遊びから芸術は始まる!#01『新聞紙あそび』
こんにちは。美術教育家の田中令です。
昨年度に引き続き、2024年度もHoiClueさんで連載をさせていただくことになりました。
様々なアート遊びを紹介してきた昨年を踏まえ、今年は美術表現をベースに「こどもたちに委ねた先の世界をのぞく」エピソードの紹介をしていきたいと思います。舞台は、私が年間を通して芸術講師として関わっている保育園や、UMUMの自主企画「UMUMこどもアトリエ」です。
今回は、保育園の新年度1回目に行った、新聞紙を使った活動からお届けします。
新聞紙で遊ぶ
新聞紙を自由に使ってとことん遊ぶ!という、とてもシンプルな活動を行いました。対象は、はじめましての年少クラスから、2年目の年中クラス、3年目の年長クラス。
お部屋に大きなシートを敷き、その上にたくさんの新聞紙を広げて置いてあるところから、はじまります。
「この時間は自由に自分を表現していい」ということがこどもたちに伝わるよう、導入では創作的な活動を強く促すこと(例えば…「◯◯を作ろう!」といった声掛けなど)はしませんでした。
年少クラスのようす
最初の導入で伝えたこと:
「新聞紙を破いたり、捻ったりして遊ぼう!」
大きく開いた新聞紙を全身で破く、千切る(ちぎる)、ばら撒くがとにかく楽しいこどもたち。破いた切れ端を両手いっぱいに持ち、天井に投げると舞い上がる様子にも大興奮!お部屋いっぱいに広がるその切れ端に、埋まるのもまた楽しい!
はじめましての緊張感はあっという間に消え、弾ける笑顔と歓声があがっていました。
そんななか、新聞紙を丸めて、お団子を作る子を発見!芸術の芽も見えました。
年中クラスのようす
最初の導入で伝えたこと:
「新聞紙を破いたり、捻ったりして遊ぼう!両手を使って小さく破き、穴を開けることもできるよ。」
新聞紙を丸めて武器を作り、ともだちと遊ぶアイテムを作ったり体に巻きつけてスカートにしたり、頭からかぶる洋服にしたり。
活動開始早々、どの子も思いっきり創作を始めていてびっくり!私たちがいる時間=ものを作る時間、と認識しているからかもしれません。
ともだちの創作に刺激を受けながら、創作物の流行が生まれるのもまた面白く、新聞紙が「素材」として認識されていて、年少クラスとは全く異なる遊びになっていました。
年長クラスのようす
最初の導入で伝えたこと:
新聞紙を破いたり、捻ったりして遊ぼう!両手を使って小さく破き、穴を開けることもできるよ。
年中クラスと同じ設定で始まった、年長クラス。
意外にも、年少と年中のハイブリッドな遊び方が展開されました。
思いっきり遊びたい子は、年少&年中クラスが破いた切れ端をばら撒き、集め、またばら撒く。そのうち、数名の協働によって新聞の切れ端を山のように積み上げ、そこにダイブするような遊びも。作って壊し、考え、また作って壊しの繰り返しは、まさに“スクラップアンドビルド”でした。
一方、最初からじっくり創作をする子もいました。そのうち、この二つの遊び方を行ったり来たりする子もいて、見ていてとても面白かったです。
子どもたちから生まれた作品
捻ってできた、リボン(年中)
髪の毛にウィッグも!(年中)
部屋中に広がる新聞紙(年長)
もはやこれも作品に見えてきます。
こんな風に、私が出会ったエピソードを通して、「こどもたちに自由に表現してほしい。でも、こどもたちに委ねて大丈夫だろうか?」といった葛藤や日々子どもたちと過ごしているみなさんに、寄り添っていけたらいいなと思っています。
次回もおたのしみに!