自分たちだけの空間を楽しむ〜子ども自身が空間作りや隠れることを楽しめる環境アイデア〜
大人からみたら丸見えでも、何かをするわけでなくても、しきりや暗がりがあるだけで十分に楽しい…!
そんな、子どもたちが自分たちだけの空間や隠れることを楽しみやすい環境を、ほいくるサポーターさんと考えてみました。
子どもたちの姿から考えてみる
そもそも、子どもたちは隠れることや自分たちの空間をどんな時に、どんな風に楽しんでいるだろう…?
まずは、実際に出てきた子どものエピソードをご紹介します(ほいくるサポーターのMIKIさん、saakoさん、sakuraさんより)。
0〜2歳
・自分のまわりにおもちゃをたくさん置いて、隠れているつもり?を楽しんでいる。
・部屋の片隅で友だちと肩を寄せ合って縮こまっているだけで楽しそう…。
・ダンボールのなかに入って、穴から外を覗いては楽しんでいる。
・戸の代わりに不織布をカーテンのようにさげている押入れに入ることを楽しむ。
(保育者には「おいかけて!」とお願いしつつも、押入れは子どもたちしか入れない、ということを楽しんでいる)
3〜5歳
・四角い箱(ゲームボックス)を出していたら列車のように並べ始め、自分だけの車両を作って遊ぶ。
・テラスに出て、自分たちで屋根をつくり、おうちのような基地のようなものを作って遊ぶ。
・お昼寝用の布団を入れている押入れに、布団を出して友だちと入って戸を閉めて楽しむ。
(布団を押入れの外に出した後は、ちゃんと自分たちで片付けるなど、やりたいことをやる時には自然とチームワークが良い…!)
「しきり」とか「暗さ」みたいなものがあるだけで、なんだかワクワク感やドキドキ感、特別感が感じられて楽しいのかも…!
出たり入ったりするだけでも楽しそうにはしゃいでいる。
その空間に入ると、急に「しーっ」と言う子もいれば、「きゃー」とうれしそうに騒ぐ子もいる。
ただ、顔を見合わせてゲラゲラ笑ったり、笑っているうちにヨダレが垂れて、それでまたゲラゲラ笑ったりしている。
何をするわけでなくても、なんだかその空間があるだけで友だちと結束みたいなものができたり、なんてことないのに笑っちゃったりして楽しんでいる子どもの姿が目に浮かびます。
空間づくりと相性が良さそうな材料・素材・道具
さて次に、空間づくりに相性が良さそうな素材や道具をアイデア出ししてみました。
・ダンボール
・不織布
・カラーポリ
・風呂敷
・新聞紙
※ダンボール
トイレットペーパーや紙フキンなどの備品を購入した際の大きなダンボールをとっておくと色々と楽しめるそう。
箱のままにしておいたり、底を抜いてトンネルのようにしておいたり、穴をあけたり…
※カラーポリ
切り広げ、つなぎあわせて屋根にしたら、陽射しが差し込んだ時に自分たちの空間に色つきの光だまりができて盛り上がったというエピソードも。
※風呂敷
自分に身につけることもできれば、結んでつないだり、カーテンにしたり屋根にしたりといろんな使い方ができる万能アイテム…!
あると良さそうな道具
・養生テープやガムテープ
・ビニールテープやセロハンテープ
・はさみ など
あそびアイデア
ここからは、実際にサポーターのみなさんが園で子どもたちと楽しんだことがあるという遊びをご紹介していきます!
ダンボール列車
ダンボールをたくさん集める。
大きい箱、小さい箱、いろんな大きさのものがあってOK。
並べたりつなげたりして列車に見立て、自分の列車を決めたら自由に過ごす。
もちろん、列車でなく家に見立てるなど遊び方は自由。
レジャーシートハウス
レジャーシートを敷いてみる。
大きいシートを1枚でも、小さなシートを数枚でも。
たったそれだけで、自分だけの空間や遊びが広がるかも…?
ナナイロの屋根の基地
テラスや園庭などに、シートを敷く。
そこにカラーポリ袋を切り開いたものを貼り合わせて、屋根をつくる。
(ポリ袋の端に穴を開けて紐を通し、近くの柱に結びつけるなど)
陽の光が差し込むと、色付きの陽だまりが…!
どんな風に楽しむ…?
子どもの様子や、空間づくりに相性の良さそうな材料、いろんな遊びが楽しめそうなのは分かったけれど…
実際にどうやって、子どもの姿に合わせて遊びを取り入れているのでしょう?
みなさんの実体験からまとめてみました。
素材が手に入ったときに…
大きなダンボールが手に入った時に、ポンと子どもたちが触れられる場に転がしておく。
(入ったり、しきりにしたりして子どもたちが遊び始められるようにしておく。)
ちょっとしたきっかけを作ってみる
例えばレジャーシートを敷いておくとか、ちょっとしたしきりになるようなモノを用意しておく。
興味がある子が、自分たちでそこに壁をつくったり屋根を作ったりして自分たちで空間つくりを楽しめるよう、材料も用意しておく。
子どもたちが遊び始めたときに…
そっと電気を消してみたり、電気をパチパチさせてみたりするだけで、「きゃ〜」とさらにドキドキ感やワクワク感が高まって?、そこから子どもたちのなかで設定が生まれたりアイデアが広がったりすることもあるんだとか。
あそびが広がるまでのエピソード
ほいくるサポーターのsakuraさんが教えてくれた、実際に園で子どもたちと楽しんだ際の様子をご紹介します。
子どもの年齢や人数
・1、2歳児
・6〜8人
場所や時間
・クラスの部屋
・自由遊びの時間
どんな風にたのしんだ?
自然とおままごと遊びが始まった。
机の上で料理が始まり、扉付きの空箱が電子レンジに、牛乳パックをつなげた台がテーブルになった。
そのうち、オープンな場所で料理をを楽しむ子の中に、同じ場所でおままごとをしていても自分のペースでやりたい子、友だちに道具を使われるのがイヤな子など、自分だけの空間で自由に楽しみたい子が出てきた。
閉鎖的な空間を求めて、ロッカーにお皿やフライパン、食べ物のおもちゃを持ち込み移動する子も…
そこで、さりげなくこんなものを置いてみることに。
カラーポリ袋ののれん
カラーポリ袋でのれんのようなものを作り、ロッカーに下げた。
窓付きの、ダンボールの壁
のれんをつけたロッカー前に、観音開きの窓をつけた大きな段ボールの壁を置いた。
牛乳パックの仕切り
後から、牛乳パックで作った簡単な仕切りも作り置いてみた。
子どもたちのようす
・カラーポリ袋ののれん、窓付きの段ボール壁を保育士がさりげなく置くと、待っていたかのように「おうち」に見立てて遊びが始まった。
・料理よりも、段ボールの窓やカラーポリののれんをくぐるのが楽しくて行き来するなど、それぞれの遊びが広がる。
・牛乳パックの仕切りでは、高さはなく屋根もないが、お風呂だと言って座ってみる子、小さなクッションを持ち込み寝転ぶ子、ぬいぐるみを持ち込みおうちに見立てる子など、それぞれに自分のイメージを膨らませて遊んでいた。
大人の気づきや発見、メモなど
・以前は不織布でのれんを作ったが、より死角にならないようにカラーポリ袋を利用してみた。
・段ボールの扉を子どもたちが気に入ったため、段ボールがちぎれてバラバラになってしまった。
扉の周りを切り取ると、かぶるようにしてバァーとうれしそうに扉(窓)から顔を出して遊び始めた。
後ろからは丸見えだが、目の前が少し隠れているだけでも子どもたちには充分「隠れる」というワクワクが楽しめる場所になるということが改めてわかった。
・牛乳パックの仕切りでは、ジャバラに折れば小さくなり、軽くて、つなげる数で遊びも広がるといったことがわかった。
・牛乳パックの上から紙や布などを貼れば見た目もよくなり、牛乳パックを広げるようにしていくとそれだけで自立させられる。
・中に何か隠して遊んだり、ロール紙の芯などを牛乳パックの中に立てて、ポリ袋をつけると屋根にも壁にもなるという発見が…!
さいごに
今回は、ほいくるサポーターさんと共に「子ども自身が空間作りや隠れることを楽しめる環境アイデア、遊び」についてじっくりと考えてみました。
死角ができてしまうのが怖かったり、ダイナミックに(自由に)楽しめる環境になかったりと、それぞれの園環境によって制限などもあるかもしれませんが、たとえ完璧に隠れていなくても子どもにとって“自分だけの空間”は、やはりとても楽しそう…!
「隠れる」「ヒミツ基地を作る」といったわかりやすい形や目的にしなくても、風呂敷1枚、ダンボール1箱、ちょっとした環境の工夫から広がること、十分に楽しめることがありそうです。
Special thanks
ほいくるサポーター:MIKIさん、saakoさん、sakuraさん