保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

おっとっと…!いろんなものに乗ってみよう〜高いところに乗ることを楽しむ遊び&環境アイデア〜

ほいくるサポーター
掲載日:2021/12/20
おっとっと…!いろんなものに乗ってみよう〜高いところに乗ることを楽しむ遊び&環境アイデア〜

危ない、汚れる、準備が大変…
子どもたちに「これ、やってみたい!」と言われても保育環境的に難しく、止めてしまうことがあります。

「高いところに上りたい!ジャンプしたい!」という気持ちも、そのひとつ。
どんな環境をつくったり、遊びを工夫したりすると、実現できるでしょうか。

子どもの気持ちを想像しながら、大人も一緒に楽しむためのアイデアを、ほいくるサポーターさんと一緒に考えてみました!

もくじ

今回の子どもたちの「やってみたい!」は…

高いところに上りたい!ジャンプしたい!


子どもたちは、どうして「やってみたい」って思うんだろう?

まずはみんなで、根本的なことを考えてみました。
子どもたちは、どうして高いところに上ったりジャンプしたりしたくなるんでしょう?

・椅子にのぼると保育者より高い位置(目線)になる。

・いつも見ている景色が変わる。

・誰よりも高いところに行ける喜び。

・誰が一番高いところにのぼれるか、競い合いたい。

・ジャンプしたときのフワっとした感じが楽しい。

・園庭がないので雨の日は室内遊びになるが、外と同じように過ごしたい。低い棚の上からジャンプしたくなる。


大人はどうして受け止めづらいんだろう?

「やってみたい!」と言われても、すぐに「いいよ!」とは言えない…。
そんな大人なりの事情や理由はどんなことなのか、振り返ってみました。

・うんていの得意な子が、上の部分にのぼったりする。固定遊具本来の遊び方じゃないと禁じてしまう。

・乳児は上り方を学んでる時期に、いろんなところに上るが、危険なので許容していいのか迷う。

・何にでも上りたがることは、年齢が大きくなるほど、道徳的によくないのでは…。「主体性」がうたわれる中、止めるのも迷ってしまうが。

・高いところに上ることを大人がサポートする場合、上っている子が1〜2人だったら見守れるが、大人数みんなでだと、一瞬も目を離せない。

どんなことを気をつけたり工夫したりすれば、実現できそう?

・ケガしないようにできるという経験値が保育者にあるなら、飛ばせてあげてもいいのかな。

・室内での「高いところに上りたい」なら、実現できるかも?乳児は机が低いので飛びやすいかも?

・机やイスを出してわざわざジャンプする遊びをするのはハードルがある…大きいイスなら安定してるのでは?

ジャンプではなく、「高いところに上る」のを楽しむなら、保育の中でもできそう!

・1歳〜2歳児はOKの時間、やらない時間とメリハリをつける。
・3歳児ぐらい〜は、ルール、危険さの両方を伝えたい。
・上るほど危険を感じやすいと思うので、達成感も味わいつつ、ルールにも気付けるようフォローする。

一度に全部叶えるのは難しいかもしれないけど、まず「高いところに上ることを楽しむ」ことなら、保育の中でも実現できるんじゃないかな…!

テーマを絞ってみたら、次々とアイデアが行き交いました。

★上る「もの」を、子どもが自分で選ぶのが楽しそう!

たとえば…
・園舎の中から見つけてくる
・自分で選ぶようにすると、乗っても安定するか、物の丈夫さにも気付ける
・ものをいくつか重ねてもOKにする。箱など…
・自分がどのくらいの高さなら飛べるか、考えて選びそう
・高いものだけじゃなくて、めっちゃ低いものを持ってくるのも楽しそう。薄い紙など…
・何を持ってきたらいいか迷う子、LOGOブロックのような小さなおもちゃを持ってきてしまう子もいるかもしれない…。
4〜5歳児はなんでもOK、3歳児はものを用意して、ここから●個持ってきてね、とルールを作ってみては。
・上ることに恐怖感がある子もいるかもしれないが、保育者がきっかけをつくれば参加するのでは。

こうして、サポーターさんたちとみんなで考えたアイデアの中から「高いところの上るのを楽しむ」こんな遊びが生まれました!


おっとっと…5秒、乗れるかな?!〜高いところに乗るのを楽しむ遊び〜



あそびかた

1. 自分が乗りたいものを、子ども自身が1〜3つぐらい選ぶ。
それらを重ねて(積んで)みよう!

2. その上に、バランスをとりながら立ってみよう!
1、2、3、4、5…5秒間、立っていられるかな?!

3. 2人以上で楽しむ場合は、誰が一番長く乗っていられるか、ゲームにしても楽しめそう。

乗るのは、どんなものがいい?

・子どものいす、机
・跳び箱
・ソフトブロック
・つみき
・牛乳パックの椅子
・空き缶
・この遊びのときだけ特別にOKで図鑑などの分厚い本
・自由画帳
・(あえて)薄い紙
・(あえて)ティッシュ箱
・(あえて)空き箱


工夫やアレンジ

・室内にあるもののから自由に持ってくる、事前にある程度用意したものから選ぶなど、年齢や環境によってルールをアレンジ。

・小さい子は、安定していて乗りやすいものを予め用意して、その中から自分で好きなものを持ってきて楽しむのがいいかも。

・あまり多く重ねたり積んだりは不安定なので、3つぐらいまでがちょうどいい。

あそびの発展バージョン

5秒乗っていられたら…

・少人数→チームみんなで一斉に乗ってみる。

・どのくらい長く乗っていられるか、時間比べをしてみても。

・「せーの!」の掛け声で乗ってみる(ものの素材や大きさによって滑ったり転倒したりに注意!)


サポーターさんレポート「子どもたちとやってみました!」

実際に、子どもたちと遊んでみたら…!

今回、一緒に「おっとっと…5秒、乗れるかな?!〜高いところに乗るのを楽しむ遊び〜」を考えてくれたほいくるサポーターさんが、子どもたちの様子やどんなふうに遊びが広がったのかを、教えてくれました。

mama3さん(私立保育園)

こどもの年齢&人数:3、4歳児 11名
時間夕方の保育活動中

こんなふうに遊んでみた!

・クラス内にあるもの(見えているもの。危ないものは事前に片付けました。)、絵本、椅子、机、おままごとのキッチン、パズル、おもちゃの箱でやってみました。

・最初は選ぶのは2個など、個数を決めました。

子どもの反応

・子どもは乗っていいの?と戸惑いもあったようですが、保育者が乗って見せると嬉しそうにいろんなものを持ってきてくれました。
上ることより、積み上げることが楽しいようでした。

・上ることで、高さや低さを理解しようとする姿が見られ、高いもの、低いもの探しが始まりました(“大きい”や“小さい”もありました)。
身長を比べたり、定規を使って長さを測って遊びました。

大人(保育者)の気づき

・「乗っていいの?」の反応に、これまで「やってはいけない」と言っていた事を許可する難しさや、我慢をさせていることがあった事に気づき、反省しました。

・けがをしないように見守りながら、子どもの心が満たされる活動を提供できるように保育者側の心と視野が広くなくてはならないと感じました。

ディアさん(公立幼稚園)

こどもの年齢&人数:5歳児 30人
時間:帰りの会前の空き時間

こんなふうに遊んでみた!

・保育者が椅子に乗って見本を見せて、部屋、廊下、テラスから「乗れそうなもの」を一つ探してもらいました。(制限時間1分ほど)

・まずは椅子、ベンチ、紙、空き箱をつかって、5秒乗れたらクリア!。みんなで一斉にやってみました。

・その後、「次が本番ね」と伝え、2回戦を開始。ものを選ぶ制限時間は2分ほどです。
2つ重ねたり、2人で協力してもいい、1人でやる方がポイント高い、というルールに。
みんなで一斉にスタート、5秒乗れたらクリア!

・椅子を2つ、ベンチに椅子、紙2枚、空き箱2個、カップ2個、ドミノを重ねる、ベンチに玩具箱…などいろいろなものを重ねてみる子どもたち。
クリアした中で、乗ったものが1番高かった人が優勝!にしました。

子どもたちの反応

・初めは何を使っていいか戸惑っていたり、「椅子しかないよ」と保育者と同じものを使ったりしていましたが、紙や空き箱など自分で考えて持ってくる子どもも出てきました。

・迷っていた子たちも2回戦は、友達のを真似したり、考えたりしていました。

・2人組にすると「これがいいんじゃない」と話し合ったり、協力してものを運んだりしていました。

大人(保育者)の気づき

・短い時間の中でもが、子どもたちは何かしら持ってきていました。

・空き箱、ブロックの箱、ドミノなど、こちらの予想外のものを用意する子どもがいました。

・こっそり持ってくる子もいれば、みんなに知らせる子もいて、性格が出ていました。

・普段おとなしい子が大きいベンチを引きずってくるなど、思いがけない姿が見れておもしろかったです。

・ものを重ねると、やはり危険を感じることもありました。傍について危なくないようにフォローすることが大切だと思います。

・時間がうまく確保できず、空き時間でやったので十分にできませんでしたが、子どもたちは喜んで、思いのほか盛り上がりました。

・乗るものの素材を自由にするか、指定するかなどだけでなく、ものの高さで競ったり、予想外のものを用意したり組み合わせたり、様々な遊びの広がりが考えらるな〜と思いました。

***

今回のテーマ子どもの「高いところに上ってみたい!ジャンプしてみたい!」についてみんなで話し合う中で、その実現のネックになっていたのは、“危険”と“道徳観”でした。

「ものに乗るのははいけないことだよ、危ないよ」という言葉がまず口をついてしまいますし、実際ちゃんと伝えていくことも大人の役目。

だからこそ「上ること」は遊びの時間だけ特別であること、また不安定だったり痛かったり乗ると危ないものがあることも子ども自身で気付けるように意識しつつ、思う存分楽しめるように、あそびかたやルールにみんなで工夫をくわえました。

Special thanks

ほいくるサポーター:mama3さん、ディアさん