遊びから芸術は始まる!#02『ひかりあそび』
新年度の慌ただしさが落ち着いてくる時期。
芸術活動を始める現場も多いのではないでしょうか?
様々なアート遊びを紹介してきた昨年を踏まえ、今年は美術表現をベースに「こどもたちに委ねた先の世界をのぞく」エピソードの紹介をしています。舞台は、私が年間を通して芸術講師として関わっている保育園や、UMUMの自主企画「UMUMこどもアトリエ」。
今回は、6月にUMUMこどもアトリエにて行った「ひかり」をテーマにした活動からお届けします。
(UMUMこどもアトリエは、2018年から始まったUMUMの自主企画。ワークショップのように単発で参加することも、習い事のように定期的に参加することもでき、はじめましての子と顔馴染みの子が入り混じった制作環境です。
「せん」「かたち」「ねんど」などの抽象的なテーマに基づいたたくさんの画材を使い、こどもたちが自由に表現を楽しんでいます。)
「ひかり」と遊ぶ
セロハンなど透過性のある素材、影がおもしろそうな画材、油性ペンなどを使って、クリアフィルムを支持体(絵画を描く際に必要な基底面)にして作品を作ります。
明るい部屋で制作した作品を、暗い部屋でライトを充てて鑑賞し、どんな影ができるかを楽しみました。
この日集まったのは、2歳〜8歳のこどもたち10名。
まずは暗い部屋で、自分の手を手元のライトにかざし、壁に影を映し出します。ライトを近づけたり遠ざけたりすることで、明るくなる光、大きくなる影...など、光と影の関係を楽しみます。
実験のあとは、部屋を明るくして制作スタート!
ポケット状のクリアフィルムに好きな画材を入れたり、貼り付けたり、ペンで絵を描いたり。思い思いに制作をするこどもたち。
途中、再度部屋を暗くして、制作した作品がどんな影を生み出すか実験してみます。
カラーセロハンが生み出す影は色がつき、画用紙や折り紙の影は黒い。
透明なフィルムに描いた絵は、そのまま影になる。
いろんな発見をすることができる時間です。
明るい部屋での制作に戻り、みんながまた制作に集中し始めるなか、3歳の女の子が画用紙に思いっきりはさみを入れ始めました。
会場に着いた時から、「今日ははさみをやるんだ!」と意気揚々に伝えてくれた子です。
はさみが画用紙をザクザク切っていく感触が、とても気持ちよさそう。
そして、できあがったたくさんの形を糊で貼り合わせ始めました。
多くのこどもたちが使っているクリアフィルムは使わず、透過性のあるものも使っていません。
(透けない形を貼り合わせていくと、せっかく切ったひとつひとつの形が影にならないのでは...)
見守るおとなには、そんなことが気になったりしますが、ここはぐっと我慢。その子の挑戦と発見を見守ります。
「できた!!!」と、その子が見せてくれた形の集合体は、上部がとんがった、三角のようなフォルムをしています。
「これはお城なんだ」と嬉しそうに語るその子と、部屋を暗くし、ライトをあててみると・・・。
見事なお城の影が、映し出されました。お城とライトの距離を近づけることで、大きなお城が壁に現れます。
この活動の冒頭に、自分の手にライトを充てて行った実験の応用もしている...!平面から立体作品に展開しているのも、すごい...!
改めて、こどもたちの吸収率の高さと、おとなの想定を超えるアイデア力に感動してしまいました。
こどもたちから生まれた作品
4歳、製作中
マッキーでしっかり描いています。
5歳の作品
クリアフィルムに描いた絵を2枚重ねると、1枚の影になる。
8歳の作品
カラーセロハンを詰めたクリアフィルムをベースに、立体のカブトムシが出現!
おとなはついつい、その場のセオリー通りに行うことを良しとしがちです。でも、セオリーの反復はこどもたちの自由を制限してしまう部分もあり、そこから新しい遊びや感動は生まれにくいですよね。
だから、こどもたちがおとなの想定を超えることは、すごく自由で健やかな姿である気がします。
遊びの世界で、「おとなの想定外」をこどもたちと一緒にとことん楽しみたいなと思いました。
次回も、おたのしみに!
このあそびの楽しみかた
いろんな影をつくろう〜ひかりあそび〜
夜も長くなるこの季節に、もってこいの光遊びをご紹介します!
※今回ご紹介する光遊びは、お部屋を暗くして鑑賞します。
暗闇が苦手なお子様には、事前の配慮やサポートをお願いいたします。
ー この記事は『遊びから芸術は始まる!』の連載第2回です。
この記事の連載
遊びから芸術は始まる!#01『新聞紙あそび』