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製作からみる、感性の成長#03『場になじみ、表現がひらく』

田中 令
掲載日:2025/02/05
製作からみる、感性の成長#03『場になじみ、表現がひらく』
こんにちは。美術教育家の田中令です。
様々なアート遊びを紹介してきた昨年を踏まえ、今年は美術表現をベースに「こどもたちに委ねた先の世界をのぞく」エピソードの紹介をしています。

シーズン2は「製作からみる、感性の成長」がテーマ。
今回は、こどもたちが何をどう表現するかを自分で決める、自由表現の場「UMUMこどもアトリエ」を舞台に、こどもたちの心や感性の成長をお伝えします。


この日のこどもアトリエは、様々な種類の紙や描画材、はさみや糊などを用意している「かたち」というテーマの日。初めて参加する子、これまで何度も参加している子が半々くらいの割合で集まりました。

初めての人たち、初めての場所。初参加の子にとって、そんな環境で何かを表現するのは、とても勇気がいることです。
どんな作品をつくるのかはもちろん、画材の使い方や組み合わせ方は自分次第。周りの子たちの製作する様子を見ながら、気になる画材におそるおそる手をのばし始めます。

画材に触れていくうちにその特徴がわかり、アイデアが芽生え、製作に没頭していく彼女。緊張していた表情がだんだんと柔らかくなり、隣でサポートしていた保護者の方にも自分の意見を言えるようになっていきます。その頃合いを見計らってお手伝いを申し出た私にも、「紐が欲しい」と自分の意見を伝えてくれました。
ちょっとしたやりとりをきっかけにコミュニケーションを重ね、私と彼女の関係性も温まっていきます。

そうしてできあがった作品は、カラフルなシートを組み合わせたお花のような風車のような作品。中心に通した紐を使って、天井から吊って展示をしました。息を吹きかけたり、手で揺らしてみると、くるくる回っておもしろい!

一つの山場を越え、素敵な笑顔がでた後の製作エネルギーは圧巻!思いっきり腕を動かして、大きな紙いっぱいの虹を描き上げました。

おそるおそる動かしていた手が、腕全体の動きに変わる。こどもたちの表現は身体性をともなって、その瞬間の心を伝えてくれるものなんだなあと実感しました。だからこそ、こどもたちが安心して自分の表現をできる環境を作っていきたいなと思います。

この日生まれた、そのほかの作品たち


はさみが楽しい!3歳の作品


絶妙なバランスがかっこいい、4歳の作品


8歳の画伯が描いた「溶ける月」

次回もおたのしみに!

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