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「大きな家族でありたい」ー おひさま保育室(神奈川県 葉山町)

三輪ひかり
掲載日:2024/01/18
「大きな家族でありたい」ー おひさま保育室(神奈川県 葉山町)

今回訪れたのは、神奈川県三浦郡葉山町にある“NPO法人 おかげさまのめぐみ舎”が運営する「おひさま保育室」。

おひさま保育室のコンセプトは「大家族保育」。その言葉には、どんな想いが込められているのでしょうか。
園見学とインタビューを通して、たっぷりとお届けします。

おひさま保育室の暮らし

おひさま保育室は、0〜5歳の子どもたちが部屋を分けることなく、一つ屋根の下で暮らす保育園。

園舎も大きなおうちという感じで、初めてきたのにホッとする造り。玄関を入ると、ちいさな人からおおきな人まで、いろんな年齢の子どもたちが「誰かやってきたぞ?」とこちらに関心を寄せているのも伝わってきます。

そんな子どもたちに、「みんな、今日は千穂ちゃんのお友だちがきたんだよ。よろしくね」と、私たち編集部スタッフのことを紹介してくださったのは、今回お話をお伺いする園長の森田千穂さん。

ちょうど3〜5歳の朝の集いの時間だったので、見学させてもらうと・・・

「あんたがた どこさ ひごさ ひごどこさ」
とはじまる、わらべうた。

わらべうたの心地よいリズムに誘われ、自然と子どもたちが“この場”に集中し、穏やかに一日が始まっていく様子が印象的でした。

おひさま保育室にとって、葉山の海、山、すべてが大きな園庭で、朝の集いのあとは、ほぼ毎日外へ出かけるそう。この日も、いくつかのグループにわかれて散歩にでかけます。

「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」

「いってきまーす」
「またあとでねー」

そう声をかけあって、出発です。


「見晴らし台の山」へ向かう、4,5歳児の子どもたち。

町中を10分も歩けば、山の入り口。
山道が細くなったり、急な斜面になっても、子どもたちはへっちゃらで、山道を歩き慣れているからか、子どもたちの足取りはどんどん軽やかになっていきます。

取材を行ったのは11月下旬で、山の中にもしっかりと秋の訪れが。
「どんぐりころちゃん  あたまはとんがって おしりはぺったんこ どんぐりはちくりしょ」
と、いっぱい落ちているどんぐりを見つけて、ここでもわらべうたを自然と口ずさむ子がいました。

目的地に到着。
子どもたちは荷物をおろしてちょっと休憩したり、

山の斜面を使って鬼ごっこをしたり、

山道で拾ったどんぐりや枝でお店やさんごっこをしたり。
おもちゃや遊具は一つもないけれど、子どもたちの遊びは豊かに広がっていきます。

子どもたちだけではなく、大人も自然物をつかって・・・あっという間に、人形が完成!

その頃ちいさな人たちも、同じ山の麓で遊んでいました。

たっぷり遊んで、お腹も減って、帰ってきたらおいしいお昼ごはんです。

おひさま保育室の暮らし

食べることは生きること

昔から日本人が食べてきた野菜、乾物や豆、漬物、味噌汁を中心にした食事とおやつを、毎日台所で手作り。卵や牛乳、動物の肉は使わず、食材にもこだわり、天然自然のもの(低農薬・無農薬・無添加)を選んでいる。

台所から聞こえてくる音や匂いに、自然とお腹もすいてきます。

子どもたち自身も、毎月自分たちで調理や畑仕事をしたり、毎年味噌を仕込んでいる。自分たちの食べるものは、自分たちでつくるのも、大切なおひさまの暮らしの一つ。

恵みを祝う「収穫祭」。年長児は自分たちで育てた新米を握り、年中児は畑で採れた野菜で具だくさんのお味噌汁を作る。年少児は、人参クッキーを作って、乳児は、採れたサツマイモを濡れた新聞紙と銀紙にくるみ、保育者が焼き芋にした。


パーマカルチャー建築

子どもたちにどんなところで育ってほしいのか考え、園舎を建て替える際、パーマカルチャー建築を採用。

県産材を使用し自分たちでメンテナンスしながら生活をすることをベースにしたり、雨水を雨水タンクに貯めてトイレの洗浄水に再利用したりしている。

寒くなったら大活躍するのも、石油の代替資源として利用が進むペレットストーブ。

じっくりとお話を伺ったインタビューは、後編でお届けします。



撮影:雨宮みなみ・三輪ひかり
写真の一部ご提供:おひさま保育室

この記事の連載

おひさま保育室の暮らしと遊びから見えてきた、子ども時代に大切にしたいこと。

おひさま保育室の暮らしと遊びから見えてきた、子ども時代に大切にしたいこと。

前編では、お散歩やお昼ごはんの様子などを通して、おひさま保育室の暮らしについて、お届けしました。

豊かな自然のなかで、一人ひとりのペースが大切にされる暮らし。
後半では、ゆっくりと時が流れるおひさま保育室の生活の根っこでは何が大切にされているのか、園長の森田千穂さんにお話を伺いました。