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4人の園長先生に聞きました!おすすめの保育本

新 幼児と保育
掲載日:2021/07/27
4人の園長先生に聞きました!おすすめの保育本

4人の園長先生におすすめの保育本を紹介してもらいました。

ステイホームの夏、あなたにとっての1冊を見つけてください!

(『新 幼児と保育』(2021年8/9月号)に掲載された記事をお届けしています。)

協力

浅村 都子先生
豊玉保育園(東京・練馬区)

島本 一男先生
諏訪保育園(東京・八王子市)

田中 輝幸先生
群馬医療福祉大学附属認定こども園鈴蘭幼稚園 (群馬・前橋市)

徳田 憲生先生
赤碕こども園(鳥取・琴浦町)



Q1、園長先生が保育者にすすめたい保育本は? 

自園の保育者にすすめたことがある、またはすすめたいと思う保育の本を何冊か挙げてもらいました。

〜児童文学を読み返す〜

『モモ』

ミヒャエル・エンデ・著 大島かおり・訳
岩波書店 880円

子どもにかかわるすべての人に読んでほしい。児童文学・ファンタジーの中には、時代を超えた「大切にしたいこと」が内包されていることがあります。時間に追われ、成果を求め、効率を求め、短時間にたくさんのものを詰め込むことがよい教育だと思われている世の中で、「本当にそうなの?」と問い直すきっかけを与えてくれる本。児童文学は「夢見ること」を思い出させてくれるので、保育者にもおすすめです。
(徳田先生)

〜「保育とは?」を問う〜

『保育の質を考えるー安心して子どもを預けられる保育所の実現に向けて』

近藤幹生、幸田雅治、小林美希・編著
本田由紀、普光院 亜紀、川田 学、 池本美香、後藤英一・著
明石書店 2,530円


子どもの権利をいつも大切に考えている近藤氏の持論に、多くの人が執筆協力しています。保育の本質を学ぶときに出会いたい1冊です。
(島本先生)

〜新人保育者 必読の書〜

『子どもに届くことばがけ』

矢吹秀徳・著
成美堂出版 990円


さまざまな保育のシーンごとに、保育者のことばがけのポイントがわかりやすく解説されています。特に、経験のまだ浅い保育者向きの実用保育本です。3・4・5歳児担当の方に特におすすめします。
(田中先生)

〜考える保育者でありたい〜

『かんがえる子ども』

安野光雅・著
福音館書店 1,100円


世界的画家・安野光雅氏によるエッセイ集。園目標や保育理念などに「自分で考え、判断して行動する」という内容が示されることが多いと思います。子どもに示す前に、保育者自身が「子どものことについて考える」「学ぶことについて考える」など、自分で考えるためのヒントがあります。(浅村先生)

『ウォーリーの物語 幼稚園の会話』
ヴィヴィアン・ガッスン・ペイリー・著
卜部千恵子・訳 佐藤 学・監修
世織書房 2,970円


(下記で紹介する)『マー君の散歩道』が、「出会いのない日々はない」ことを教えてくれる本だとすれば、これは、どんな出来事も子どもにとっては「意味のあること」で、保育者にとっては「どんなことでも子どもから学ぶことができる」ことを教えてくれる本。子どもたちの対話のおもしろさと先生の考察の深さ(一見どうでもいいのでは?と思えるような子どもたちの対話の中に、その子たちにとっての意味を読み取っていく)が、とてもおもしろいです。
(徳田先生)

『マー君の散歩道 3歳児の四季』
桒原昭徳・著
ミネルヴァ書房 1,923円


大人にとって「すでにある世界」が、子どもたちにとってはどれだけの「出会い」に満ちているのか。「いつもと同じ今日」などなく、子どもは日々世界と新しく出会っている。その出会いに驚き、子どもとともに新しく世界に出会い直すことを教えてくれる本です。
(徳田先生)

『0・1・2歳児からのていねいな保育 第1巻
 ここまで見えてきた赤ちゃんの心の世界』

汐見稔幸・監修
フレーべル館 2,310円


赤ちゃんの心の動きを非常に明確に丁寧に解説した本です。平成29年告示の保育所保育指針に対応した内容で、0・1・2歳児の子どもの発達や保育の内容を 具体的にわかりやすく解説しています。
(浅村先生) 

『保育と環境 理論と実践』
樋口正春・著
NPO法人ちゃいるどネット大阪 1,320円


保育の実践において「環境」の重要性が求められます。簡潔に書かれた理論編は、わかりやすく読みやすいので、経験年数の多い保育者が口頭で伝えるよりも、文章で読むほうが環境のとらえ方の共通理解を促す効果が期待できます。実践編は自園の実践を生み出す糧となるでしょう。
(浅村先生)

『日本が誇る!ていねいな保育』
大豆生田 啓友、おおえだ けいこ・著
小学館 2,090円


0・1・2歳児の保育の現場から届いた多くの保育実践が、豊富な写真とわかりやすいイラストで解説されています。園の先生に保育の質の向上を考えるきっかけにしてほしい素敵な本です。
(田中先生)

『ヒトの発達の謎を解くー胎児期から人類の未来まで』
明和政子・著
ちくま新書 902円


子どもを育てるという思いの強い私たちですが、より深く「子どもが育つ」ために必要な環境やその育ちのプロセスのおもしろさ、奥深さを知る機会になると思います。
(島本先生)

Q2、園長先生の園でここ1年くらいで、購入した保育本は?

コロナ感染予防対策に時間やお金を費やさざるを得ない状況下で、「図書購入は後回しになってしまった」と園長先生方は口を揃えます。そんな中でも購入され、読まれていたのはどんな本だったのでしょうか。

『保育の心もち』
秋田喜代美・著
ひかりのくに 1,320円


子どもへのまなざしを豊かに高めていくことが保育者に求められます。なかなか簡単ではありませんが、この本は見開きごとに完結するエッセイ集なので、経験が浅い保育者も手に取って読みやすく、「保育の日めくりカレンダー」のようです。
(浅村先生)

『ポール・スミザーの気持ちがスーッとラクになる生きるヒント』
ポール・スミザー・著
主婦と生活社 1,430円

著者はイギリス人ガーデンデザイナー。私たちを取り巻く自然の世界が、遊びのヒントや「育てる」というやりがい感を伝えてくれているのだと実感できます。
(浅村先生)

『活動の見える化で保育力アップ!ドキュメンテーションの作り方&活用術』
浅井拓久也・編著
明治図書出版 2,156円


ドキュメンテーションという保育記録を作り、活用することで保育の質を高める方法が多くの実例をもとに解説されています。
(田中先生)

『子どもへのまなざし』
『続 子どもへのまなざし』
『完 子どもへのまなざし』

佐々木正美・著 山脇百合子・画
福音館書店 1,870円~1,980円


15年くらい前に『子どもへのまなざし』を読んで引き込まれたことを思い出し、改めて全3巻シリーズを購入。保護者の方への対応のヒントになります。子どもと向き合う心持ちやいとおしさが湧いてきます。
(浅村先生)

『学びを支える保育環境づくり』
高山静子・著
小学館 2,420円


保育の中で、子どもたちの学びを支える環境づくりに取り組む先進的な保育実践が多く紹介されています。コラムの中では理論的な説明もわかりやすく解説されています。
(田中先生)

『保育者の地平 私的体験から普遍に向けて』
津守 真・著
ミネルヴァ書房 3,300円


「子どもに寄り添う」という言葉がよく使われますが、「本当にその子に寄り添う」とはどういうことかを、この本から学びました。職員で読み合わせるため、数冊購入しました。
(徳田先生) 

Q3、園長先生がここ1年くらいで、自費で購入した保育本は?

園長先生があえて自費で購入、または個人で借りて読んだ、保育にもつながる本を尋ねました。新旧のさまざまなジャンルの本が挙げられました。

『絵本は心のへその緒 赤ちゃんに語りかけるということ』
松居 直・著
NPOブックスタート/日販アイ・ピー・エス 990円


「絵本の大切な意味合いは《読み手》と《聞き手》が言葉の喜びを共有すること」と筆者は伝えています。赤ちゃんと一緒に絵本の楽しさを分かち合おうという思いで日本のブックスタートを立ち上げたそうです。絵本を開く時間の楽しさや言葉とは何かなどを考えさせられますが、心地よい思考の時間になるでしょう。
(浅村先生)

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ・著
新潮社 1,485円

「他者」とは絶対にわかり合えない存在。だからこそ、自分の思いを主張し、相手の思いを聞く。しかしそうやって一度「理解した」と思っていても、他者との関係性・社会との関係性は多層的で、ひとつの真実があるわけではない。「相手の立場に立つ」ことが一度きりの理解で終わるのではなく、常に「更新される対話」の上に成り立つものだということに気づかされる本。
(徳田先生)

『3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』
ダナ・サスキンド・著
掛札逸美・訳 高山静子・解説
明石書店 1,980円


子どもに対し言葉かけの多い家庭とそうでない家庭では、3歳までに子どもが受ける言葉の数に3000万語の差が生じ、それが将来の学びの到達点に影響を及ぼすという研究データを中心にした、子どもへのかかわり方を紹介した翻訳本です。保育者や保護者にとってそれぞれ学びがありますが、保育者が本書から一番学べるのは 「チューン・イン」について書かれたパートでしょう。子どもの興味や気持ちに合わせた行動の重要性が伝わってきます。
(浅村先生)

『汐見稔幸 こども・保育・人間』
汐見稔幸・著
新田新一郎・責任編集
学研プラス 1,980円

汐見先生と、こども・保育にかかわる人々との対談の中に、たくさんの保育のヒント、子育てのヒントが見つかる1冊です。新しい「指針」「要領」の大切なポイントも書かれています。
(田中先生)

『街場の教育論』
内田 樹・著
ミシマ社 1,760円

この本の著者・内田樹さんは、一般的な視点から私たちの目をずらし、こんな見方も大切なんじゃない?と問いかけてきます。その問いによって、今自分が立っている幼児教育への「信念」や「当たり前」が揺るがされます。
(徳田先生)

『身近な自然を活かした保育実践とカリキュラム 環境・人とつながって育つ子どもたち』
松本信吾・編著
広島大学附属幼稚園・監修
中央法規 2,420円

自然を生かした保育カリキュラムについて、さまざまな保育エピソードや興味深い保育実践を交えながら、紹介している本です。自然環境に恵まれていない園でのヒントも見つかります。
(田中先生)

Q4、保育者としての園長先生の「座右の書」は?

手元に置いて、ことあるごとに見返している本を教えていただきました。タイトルに「保育」の言葉はないけれど、子どもと過ごす職業人のための本が集まりました。

『驚くべき乳幼児の心の世界「二人称的アプローチ」から見えてくること』
ヴァスデヴィ・レディ・著
佐伯 胖・訳
ミネルヴァ書房 4,180円


人は、他者のことは絶対にわからない。けれど、相手の不確実性・わからなさがあるからこそ、お互いに「特別な他者」として、そこに「信頼」を持って踏み込み、驚き、不思議がり、だから「対話」が生まれる......いや、対話によって踏み込む中に驚きがあるのか......というようなことを、いまだよく自分の中で理解できていないまま、痛烈に感じた本。
(徳田先生)

『ものづくりに生きる』
小関智弘・著
岩波書店 858円

町工場で働く筆者が、職人たちの仕事への姿勢を語ります。その中に「段取り八分」という表現があるのですが、これは、保育においても同じだと思います。子どもの今を見つめ、受けとめ考察し、どのように援助するか、そのために必要なことは何か、職員で共有すべき内容は......。段取りを熟知して、実践に移ることが大切ですが、保育の場においてはともすると、段取りと実践の割合が逆になってしまいがちです。段取りというプロセスと工夫ができて、保育は専門職となるのではないでしょうか。
(浅村先生)

『子どもたちの100の言葉 ―レッジョ・エミリアの幼児教育実践記録』
レッジョ・チルドレン・著
ワタリウム美術館・編
田辺敬子 ほか・訳
日東書院本社 4,400円


ローリス・マラグッツィの詩、「子どもたちの100の言葉」。「…子どもは百の言葉を持っている。(中略)けれども、その九十九は奪われている 学校の文化は頭と体を分けている。…」。この詩にある「学校」を、こども園や保育園に置き換えてみる…….私たちは子どもから99を奪ってしまっていないか?常にここからスタートし、ここに立ち返り、自分を省みる、地図のような本です。
(徳田先生)

『あそびの大図鑑 オールイラストガイドブック』
菅原道彦・著
大月書店 2,750円

現役保育者時代も園長になった今も、この本からのアイデアをもとに、子どもたちと遊びを発展させながら日々楽しんできました。たとえなんにも道具がなくても夢中になって遊べる遊びがたくさん紹介されています。
(田中先生)

『幼児教育へのいざない 円熟した保育者になるために(増補改訂版)』
佐伯 胖・著
東京大学出版会 2,420円

この本を読んでから、著者の佐伯胖先生は、僕の中でヒーローです。子どもたちが自身の主体性を発揮しているとき、それはときに「望ましくない姿」として大人の目に映ることがあるでしょう。そんな姿を「おもしろい!」と思えることにまず衝撃を受けた本(前半長〜く発達についての歴史を紹介しながら、最後にちゃぶ台返しする佐伯先生がカッコいい!)。
(徳田先生)

『ターシャのシンプルメッセージ 何があっても前を向いて』
ターシャ・テューダー・著
KADOKAWA 1,760円 

どんなに好きで保育の仕事をしていても、ときには同僚との人間関係に悩んだり、保護者の対応でつまずくことがあったり、子どもとのかかわりや保育実践で悩んだりすることがあるでしょう。そんなとき、頭を空っぽにして、この本を手にしてみてください。表紙のターシャのほほえんだ写真にしばらく見入ってしまいます。そして、本を開くとシンプルな言葉に癒され、読み終えたとき、心の中は笑顔になっています。
(浅村先生)

『子どもと悪』
河合隼雄・著
河合俊雄・編
岩波書店 1,056円

子どもが創造的、個性的であろうとするとき、また主体性を発揮しようとするとき、それは社会から「悪」ととらえられることがある。人間が「生きる」ということとかかわるとき、「悪」について考えることは避けて通れない。「子どもを『理解する』ということは、本気でする限り生やさしいことではない。多くの親や教師は、従って、理解のふりをするだけになる」ことを突きつけられた本。
(徳田先生)


※本の定価はすべて10%税込みです。

構成/佐藤 暢子


この記事の出典  『新 幼児と保育』について 

新 幼児と保育
保育園・幼稚園・認定こども園などの先生向けに、保育をより充実させるためのアイデアを提案する保育専門誌です。

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