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絵本と出会い、日常が変わっていく。ー「こどものとも」編集長・関根さんが 23年絵本と関わり続けて気づいたこと

三輪ひかり
掲載日:2020/12/04
絵本と出会い、日常が変わっていく。ー「こどものとも」編集長・関根さんが 23年絵本と関わり続けて気づいたこと

福音館書店「こどものとも」編集長 関根里江さんに、絵本と子どもをつなぐ大人の在り方について、選び方、読み方、楽しみ方などさまざまな角度からおはなししていただいた前編

後編では、絵本を通してより変化していく子どもと大人の姿について、HoiClue雨宮の疑問から話が深まっていきます。


子ども時代を思い出して、蘇る感覚

ー どんな大人にもおはなしに触れた「子ども時代」ってあると思うんです。その時代を思い返して、「私は子どもの頃、どんなおはなしをどういう風に好きだったんだっけ?」と辿ってみると、いま、大人として子どもと絵本を楽しむ感覚が変わるような気がします。

絵本を子どもに読むことで、自分の小さかった時のことを思い出すこともありますよね。

それから、大人になっておもしろいなと感じるところと、実際に子どもがおもしろがるところって、少し違ったりしますから、子どもと読むと「ああ、そうだった、そうだった」って、自分の中に眠っていた子どもの感覚が蘇るようなこと、ありませんか?



ー あぁ、わかります!「なんでそこでそんなにケタケタ笑うの? でも、たしかにおもしろいかも!」みたいなこと、あるなあ。

そう、そう。たとえば、子どもたちって言葉をキャッチする感覚も鋭くて。すぐ真似するし、何度も繰り返しそのフレーズを口にしては、ずっと笑っていたりとかしますよね。

そんな子どもたちの姿を見ると、「そんなに笑えるんだ、いいなー!」って心から思うし、大人も自分の殻を脱いで子どもの仲間に入りたい気分になりますね。

ー 自分の殻を脱ぐことで、眠っていた子ども心がくすぐられる。その感覚が蘇ると、なんだか楽しくなりますね。

子ども心が蘇って、自分が好きだったことや楽しんでいたことを思い出すと、うきうきしてくる。そういう気持ちって、暮らしのハリになりますよね。毎日忙しいけど、たまには散歩に行っておもしろいものを探してみようかなとか、好きだったことをまたやってみようかなとか、時間の使い方が変わってきたり。遊び心で日常の見方が変わると、日々が楽しくなってくるというか…。生活が豊かになるというか…。


大人も新しい世界に出会わせてもらっている

私自身、娘と絵本をよく楽しんだんですけど、そのおはなしの世界を現実の生活のなかでも楽しむことが結構あって。

たとえば、『さんまいのおふだ』っておはなしご存知ですか?
お寺の小僧が山へ花を切りに出かけたところ、日が暮れて道に迷い、おばあさんの住む一軒家に泊めてもらうんですけど、実はそのおばあさんが恐ろしい鬼婆で、小僧を食べようとする。そこで小僧は便所にいき、便所の神様から3枚の札をもらって逃げだして…という、ちょっと怖い昔話なんですけど、娘がトイレ行った時になかなか出てこないから、「まだー?」って聞くと、「まだまーだ ピーピーのさかり」って(笑)。

この「まだまーだ ピーピーのさかり」って、『さんまいのおふだ』に出てくるセリフなんですけど、娘はそれを自分のものにして、生活の中で使ったんですよね。そうやって言われると、こっちも「こぞうこぞう、いいか」と絵本のセリフを思わず返しちゃったりして。そこが一瞬にしておはなしの世界に変わるんです。

そうすると、遅いなぁってちょっとイライラしていたはずなのに、その気持ちもどこかにいって。小さなことだけど、こういうことで日々の生活が楽しくなる。

あと、読者のみなさんからよくお便りをいただくんですけど、最近届いたものの中に『わたしはせいか・ガブリエラ』という絵本についてのものがあったんです。ボリビア人のお父さんと日本人のお母さんの間に生まれたハーフの女の子が、それぞれの国の文化の違いを伝えてくれる絵本なんですけど…。

そのお便りには、「ボリビアって国を知らなかったけど、たまたま自分の職場にボリビアに行ったことがある人がいて、その人からいろんな話を聞いたり、ボリビアの人と交流したりしました。この絵本をきっかけにボリビアが身近な国になりました」と。

小さい時に世界のいろんな文化や昔話に触れていると、大きくなって他の国の人に会った時に親しみを感じたり、多様な価値観を受け入れる素地になるんじゃないかと思います。そうやっていろんな世界に出会う子どもと一緒に、大人も世界を広げていけますよね。

ー 子どもと絵本を読むことで、大人も一緒に新しい世界に連れていってもらえる。たしかに、子どもが興味を持たなかったら大人も触れる機会がなかったかもしれないことって、結構あるんじゃないかなと思います。



子どものことは、子どもに教えてもらう

大人も子どもも、一緒に絵本を楽しむと相手との関係が緩むというか、近くなるような気がします。広い空想の世界を一緒に楽しめるのがきっといいんでしょうね。

ー 広い空想の世界。たしかに、空想の世界の中に入っちゃうと、時間や場所の概念もないですもんね。

私たち大人は、1日は24時間という時間の観念のなかで生きていて、その限定された時間をどう使うかということで汲々としてしまうけれど、子どもたちは、そこがあたかも永遠かのようにずっと遊んでいる。
大人が感じているような現実の時間の流れを「ヨコの時間」としたら、子どもたちが過ごしている世界は「タテの時間」が流れていて、ずっと変わらない世界にいるんじゃないかと思ったりします。絵本の世界って、そういう「タテの時間」のものなんですよね。
ぐりとぐらは年を取らないし、そこは絶対に変わらない世界。目まぐるしく変わっていく毎日の中に、そういう変わらない幸せな世界があると、安心できるんだと思うんですよね。大人ももっと時間を忘れるような時を過ごすといいのかもしれないですね。なかなか難しいですけど…。

日々いろいろやることがあって、忙しいと思うのですが、子どもに対して「早く〇〇しなさい」「〇〇しちゃダメ」ばかりではなく、「一緒にたっぷり遊ぼう」という時間と関係性を保障してあげられたらいいなと思います。絵本は、1冊読むたった5分の時間で、それができる。すごいですよね。

ー 大人にも余裕や余白があるといいんだろうなぁ。

本当にそうですね。子どもたちのもっている力って本当にすごい。想像力もあるし、おもしろいものはおもしろいって、どんどん探求していく。それをキャッチする大人がいれば、より世界を広げて、深めて、どんどん豊かになっていくと思います。そして、大人も一緒に幸せを感じることができる。すてきなことですね。

そう考えると、大人は「この子は何をおもしろがっているのかな?」というアンテナをもって、それを見つけたら、一緒に楽しむ。そんな日常がいいですね。



ー その視点を持つヒントは、さっきお話にあった「自分の子ども時代を思い出す」ということの中にある気がします。大人はみんな子ども時代を経験しているから、あぶないと言いつつ、高いところからジャンプしたい子どもの気持ちも分かったりする。
その気持ちを思い出せていると、たとえ子どもの行動を禁止することになってしまったとしても、「だめ!」じゃなくて、「今は無理だけど、また今度やろう」と、表現の仕方やタイミングが変わることもあるんじゃないかなと。

そうですね。絶対だめ!と思っているのと、やりたい気持ちわかるなあと思っているのでは子どもに伝わる感じはだいぶ変わると思います。

絵本は子どもが楽しむものを大人がつくるので、作家や画家や編集者などつくる大人は、子どもを知らないといけないので、自分の小さいときのことを思い出したり、実際の子どもの様子を見たりするのですが…。
大人は子どもを分かったつもりになっちゃいけないなと、自戒をこめて思います。大人って意外に思い込みが強いですからね。大人の自己満足とか、ひとりよがりになっていることもあるかもしれません。先入観をもたないで目の前の子どもを見るというのが大切ですね。大人の思いは脇において…。

子どものことは、子ども自身に教えてもらう。それが何より大事なことかもしれません。



「こどものとも」編集長 関根里江さん

月刊物語絵本「こどものとも」「こどものとも 年中向き」シリーズの編集に20年以上携わる。
編集した本に『バルバルさん』『ちょっとだけ』『でんしゃにのったよ』「おばけかぞく」シリーズ『もじもじこぶくん』など多数。

「こどものとも」

1956年の刊行以来、『ぐりとぐら』『はじめてのおつかい』『きんぎょがにげた』などのロングセラー絵本を生み出してきた、福音館書店発行の月刊絵本シリーズ。
季節や成長にあわせたバラエティ豊かな絵本で、子どもたちの好奇心と想像力を育んでいます。
https://www.fukuinkan.co.jp/maga/



文:三輪 ひかり
写真:中野 亜沙美



この対談が掲載されている、リトルプレス「こどもこなた」


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この記事の連載

「こどものとも」編集長・関根さんと考える、絵本と子どもをつなぐ大人の在り方

「こどものとも」編集長・関根さんと考える、絵本と子どもをつなぐ大人の在り方

2020年11月20日に発刊した、HoiClue初の本「こどもこなた」。
その中のひとつの企画として福音館書店「こどものとも」編集長 関根里江さんとの対談が実現しました。

絵本づくりをする人から見える、子どもや大人の姿って…?
冊子には載せきれなかったおはなしを、web記事特別号としてお届けします。



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