こんな保育記録を待っています!~第58回 令和4年度「わたしの保育記録」審査員からのメッセージ
保育実践記録「わたしの保育記録」の募集が今年も始まっています。
審査員を務めている4人の先生から、募集にあたってのメッセージが届きました。
作品を書く前に読んで、あなたもぜひご応募ください。
めざせ! 大賞賞金30万円!
▶募集要項はこちら
「うまくいった記録」より「葛藤した記録」を
神長美津子先生
大阪総合保育大学児童保育学部特任教授
「わたしの保育記録」では、うまくできた保育よりは、むしろ予想もしない出来事の中で保育者としてどうしようか悩んだり葛藤したりして、保育と向き合っている記録を期待しています。保育は、たとえば子ども同士のいざこざが起きて遊びが中断する、あるいは子どもがダンゴムシを発見したことから保育の流れが変わってしまうなど、予想もしない出来事に直面し、そのときどきに瞬時の対応をすることの連続です。こうした場面では、「うまくできた」というよりは、ふり返ってみて「もっと、こうすればよかった」と、反省することが多いかもしれません。
大切なことは、悩んだり葛藤したりすることを通して、改めて子どもの思いに気づき、子ども理解を深めたり、保育者としてのかかわりを反省したりすることです。それは、「保育者としての自分」を意識し、保育者として成長していく場面となるからです。その成長の場面をぜひ、保育記録に残しましょう。
子どもと保育者の「応答関係」を表現する
加藤繁美先生
山梨大学名誉教授
保育記録は、子どもと保育者の関係を映し出す鏡のような存在です。だからそこには、子どもの言葉・行動のリアルとともに、子どもの言葉や行動に保育者が応答する姿が、保育者の心の声(考えたこと・ひらめいたこと)とともに再現される必要があるのです。
もちろん、子どもとの応答関係を表現しなければならないといっても、たくさん話しかければいいわけではありません。そして、饒舌に考えたことを記せばいいわけでもありません。無言で子どもたちに寄り添うことも、少し距離を置いて子どもたちを見守ることも、応答関係の大切な要素となっていくのです。
重要なことは、書かれた事実の中に子どもの「育ちの物語」が描かれ、その「育ちの物語」を生み出した「保育実践の物語」が、さりげなく表現される点にあります。子どもの「育ちの物語」と「実践の物語」の関係が浮かび上がってくるとき、保育記録は「生きた記録」として他者の共感を引き出す記録になっていくのです。
保育者が「観た」子どもの姿を記録に
今井和子先生
子どもとことば研究会代表
保育実践において、子どもを「見る」だけでなく「観る」こと、「観ようとする」ことが重要です。たとえば、ある子どもが乱暴な行為をしているのを目の当たりにしたとき、同時に目に見えないものを見いだすこと、つまりその行為の意味、その子どもが乱暴な行為をせざるを得なかった心の理由や、内面の課題などに想像を巡らせて「観る」ことです。
自分の心の中にあることをなかなか言葉で言い表せない0・1・2歳児の保育において、保育者が子どもを「観る」ことは特に重要です。その際突き放して考えるのではなく、共感的に理解しようとすることが求められます。保育者のみなさんが「観た」子どもの姿をぜひ、実践記録に残し、全国の保育者に共有してください。
些細な変化も丁寧に記す
天野珠路先生
鶴見大学短期大学部教授
保育者のみなさんが、これをぜひ「伝えたい!」と願う保育現場の実践を、読み手の保育者にとってわかりやすく、保育の魅力が感じられるような記録にしましょう。その実践にかかわる保育の経過や子どもの成長の過程を具体的に、些細な変化や子どもと保育者の試行錯誤、創意工夫も丁寧に記します。「保育は一日にしてならず」です。保育現場における子どもの育ちの物語は子どもの言葉やしぐさ、表現されたものや魅力的な環境などにより語られ、伝えられていくのだと思います。
保育者自身のみならず、園にとっても、読んだ人にとっても、記憶と記録に残る保育実践であることを期待しています。
主催/一般財団法人 日本児童教育振興財団
後援/(株)小学館
問い合わせ先/
電話:03-3230-5686(『新 幼児と保育』編集部)
Eメール:yojitohoiku@shogakukan.co.jp(件名を「わたしの保育記録係」としてください)
第58回 令和4年度「わたしの保育記録」作品募集(募集は終了しました)
応募いただいたすべての方に参加賞を贈呈します。