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保育シンガーソングライター荒巻シャケさんに聞く、「自発的に楽しめるあそび歌」になる4つのポイント

三輪ひかり
掲載日:2023/11/10
保育シンガーソングライター荒巻シャケさんに聞く、「自発的に楽しめるあそび歌」になる4つのポイント

前編では、荒巻シャケさんが保育シンガーソングライターになった経緯から、園ライブで子どもたちと歌うことで気付かされたことをエピソードを踏まえながらたっぷりと語っていただきました。

後編では、あそび歌を子どもたちと共に歌うときの工夫や気をつけるべきことについて、具体的にお話いただきます!


あそび歌は一対一のやりとり

ー インタビュー前に園ライブを拝見させてもらいましたが、子どもたちもシャケさんも本当に楽しそうで。子どもとその場でやりとりをしながらあそび歌を繰り広げていくシャケさんの姿に、歌いながらよくこんなに子どもの声が聞けるんだとも驚きました。


グローバルキッズ日吉五丁目園さんでの園ライブにお邪魔しました!!

実は、全体を楽しませようとは思ってはいなくて、その時目の前にいる子どもの声に耳を傾けたいと思ってるんです。 だから、どちらかというと集団に対して働きかけているというよりは、1対1のやり取りがずっと続いていって、その中で他の子がその遊びに巻き込まれているみたいなイメージです。

そうすると、発言力が強かったり、声が大きな子の声ばかりを拾ってしまいがちにならない?と思われるかもしれないですが、一つ一つの声を面白がって受け止めていると、普段あまり意見を言わない子も言いたくなってくるんですよね。じゃあ私も言ってみようかなって。

それに、歌いながらも子どもたちの姿に目を向けると、「あ、この子言いたそうだな」というのが僕の方にも見えてきます。その時に、目を合わせることを意識していて、そうするとぽろっと「これやりたい」を言ってくれたりする。

いかにその時に出たワードを拾えるか、そしてそこから遊びが展開していくか。結構大事にしていることです。

ー 子どもたち一人ひとりにも、シャケさんは自分の声に耳を傾けてくれるというのが伝わっているんだろうなと思います。

ー 保育者さんの中には、「歌が苦手です」という方もいらっしゃると思うのですが、あそび歌を楽しむコツはあるのでしょうか?

あんまりこだわらないことかなと思います。あそび歌には、正しくメロディーを歌わなくちゃいけないとか、歌詞を最後まで歌わないといけないとかそういう概念ってないし、何よりもその場で「歌うって楽しいね」という感覚を子どもたちと共有できればそれでいいのかなと、単純に思うんです。

大人って「ねばならない」とか「べきである」といういろんなことに縛られちゃっている。いかにそこから大人が解放されていくのかが、子どもに近づけるポイントなのかなと思います。僕もやりながらどんどん解放されていってて、子どもたちと歌う度に重たい鎧をどんどん脱いでいっているような感覚がありますね。

ー あそび歌には、正しくメロディーを歌わなくちゃいけないとか、歌詞を最後まで歌わないといけないということがない。そう捉えると、子どもたちとのあそび歌の時間がグッと変わる気がします。

僕は、作った作品(歌)で遊ぶというよりは、作品はきっかけでしかなくて、そこから子どもたちがどう遊びを広げていくかということを大事にしたいなと思っています。そのためには、一方通行にならないということが何よりも大切。だから、「キラキラキラキラ手はおひざ」みたいな一方通行で手遊びやあそび歌をするのは、勿体無いなと思ったりもします。手を膝にさせるだけのために使うんだったら、それは大人の都合の道具になってしまうので。

もちろん、ひげじいさんの歌に罪はないんですよ。ひげじいさんはグーだけで遊びが成り立つ本当にいい歌なので!だから、「キラキラキラキラ、次は・・・手はあたま!手はおなか!」というように遊びを展開していけるといいなと思います。

自発的に楽しめるあそび歌になる、4つのポイント

ー あそび歌を子どもたちと楽しむコツが他にもあれば教えてください。

僕は、子どもが自発的に楽しめるあそび歌になるためのポイントは4つあるんじゃないかなと思っていて、1つ目がさっきも言った「一方通行にならない」こと。子どもの意見を取り入れながらコミュニケーションを取ることを意識しています。

2つ目が、「間を意識する」こと。気をつけないと、楽しいほうに楽しいほうにと引っ張っていきたくなって子どもを置き去りにしてしまうので、1回歌ったらちょっと間をとってみるといいなと思っています。そうすると、あ、あの子もう飽きてるなとか、あの子もう1回やりたそうだなということに気がつけて、次に子どもがどうしたいのかが見えてくるようになる。

3つ目が、「子どもの発想を出来る限り面白がる」こと。そうすると、どんどん歌が子どもたちのものになっていきます。ただ、出来る限りとしているのは、さっきも言ったように、大人も思ってることを子どもに伝えていいと思っているから。

そして、最後が「いろんな参加の仕方を認める」ということ。みんな同じことをしなきゃいけないのではなくて、やりたいなら参加すればいいし、やりたくないなら違う遊びをやってもいい。今日もあんなにわーきゃーしている中で延々とブロックをやってる子もいましたよね。うるさいなとか思ってないのかなと思うけど、すごい集中していたりするし、遊びながらも実は歌を口ずさんでいたりもする。そういう姿を見ると、自分で選べればいいんだなって。

この4つを意識していくと、大人の都合にはなりづらいし、子どもと一緒に作りながら、 子どもが自発的に遊べるようになっていくんじゃないかなと僕は考えています。

ー 今まで「遊び」と「歌」は別ものとして捉えてしまっていたのですが、シャケさんのお話を聞いていると2つの間に重なりがあるのをとても感じます。

分けているのは多分大人だけなんですよね。子どもは「今歌ってます」とか「今遊んでます」とか思いながらやってるわけじゃない。

子どもにとって、歌も遊びと同じように日常的なものだと思うんです。だって子どもって、突然変な歌を歌ったり、歩きながら歌のようなものを口ずさんだりとかするじゃないですか。もっと言ったら、赤ちゃんが「ああ、うう」と喃語を喋るのだって、歌と言えば歌なのかなって。実際、赤ちゃん学でも、喃語を喋りながらリズムをとってるという研究もあったりしますしね。

だから、コロナ禍で歌うことが制限されていた時期がありましたけど、あれは「喋るな」「遊ぶな」と言われてるのと同じだなって、僕はどこかで思っていたんですよね。マスクをつけてでも歌い続けなきゃって思ったし、改めて、誰にとっても歌はもっと自由に発せられるものであってほしいなと思いました。

あそび歌も遊びの一つ

ー 保育の中であそび歌をいっぱい歌ってほしいという思いなどはシャケさんの中にあるのでしょうか?

それが歌を作ってる本人が言うのもなんですけど、あそび歌なんかなくても保育って成り立つと思うんです。遊びが主でそこに音楽がついているというのがあそび歌だと僕は考えているんですけど、そういうふうにあそび歌も遊びの一つと思うと、あそび歌ではなくても、もっと違う遊びで子どもたちが楽しんでいるならそれがいいなと思えてくる。

保育者の方たちも、自分がどういうもので子どもとコミュニケーションを取りたいか、子どもと一緒にその場を楽しんだり遊んだりしたいかという風に考えられるといいんじゃないかなと思います。僕はそれがたまたま歌であっただけなので。

ー シャケさんにとってはあそび歌が子どもと一緒に彼らの世界を楽しんだり、コミュニケーションをとったりする一つだけど、それがごっこ遊びでも、絵描きでも、体を動かすことでもいいんじゃないかと。

そうですね。僕、保育園は分業制みたいになっていくといいのになと思ったりします。〇〇先生は手遊びが得意だから、子どもと手遊びを楽しそうによくやってますよねっていう人がいてもいいし、●●先生は手仕事がすごく上手だから、子どもと一緒にいつも手を動かしていろんなものを作ってますよねという人もいてもいい。

保育園や幼稚園が、子どもも保育者も自分の好きなことで輝けるような場だったらいいのかなと思うんです。

荒巻シャケさん

新宿区の公立保育園で6年間保育士として勤務した後に退職。
現在は保育シンガーソングライターとして活動中。町田市在住。
「子どもって面白い」を原点に、オリジナルのあそび歌を創作。あそび歌を通してうまれる、コミュニケーションを大切にしながら、全国の保育関連施設でライブ活動を展開するほか、保育雑誌への執筆・保育者への実技講習、保育者養成校の非常勤講師、Eテレ幼児向け番組への遊びの提供など、活躍の場を広げている。
また、2児の父として子育て真っ最中。

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園ライブ会場・インタビュー場所提供:グローバルキッズ日吉五丁目園

撮影:雨宮 みなみ

この記事の連載

「いかに子どもの声や姿に気付けるかで、あそび歌の楽しさは変わる」保育シンガーソングライター荒巻シャケさんの考える、あそび歌の在り方。

「いかに子どもの声や姿に気付けるかで、あそび歌の楽しさは変わる」保育シンガーソングライター荒巻シャケさんの考える、あそび歌の在り方。

子どもと保育にとって、とても身近なものであり、切っても切り離せない「歌」。
今回は、特にその中で「あそび歌」に力を入れ、その場で子どもたちと共に歌を創りだし、豊かな時間を紡ぎ出している保育シンガーソングライターの荒巻シャケさんにお話を伺いました。

どうしたら子どもとの歌の時間がより豊かで楽しいものになる?子どもと歌う時にどんなことに気をつけるといいだろう?・・・シャケさんのお話の中にヒントがたくさん隠されていました。