
3枚を並べると、心の動きに伴う技術的な上達がよくわかります。とても嬉しそうな顔をしていました。
その様子を横で見ていた6歳も、同じようにえのぐでキャラクターを描くことに挑戦!見ていたことをしっかりやり抜き、2枚の挑戦で納得のいく絵を完成させました。
えのぐでキャラクターを描くのは、技術的にもとても難しいことです。しかし、二人は工程の多さにも負けず、粘り強く挑戦を続けて見事に描きあげました。
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なぜ粘り強くできたのか?を考えた時、そこには「“自分で”目標を設定したこと」が大きく作用していたのではないかと思います。
目標というのは大げさなものではなくて、例えば今回でいうと「本で見たキャラクターを、そっくりに描きたい」「あの日の空を忠実に再現したい」「目の前にある道具を思いっきり使いたい」など、一人一人が思い描く作品の理想像や製作欲求のこと。
製作は例え落書きでも、「自分が決めた目標に向かっていく」場面がとても多い活動です。そこから生まれるこども同士の相互作用もまた、成長の要素がもりだくさん!
おとなもその成長を見つけ、一緒に喜びを味わいたいですね。
この記事の連載
遊びから芸術は始まる!#01『新聞紙あそび』
製作からみる、感性の成長#01『おとなのまなざし』