保育と遊びのプラットフォーム[ほいくる]

子どもたちにしか見えない風景を、そばで見せてもらう〜こどもと一緒に出会いたい プレイワーカー・関戸博樹さん〜

竹原 雅子
掲載日:2020/12/18
子どもたちにしか見えない風景を、そばで見せてもらう〜こどもと一緒に出会いたい プレイワーカー・関戸博樹さん〜

保育関係者、編集者や遊び場づくりの専門家…
子どもにまつわる仕事をされているみなさんに聞いてみました。

ー あなたが子どもと一緒に体験、体感したいモノやコトは、なんですか…?

プレイワーカーの関戸博樹さんに、お話をうかがいました。

2020年11月20日に発刊した、ほいくる初の本「こどもこなた」。
その中のひとつの企画「こどもと一緒に出会いたい」に載せきれなかったお話を、web記事特別号としてお届けします。



子どもたちにしか見えない風景を、そばで見せてもらう

関戸博樹さん
プレイワーカー

特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会代表。フリーランスのプレイワーカーとして全国の子どもの遊び場づくりに関わっている。著書として「子どもの放課後にかかわる人のQ&A50」(学文社・共著)。


長男が1歳半ぐらいだった頃、よく一緒に散歩に行っていたんですが、その時に“小指散歩”というのを生み出しました。

小さい子との散歩は、大人が子どもの手を握って半歩ぐらい前を歩くことが多いですよね。小指散歩はその逆で、長男が僕の小指を握って、行きたい場所に連れて行くんです。

本当に、どこに連れて行かれるのか全くわからない(笑)。我が家はマンションの5階なんですが、僕は外に行きたいと思っていたのに長男はエレベーターに乗らず、マンションの中をウロウロ。ある時は公園に行きたいなと思っていたのに、ずんずん歩いていって、入った先は最寄り駅の改札。あ、電車乗りたいんだ、って(笑)。

子どもならではの目線と速度で、僕では気づかないものに目を留めていることが、おもしろかったですね。


僕はふだん、冒険遊び場と呼ばれている遊び場で働いています。
そこで子どもたちはよく「いいこと思いついた!」って言うんですが、そのフレーズが大好きなんです。大人からすると大体いいことじゃないんですよ(笑)。大抵がうまくいかない、失敗するような思いつき。

大人は、子どもが失敗するかもしれないと自分の経験値でわかってしまうから、先回りして「こうやったほうがうまくいくよ」なんて善意で声をかけてしまう。
本来、子どもだけに任せていたら、きっとそんなことは気にせずに目の前の“いいこと”にチャレンジしていくでしょう。
そうして起こりうるであろう展開を、大人は実は見逃していることが多いんじゃないかな、と。


僕が子どもたちに見せてもらった、おもしろい風景があります。

Aくん、Bくん、Cくん、4〜5歳ぐらいの、3人の子どもたちが始めた鬼ごっこ。鬼を決めるためにじゃんけんをしていて、Aくんが、最初に負けてしまいました。
そうしたらAくん、じゃんけんを止めて「今、ぼく後出ししちゃったからもう1回やろう。BくんとCくんだけで、じゃんけんしていいよ」って、自分が抜けたんです。

でも3人の関係は全く崩れずに、残った2人はじゃんけん始めました。
そしてBくんとCくん2人があいこになった、その時に。Aくんが今度は「このじゃんけんは、グーとチョキしか出しちゃダメなんだよ」と、パーの選択肢をなくす提案をしたんです。

えーっ!そんなの成立すんのかな?と思って見ていたら…成立した(笑)。
BくんとCくんは、グーとチョキだけでじゃんけんをして、鬼が決まりました。

大人がこの場に入るとしたら、Aくんに対して「ちょっとずるくない?」「グーとチョキだけのじゃんけんはできないよ」と、声をかけちゃうと思うんです。
別に言っちゃいけないわけじゃない。もしAくんに対して、BくんとCくんが困っていたりしたら…大人が助け舟として入っていいと思う。

でも一連のやり取りを見ていても、誰も全く困っていなかったんですよね。AくんBくんCくん、理不尽かもしれないけど鬼を決めるまでのプロセスをそれぞれに楽しんでいて、普通に鬼ごっこが始まった。


僕は、こういう子どもたちにしか見えない風景を一緒に見せてもらう瞬間が、すごくいいなぁと思っているんです。

そういう瞬間って、大人が意識していないとつい、声をかけてしまうんじゃないかな。
時に子どもに対して自分の感覚で動いてしまうことがある。僕たち大人は、そのことを知っておくことが大事なのかな、と思っています。


***


インタビュー・文/竹原 雅子



このインタビューが掲載されている、リトルプレス「こどもこなた」

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想いを込めて、またたくさんの方の協力を得てつくった一冊です。
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